15万カウントおめでとう企画  No.4 バッシュ夢



「チョコボに乗れないヤツなんて初めて見たな」
驚き、また別の意味で関心したように言うバルフレアの言葉にカチン☆ときて―――

私は今、チョコボと闘っている



空には飛空艇が飛び交っているが大地は徒歩かチョコボ。
今や移動の代名詞として上がるチョコボ。
チョコボと言えばバッシュ。
そんな右から左へ流れる連想でバッシュに願い、躾の行き届いた大人しいチョコボをチョコボ屋から借りてきてもらった。
その流れのまま乗り方を教えてくれようとするバッシュに、自分一人で頑張りたいと丁重に断った。

それから早10分。。。

「う〜〜〜ん・・・」
腕を組み、眉を寄せて見上げる先にはクェクェ鳴いてるチョコボの姿。
良く躾られているため逃げずに目の前で大人しくしている。
そのチョコボの背に鞍は無かった。
つまりチョコボに乗るために足をかける場所がどこにもない・・・。
鞍は無い方がいいとバッシュに言ったのは自分だ。
地面からチョコボの背まで140〜150cmもある。
チョコボのどこを掴み、どう脚を上げて乗るか、さっきからそれをずっと考えていた。
「・・・初めは鞍を付けた方がいいと思うのだが」
さっきからずっと気になって視線を向けていたバッシュが、見かねてそうアドバイスをしてきた。
「それは絶対イヤ」
「なぜ?」
「鞍を付けたら乗るのは簡単だもの。 バルフレアには鞍が無くても乗れる所を見せたいのっ!」
依然チョコボを見上げつつそうキッパリ言うとバッシュが少しため息ついたのが聞こえた。

だってめちゃくちゃ悔しい。
笑われたようで腹が立つ。
ここは一つバルフレアを驚かせるくらい上達して華麗にチョコボに乗ってやる!!

心の中でゴゥゴゥと意欲が燃え盛り、とにかく乗ってみようとチョコボの毛を掴んだ。
「グェッ☆」
掴んだ毛を引っ張ることで自分の身体を上げようと思ったが、引っ張った直後チョコボがカエルをひき潰したような声を上げて羽をせわしなくバタつかせた。
「あ、ごめんごめん」
慌ててチョコボの毛から手を離し謝ったが、とにかくもう一度と思い今度は別の場所を掴んで乗ろうとする。
「グェッ!」
「あ、やっぱりコレもダメか」
さっぱり乗り方が分からない。
そもそも鞍が付いていても、左右どちらかにいる時、どっちの足を鞍にかけて乗ればいいのか、そのイメージさえも出てこない。
「う〜〜〜ん・・・」
再び腕を組みチョコボを見上げるその姿を見てバッシュは苦笑した。

