Web拍手 バッシュ夢 No.3

 

 

 

「今すぐお前を殺してやるッ!!」

荒く叫んだ男の声は小さな武器屋にビリビリと響いた。

 

小さな村。
その村に唯一ある武器屋。
次の街へ向かう準備としてその店へ足を運んでいたバッシュは品定めをしていた剣から異様な空気を放つ男に視線を移した。
ガランと音を立てて店に入ってきたと同時に男はそう怒鳴り銃を向けた。

 

―――それはこの店の店員である女性に。

 

小さな武器屋。
その店はたった一人の女性が切り盛りしていた。
たまたまその女性は精製された剣をバッシュに勧めているところだった。
バッシュの隣にいるこの女性。
いきなり店に押し入り銃を向けてくる男とは見知っているらしく、さして驚いた表情は見せなかった。

「いいわ。好きに私を殺せばいい。でも殺すのは、今この店にいる客の接客が全部終わってからにしてちょうだい」

少し冷めた顔で女性がゆっくりと銃を向ける男に言うと、その男は了承するかのように女性から銃口を反らした。
その男の行動に女性は視線を再びバッシュへと戻した。

「―――それで、どうなさいますか?」

男からバッシュへと視線を戻し直後会話を再開され、バッシュは一瞬何の話だったか話題が飛んでしまい言葉に詰まった。

 

ずいぶんと慣れた様子を表すんだな・・・

 

女性の落ち着きようにバッシュはいささか驚きと関心を示した。
バッシュ以外に居た客は突然乱入した男の姿に恐れて次々と店を出て行ってしまう中、女性は落ち着いた声色でバッシュにどの剣を選ぶか聞いてきた。

殺される状況下にあるというのにこの女性は―――

「他に在庫はないか?」

関心を示しながら、もう少しこの女性を見守りたいと思いバッシュは店に少しでも留まれるよう在庫確認を願い出た。

「お待ちください」

相変わらず落ち着いた表情で女性はそう言い銃を手にする男性の横をすり抜け店のカウンター奥へ入る。
そのまま店の外へ逃げるかと思ったが、ほどなくして女性は分厚い資料を手にカウンターへ戻ってきた。

「お客様が求めているのはビュエルバ製ですので―――」

ペラペラと資料をめくりながら在庫を確認しようとしている。
バッシュもカウンターへ寄り、資料に目を投げる。
―――と。

「・・・・・・」

資料を開く女性の手に目がとまった。
遠目では分からない程度の震え―――。
カクカクと震える細い手に目が釘付けになった。

「―――ありました。在庫は充分にあります」

バッシュが求めていた剣の資料を見つけ女性がバッシュへ顔を向ける。
落ち着いていると思っていたその瞳は不安定に揺れていた。

驚かなかったわけではない。
落ち着いていたわけではない。
ただ必死に恐怖を隠していた。

「もう一つ探してほしいものがあるのだが・・・」

己の庇護欲がかきたてられ、バッシュは女性が手にした資料を覗くような形で近づき震える手を包むように握った。
大きく温かい手に突然握られ少し目を見開く女性にバッシュは探して欲しい剣の名を伝えながら落ち着くように視線で伝えた。

「・・・すみません。その剣の名は聞いたことがありませんが・・・」
「最近新しく出品されたばかりの名剣なんだそうだ。新商品の欄に載ってはいないか?」
「探してみます。もう一度剣の名を教えていただけますか」
「頼む。紙とペンを貸してくれないか? スペルを書こう」

バッシュの視線に気づき女性もバッシュの流れに合わせて会話を伸ばす。
紙とペンを差し出すとバッシュはすぐさまペンを走らせた。

「こういう剣なんだ。少々名が長いが、聞いたことはないかい?」

そう言いつつ紙に走らせた字は

 

“力になろう。あの男とは知り合いか?”

