たまたま立ち寄った街で飲んだ酒と抱いた女。
そんなものはいつもの事で朝を待たずに俺はシュトラールへと戻る。
面倒事になるのはゴメンなのだ。
選ぶ女はそれを承知で近づいてくるのだし相手もそのほうが好都合という事が多い。
しかし今日は何故かそういう気にはならず裸のままキングサイズのベッドで朝日に光る女の肌を見ていた。
普段は名を聞く事などしない行きずりだったはずだが起きたら尋ねてみようと考えている。
必要以上にした行為・・・いつもの自分じゃなくなった訳を知りたかった。
バルフレアは起き上がるとベッドを下りてシーツを腰に巻いた。
なかなか起きない相手に普段では考えられない時間を持て余す。
こういう無駄な時間が嫌いだったはずであった自分にそうさせているこの女にさらに興味を持った。
暫く椅子に座ったままで起きるのを待ったが痺れを切らし立ち上がるその自分の行動に自嘲気味に笑う。
まるで何かを期待しているようだ。
「バルフレア。」
突如自分の名前で声を掛けられその相手に怪訝な顔をして見せた。
女の名も知らなかったし自分も名乗ってはいなかったのだ。
「俺を知ってたのか?」
「有名人が何を言ってるの。」
手を口で軽く押さえくすくすと笑いながら女は答えた。
その仕草は大人の色気そのものでバルフレアはそういう女が好きだ。
何にも程度を知ってて扱いやすい。
きっと今回も後腐れがなく終わる。
しかしそれならいつも変わらないはずなのだが・・・違和感は消えない。
そしてバルフレアが何も答えないでいると女は続けて話した。
「悪いんだけど、バスルームへ連れて行ってくれない?」
「はいはいお姫様、何なりと・・・。」
女の我儘も返事一つで聞いてやる。
どうせ言う事はみな同じでそれはいつも自分の許容範囲の内でしかないのだから難なく実行に移す。
バルフレアはベッドの傍まで歩いて行くとそこに寝たままで意味ありげに微笑む女を軽々抱き上げる。
宿のバスルームに入るとそこはここでしてくださいと言わんばかりの大きさがあった。
まぁ、そういうところを取ったのだから当然なのだが二人でバスタブに入ってもさらに余裕があるのだ。
お湯は常に出続けていていつでも入れるようになっている。
こういう時は一様に女に敬意を表して安い宿は取らない。
そして相手の女も当たり前という態度を取る。
たとえサービスの全てを使う事はなくても然る可きことだ。
それはバルフレアの自尊心から来るものではあったのだが当人は気が付いてはいない。
ただ彼自身が持つ信条にぴたりと当てはまってしまうために起こした勘違いである。
だからと言って誰が困るわけでもないのだが今回の場合は勝手が違うようだ。
何故なら宿に入ったときもそうだったが女は感嘆の声を上げ目を輝かせていたのだ。
そして今も・・・
バルフレアがバスタブの前まで歩いて立ち止まると女は口を開いて意外な事を言った。
「もうここでいい。バルフレア、あなたはもう行っていいから。」
「何言ってやがる、腰が立たない女を一人残して行くかよ。それは俺の主義に反する。それに・・」
言葉を切るとバルフレアは女を抱いたまま湯船に浸かり底に座るとそのまま膝の上に乗せた。
驚いた顔をした女は「え・・?」と声を漏らしただけで目を見開いてバルフレアを見ている。
その表情をニヤと笑いながら見たバルフレアは
「あんたの名前も聞いてないしな。是非とも教えていただきたいね。」
と、そう言って頭を下げ屈みこむとと女の顎より少し下にキスをした。
なんとも珍しい事だとバルフレアは自分で自分を褒めた。
名前を聞くだけなのに相手を甘やかすようなこの行動はなんなのだろうか。
そうまでして知りたい事だったかと心の中で自分に笑った。
「っていうんだけど。・・・覚えてない・・よね。」
どこか伺うようにしてと名乗った女はバルフレアにそう聞いたのだがどうやら彼は覚えていない様子。
しかしそのまま切り捨てるようなことを言うバルフレアではないが後を引きそうな会話はいつも避ける。
だが今日はまだこの時間を終わらせるつもりがなくどこか自分のことを知ってほしそうにしているを見てそれなら付き合ってやるのもいいかと思った。
「さぁ、あんた見たいな美人は一度抱いたら忘れないけどな。そうじゃないってことか?」
の肩を冷やさぬようにとそこに自分の手で湯をかけてやりながら答えた。
ポチャっと音を立てる水音を聞きながらかけては身体を流れていくお湯を眺めている。
その心の内の全ては知りえないがおそらく返答があったことへの驚きと戸惑いというところか。
何かを期待してほいほい付いてきたのではなさそうだった。
「前にね、助けてもらったのバルフレアに。それでいつかお礼したいと思って・・・。」
「だから自分の身体を差し出したってわけか?」
「うん・・・私はそれ以外何も持ってないから。」
それだけ言うとはうつむき顔を赤くした。
呆れた・・・いや、いい度胸してやがる。
後先考えずに突っ走ってきたのだろう。
今その事実にやっと気が付いたという様子が見て取れた。
そしていつもと違い帰る気にはならなかった訳がやっとわかった。
「俺はそんなの望んじゃいなかったが・・・。」
「じゃ・・どうすればいい?」
何かとんでもないものを要求されるのではと少し怯えたような目つきになるにバルフレアはニヤと笑う。
そしてバルフレアは自分の手での顎を持ち上げると頭を下げてその唇に軽くキスを落としそのまま口を耳元まで近づけて囁く。
「、これから俺があんたの心を奪ってやる。空賊らしくな。」
今日もこのままで宿泊を追加するのもいいだろう。
どうせ気ままな家業。
狙ったものを手に入れるまでは帰すわけにはいかないさ。
<感謝の言葉>
「空と大地と光と影」のシュウ様から、仕事納めのお祝いにいきなり頂いてしまいました!
久しぶりに送られてきたメールを開封するとそこにはバルフレアのSS夢小説がッ
しかもテーマは「前の晩にエッチをしすぎて次の日の朝、立てなくなったヒロインをお風呂に入れる!」
・・・だそうで(笑)
「ま〜じでぇー!!」と叫びながら嬉々として受け取らせて頂きました☆
シチュエーション的に背景はバスルームがいいのですが、どうも納得のいく画像が見つからなかったので
場面最初のベッドルームを背景にしました。
バルフレアなら最低でもコレくらいの高級感はあるホテル使うだろうということで。(文中にも描写アリ:笑)
シーツが少々乱れているところでイメージ合うと思います♪
キングサイズではありませんが(笑)