Web拍手 バッシュ夢 No.2

 

 

 

以前お礼画面に表示したバッシュ夢1([Novel FF12]の過去拍手SSのNo.2)より少し前の話です。

 

 

 

「バルフレア―――。すまないが、君に頼みたいことがあるんだ」

いつになく緊張な面持ちでこっちへ話しかけてくる元将軍様。
顔は強張っているのに目元と頬が変に揺らいでいる。

あーもー。その表情だけで何の話か簡単に想像つくんだよ、将軍。

「一体何の話だ? 明日の旅路はもう決めただろ?」
「あ、いや。旅の話ではないのだ・・・」
「じゃあ陣形のことか? その話はまだだったな」
「―――そういう話でもないんだ」

夕食後、就寝するまでに話し合う普段の会話を取り上げて、心の中でくつくつと笑いながらバルフレアは話題をワザと探る。

「じゃあ何の話だってんだ?」

おおよその想像はつきながらも、あえて問いかけるが、心が盲目な将軍様は分かっちゃいないらしい。

「実はだな―――」

なんて真面目な表情で人の腕を掴み、皆の輪から外れていく。
そして内緒話でもするかのように地面に屈みこんで話をし始めるバッシュ・・・

 

おいおい・・・この俺にも同じことをしろっていうのか?

 

やや呆れたが、いつになく迷いを混じらせた真面目な表情で真剣に語り出す態度からみて、仕方なく自分もしゃがんでバッシュに合わせてやる。

そしてため息もらしつつもバッシュが語る、『頼みごと』の経緯を聞いてやると―――

 

 

「は? アンタ本気でそんなこと考えてるのか???」
「そうだ。 どうだろうか、バルフレア」
「どうだろうか、って―――。っぷ、・・・くくっ」

最初に予測したとおりの話題。
しかし内容はとんでもなく突拍子もなくて・・・。
思わず吹き出して、腹を抱えて笑い出す。
声を出して笑うなんて久しぶりだから他の仲間の視線がいっせいにこっちを向いている。

だが腹の底から湧き上がる笑いはそうそう止まらない。
なぜ俺が笑っているのか分かっちゃいない将軍は顔を赤くしながら、それでも怒ってる。

「なぜ笑うんだ? 私は真面目な話をしているんだが」
「それのドコが真面目な話なんだよ。 あ―、腹いてェ」
「バルフレアっ」
「そう怒るなって。 笑うな、ってのが無理な話だ。 アンタ一体いくつなんだよ?」
「36だが?」

未だ腹を抱え、笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を指の腹で拭いながら聞くと、ムッとした顔で大真面目に歳を答える将軍様。

 

ホントあんたは堅物だな。
俺が聞いてるのはオツムの話なんだよ。

 

心中でそう返答が生まれたが素直に言葉にするのは勿体無くて、そのまま飲み込む。

「久しぶりに本気で笑わせてもらったぜ。 アンタ真面目に気持ち伝える気があるのか?」
「無論だ」
「だったら俺に向かって悩んでるヒマがあったら、直球で言いに行ったらどうなんだ? 初恋悩むアイツじゃあるまいし」

アイツと言いつつ顎でヴァンを指すと、少々将軍様の機嫌は悪くなったようだ。

「私の歳も少しは考慮に入れてくれないか。ヴァンのように真っ直ぐ行って問題ないなら私もこんなに悩みはしないし、君に頼み事もしない」

 

そのシワ寄せが俺のトコに来るんじゃ結局ヴァンと変わりないんじゃないか?

 

ボソッと呟いた言葉にバッシュの耳が鋭く反応する。

「何か言ったか?」
「なんでもない」

 

誰かが言った。恋は盲目だ、と。
馬鹿げていると笑ったが、目の前のバッシュが今まさにそんなカンジだ。
俺より一回りも上の男が恋に盲目?! しかも将軍様が、だ。

そして想い人は俺よりも年下の―――

 

「君の助けがあってこそ、成功するものだと思うのだ」

いや、できれば自分の力だけでやってくれ。

「うまくいけば彼女の気持ちも分かるだろう」
「有り難迷惑な作戦だけどな」
「何か言ったか?」
「ああ言った。そのまんまのやり方じゃあ不自然すぎる。もうちょっと現実味を帯びる内容にしないと駄目なんじゃないか?」
「ではこの場所を歩いている時のタイミングで後ろから―――」

俺の提案を素直に受け、別の策を考え始めるバッシュ。

すんなり策を変えるほどアンタの気持ちは変化するもんなのか?

 

いや、待てよ。 もしかしたら結構面白いことに・・・

 

「ちょっと待て。根本から変えよう。まずこの場所を歩くのが前程だ。その場で戦っている時、アンタはあえて湖の中へ―――」
「ふむふむ」

周辺に落ちている木の枝でガリガリと地面を擦りながら馬鹿らしい作戦を提案する俺と、その馬鹿らしい作戦を真面目に聞いて頷く将軍様。
盲目じゃなけりゃ普通こんな作戦おかしいと思うだろ。

だが盲目となった将軍様はわき目もふらず実行。

 

そんな元で作られた作戦とは知らず、あいつはアンタを本気で助けるために飛び込んだ。

 

 

これも 一種の盲目だと言えるのか?

 

 

 

 

 


〜あとがき〜

 

バッシュ拍手1を書いた時、BBSでシュウ様とのやりとりでバッシュがバルフレアに相談している姿って
きっと地面にしゃがみ込んでガリガリ木の枝で書いてるのかな〜とか話していて暴発した結果生まれたストーリーでした。
この後に続くストーリーは確かシリアス系だったはずなんですが(笑)
少々ギャグめいた話の元でのバッシュの作戦となってしまいました。
こんな壊れたバッシュを書くつもり絶対なかったのに・・・
こんなイジリキャラなバルフレアを書くつもり絶対なかったのに・・・
嗚呼、どこで道を間違えたんでしょう?