 

「いいえ。初めてお聞きします」

バッシュが望む剣は知らないのだと答える表の返答にあわせ、乱入してきた男は知人ではないと女性は二重の返答を返してきた。
女性の上手い返答にバッシュはわずかに口の端を上げた。

「そうか。ならばこの剣でもいい。最近この村で精製されていると聞いた。あるなら見せてくれないか?」

再びバッシュがペンを走らせ女性に走り書きした字を見せる。
その字を見て女性はわずかに笑みを浮かべバッシュを見た。

「先日完成したばかりです。お持ちしますから少々お待ちください」

そう言って女性は再びカウンターの奥へ行き、ほどなくして大剣を抱えて持って来た。

「ありがとう」

礼を言ってバッシュはその剣を手に持った。
それはこの店に入って一番最初に女性が勧めてきた剣。
本来剣は厚みが薄く、そして細い。
銃で撃ち込まれれば簡単に割れてしまう。
しかし出来上がったばかりのこの大剣は重く少々扱いが難しいながらも、厚みもあり幅も太い。
上手く使いこなせば、それで銃弾を避け、撥ねることができる。
そう勧められた剣。

ペンを走らせ書いた文字でバッシュは一度は断ったこの剣を持ってくるように女性に要望した。

その目的はただ一つ―――

 

「なんだ、てめぇはッ」

大剣を手にしてすぐ、視線を店の入り口に構える男に向けると相手は睨み返してきた。

「そこを退いてもらおうか」

ゆっくりと男に歩み寄りつつバッシュは静かに言う。

「その女は置いていけ」

吐き捨てるように言う男の視線の先にはバッシュに手を掴まれ守られるように背に隠れるこの店の女性。

「彼女は連れて行く」
「はぁ?」

どのようなやり取りでそんなことになったのか、知らぬ男は間抜けな声を出してバッシュに銃口を向けた。

「無駄死にしたいらしいな」
「それは君のほうだ」

どんな理由で男が女性を殺そうとし、どんな理由で女性は男に狙われているのか。
バッシュは全く知らない。
だが突然起こったこの状況を見過ごすことはできない。
みすみす女性が殺されるのを許すわけにはいかない。
バッシュが女性の命を生に繋ぐ唯一の糸なのだ。今は。
たった一つしかない出入り口へ向かうバッシュの姿に男の怒りが達し、引き金を引いてバッシュの背に守られている女性に向けて発砲した。

放たれた3発の弾はガキンッという金属音に掻き消される。
驚く男の視線の先にはバッシュが手にした大剣が女性の盾となっていた。

そのことに更に怒り、再び発砲しようとする男にバッシュは手にしたばかりの大剣を男へと大きく振り下ろした。

 

 

 

 

 

「小鳥の次はコカットリス・・・。んでその次は女か?・・・アンタ拾いもんが相当好きだな」

宿へ帰ってくるとバルフレアがバッシュを見た直後そう漏らした。
バッシュの隣には女性が一人。
不安を打ち消したくて繋いだ手は未だ強く握っている。

「名前を聞かせてもらってもいいか?」

女性に向かって紳士に聞いてくるバルフレアの言葉に、そう言えばまだ名前も知らないことに気づいた。
なぜあんな状況になってしまったのか。その説明もまだしてもらっていない。
そのことに大きくため息をつき呆れてその場を去るバルフレアを背にバッシュは女性へと向き合った。

 

「君の名を聞かせてくれるか?」

今更のように思える質問に女性はバッシュの瞳を見つめ、くすりと笑った。

 

 

 

 

 


〜あとがき〜

 

今思えば本当になんてものを書いたんだろうかと思ってしまいます。
正直、この話は削除しようかと思いましたが、過去にお礼拍手SSとして表示したのは確かなんだし、更新しとかなきゃなぁ〜と
思って泣く泣く(笑)更新です。
自分でもなんでこんな話書いたのか今もってさっぱりなんですよね〜。
なんで書いたんでしょう?
設定めちゃくちゃだし、加筆修正少ししたのですが、それでもやっぱり変であることに変わりはないし・・・
ちょっと穴があったら入りたいくらいの羞恥心がくる作品なんですけど(笑)