Web拍手 バルフレア夢 〜ミニシリーズ8話〜

 

 

 

※未プレイシーンなので噂と妄想でお送りします。

 

 

 

「おはよう。いい天気だね」

「おはよう。神のご加護を」

目を覚まし扉を開くと目の前に広がるのは壮大な雲海。
眩しい朝日を浴びながら外に出て、大聖堂へと足を運ぶ。
重々しい扉を開き、大聖堂の中に入っても迎え入れてくれる者は居ない。

かつての御方が立っていた場所には常に耐えぬ花束の山と、そして隣には白いピアノ。

カタン。

早速腰掛け蓋を上げる。
艶やかに光る真新しいピアノは早く歌いたがっているように見えた。
手を置き、そして鍵盤を叩いて奏で始める。

朝一番に奏でる。
それはもうすでに日課となっていること。
決められた曲を奏で、かつての御方と、そして足を運ぶ人達に聞かせる。

ゴーン。ゴーン。ゴーン。・・・

決められた曲を弾き終わると、それを待っていたかのように神都全体に鐘の音が響き渡る。
それを合図にこちらは手を止めキャンプをする人達の元へと行く。

 

「今日もちゃあんと聞きに行ったよ。あんたの音色はいつ聞いてもいいね。心が洗われるよ」
「ありがとう」

足を運ぶたびに絶賛してくれる給仕のバンガ。
黄褐色のルグア・バンガであるこの女性は必ず朝食を取る時、傍に座ってくる。

「ねぇ、そろそろ名前を教えてくれないかい?もうここに来て1年になるじゃないか。いい加減“あんた”と呼ぶのが面倒臭くなってねぇ。もう堅苦しい仲じゃないだろう?」

ワニのように口をパカリと開いて笑いつつも、本気で名前を聞いてくる。
はぐらかし続けるには長すぎた。しかし今更名乗るつもりもない。
行商として各地を移動する生業を本職とするこの女性には、あまり言いたくなかった。
はぐらかしつつも侘びを入れて席を立ち、本殿へと戻った。

 

「レメリー。長老が呼んでるわ」
「分かった」

誰かの傍に居て安心できる。それはこのヴィエラだけだった。
レメリーはヒュムのように必要以上に近づいたりしない。
仲間という意識で妙に馴れ合ったり、根掘り葉掘り聞いたりしない。
用がない限り互いに会うこともないし、用件のみの会話しかしない。
それでもかつてフランというヴィエラと共に居たこともありヴィエラという種族の性も知っている。
だから上手く距離を取れて安定できる。
大聖堂から離れ奥まった場所にある建物にいつもレメリーは居る。
呼びに行った時も彼女はそこにいた。
短い返事をして、一人で先にスタスタ歩き出す。
だけど今日は珍しくその足を止めた。

 

「いつまでここにとどまるの?」

 

予想もしないレメリーからの問いかけ。

「・・・・・・え?」
「答えは決まっているの?」
「・・・何の話なの?」

元々レメリーは突発的に話を上げてくる傾向があった。
そして紡ぐ言葉も比ゆ的な内容も多く・・・
だからこの時レメリーの言っている意味が分からなかった。

 

「そろそろ刈り取りの時期よ」

 

言葉の意味が理解できないうちにレメリーは歩き出してしまった。
レメリーの姿が見えなくなってからようやく歩き出し、大聖堂へと戻る。

 

トーン。

 

大聖堂の階段を上がっている時、突然大聖堂の中から音がする。
誰が鍵盤を叩いたかなんて分かるワケがないはずなのに・・・
その音色が自分を呼んでいるような気がして慌てて階段を駆け上がり扉を開いた。
中に入り山のように積まれた花束の横、白いピアノへと視線を向ける。
同じ白の、背もたれが無い椅子に腰掛けて脚を組みこちらを見返す瞳が2つ。
恐る恐る近づいてみる。

相変わらず折り目のついた真っ白なブラウスに、高級感を漂わせるブラウンのベスト。
耳につけているピアスやカフスもあの時のままで・・・
でも少しだけ、こちらを見つめる表情は男らしさが増していた。

 

「まさかこんな所に逃げ込んでるなんてさすがの俺も気が付かなかったぜ」

 

まさか夢なのではないか?

そう思って口を開いても名をなかなか紡げなかった私に対し、向こうから声をかけてきた。
1年ぶりに聞く懐かしい声に目の前の出来事が現実味を帯び、懐かしさと安堵感が急速に自分を襲う。

「バルフレアッ!!!」

ようやっと名を叫んで駆け寄れば、次の行動を予測してバルフレアが両手を広げた。
躊躇することなくその胸に飛び込む。

「脱出できたのねっ!でもどうして音沙汰無かったの?怪我でもしたの?!」
「深手は負ってねぇよ。それにもうとっくに完治した」
「ああ、良かったっ」

慌てて身体に触れ怪我が無いか心配する私に苦笑するその表情で、もう心配事はないんだと分かってようやく安心し、もう一度しがみついた。

 

 

 

 

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〜あとがき〜

 

10話までの短いシリーズものの8話です。
ED後の話です。
バルフレアが消息不明のままシュトラールの傍にいるのに堪えられなくなって、なぜか主人公は神都ブルオミシェイスに逃げてます。
逃げた先がアルケイディアだったらバルフレア迎えに行きにくいでしょうね(笑)

ちなみにED後、バルフレアがしばらく消息不明だったのはフランが重症負って、バルフレアも大怪我負ったから傷が癒えるまで隠れていた・・・というのは公式設定ですか?
他サイトでほとんどそのような内容の作品を見るのですが・・・
だからこの作品も一応バルフレアは怪我を負っていたということにしておきました(笑)