「初心者が鞍も無しに乗るのは絶対に無理だ」
厳しい言い方ではなく、少し笑いを含みながらバッシュが再び傍に来ると、指をからめて組んだバッシュの両手が、手の平を上にして上体を屈ませ差し出してきた。
「ここに足を乗せて」
キョトンとする私に突然バッシュは組んだ自分の両手に足を乗せて、それでチョコボに乗れと言ってきた。
「えっ、む、無理ムリ!バッシュさんの手に足をかけるなんてっ」
「気にすることはない。鞍が無い場合、普通はこうやってチョコボに乗るんだ」
「いや、ホントにいいよっ! 私が気にするって!」
慌てて必死に断りを入れるとバッシュはまた苦笑し、そして傍らにいるチョコボへと見上げた。
「この子が走りたがっている。少し気分転換の散歩ということで、どうかな?」
躾けられて大人しくしているが、本当は走りたくてウズウズしている。
私の目からは全く分かなかったが、チョコボに乗り慣れているバッシュが言うのだから本当なんだろう。
「わかりました」
バッシュの提案に了承して、それから小さく謝罪をかけてから足を上げた。
「両手はチョコボの首の根元を掴んで・・・ああ、強く掴むとまた苦しがるから優しく・・・。 では、上げるぞ」
「うわっ」
バッシュの合図で彼の手に乗せた足が勢い良く上がり、フワリと簡単にチョコボの背に乗った。
「わー、すごい」
初めて乗ったチョコボの感覚につい言葉が漏れる。
乗るだけで、あれほど苦戦したのにバッシュが少し手を貸してくれただけで、ものの数秒で簡単に乗ることができた。
チョコボの背に乗った自分の視界はとても高く、初めてバッシュを見下ろせる。
「少し前へ詰めてくれないか?」
普段とは逆転し、自分を見上げるバッシュに言われるまま少しチョコボの前方へ詰めるとバッシュがチョコボの背中を掴んだ。
なにをするんだろう? と黙って見ていると「はっ」と掛け声をかけてバッシュが勢い良くチョコボに乗ってきた。
つまりは私の真後ろに。
「・・・チョコボって二人乗りできるんですか?」
驚き、振り返りつつ見上げると目と鼻の先にバッシュの顔が・・・。
「不可能じゃない」
優しく笑みそう答えるとバッシュはチョコボに結わえられていた手綱を掴み、再び掛け声をかけてチョコボを走らせた。
「うわわっ」
クエッ☆と羽を何度かバタつかせて走り始めたチョコボの勢いに負けて自分の身体はドシンッと後ろにいるバッシュの胸へ強く当たった。
「あ、ごめ―――いたぁ〜!」
「乗り慣れてない時にうかつに喋ると舌を噛むぞ・・・って遅かったな」
声を上げて笑うバッシュの前では、謝ろうとして舌を思い切り噛み目に涙を溜める自分。
首を前に突き出し、2本の足を交互に前へ出して走るチョコボの背中は上下に揺れ、その背に乗る自分も上下に揺れる。
「両足を内側に締めてごらん。チョコボの身体を自分の脚で挟むような感覚だ。そうすれば自分の身体が固定できるぞ」
走らせつつ助言をくれるバッシュの言葉に従い、揺られ慣れないながらも言われた感覚で脚に力を入れると、なるほど揺れも視界も安定した。
そうなると走るチョコボに慣れるのは早く、しばらくすれば余裕をもって周りの景色が見れるようになる。
「すごく早い〜!」
ヒュムの何倍も早く走るチョコボの背にいるとまるで風を切っているような感覚がくる。
風と共に流れるように変わっていく景色はとても壮大で、このまま空を飛んでいけそうだ。
そのままバッシュはチョコボを走らせ高台まで昇った。
走るチョコボも機嫌が良いようで、時々クェクェと私達に向かって鳴く。
丁度今は逢魔が時。
見渡す限り広々とした平原の緑が夕陽に照らされ緑から黄色、そして金色へと姿を変えていく。
「とっても綺麗」
「ああ、そうだな」
チョコボに乗っていれば魔物に襲われることなく好きに景色を堪能できる。
そのままバッシュと一緒に夕陽が地平線へ沈むまでただジッと眺めていた。

「もう戻らなきゃいけないわね」
日が暮れて辺りが暗くなり少し残念そうに言うと、バッシュではなくチョコボがクェッと鳴いて答えた。
「走り足りないんだろう」
鳴いたチョコボの首筋を撫でてバッシュが優しくチョコボに問いかける。
「チョコボの言いたいこと分かるんですか?」
「言葉を交わせるわけじゃないが、何をしたがっているのかは大体分かる。 君もチョコボと一緒に居続けていれば慣れて分かるようになるさ。その頃には鞍が無くても乗れるようになるだろう」
優しくそう言われたが、要するに鞍無しで乗るには時間がかかるということだと知り私の肩はついガックリと落ちる。
「そう落ち込むこともないだろう。バルフレアも鞍無しでは乗れないんだ。気にすることはない」
フォローを入れるバッシュの言葉に自分の耳がぴくりと動いた。
「えっ? 今なんて?」
「なにがだ?」
「今の言葉っ!もう一回言って!」
「・・・“気にすることはない”」
「その前!」
「・・・“バルフレアも鞍無しでは乗れない”」
再び聞いたその言葉。
2度も聞いたので頭の中で何度も繰り返される。
「なんだぁ〜。バルフレアも鞍が無いと乗れないんだー」
劣等感の中から見出した優越感。そういうことだと思うが、自分の中ではそんなこと気にならない。
「よく分からないが、納得したのか?」
「うん、とっても!」
クスクス笑う私が元気良く返答すると、またよからぬことを考えているだろう、とバッシュが苦笑した。
「バッシュさん、鞍無しで乗る方法教えてくださいね」
「鞍が無い方がいいのか?」
「うん」
「どうしても?」
「どうしても♪ バルフレアに一泡吹かせてやるのっ」
その時のバルフレアの表情を想像してまたクスクス笑い出す姿につられてバッシュも笑みを浮かべた。

「さあ、帰ろう」







☆ちょこっとあとがき☆
リクエスト第4号です!
NOBUさんからのリクエストで、内容は「主人公とバッシュのチョコボデート」でした。
すいません、ちょっと「デート」というにはデートっぽくなかったかも。
チョコボの乗り方は乗馬を参考に、と思ったのですが、乗った経験がなかった。
だからインターネットで調べようと思ったらここ最近1日のほとんどがネットに繋がらないので調べようが無かった(笑)
だから自分の勝手な思い込みでチョコボの乗り方を描写しました。
乗馬のイロハを調べたら調整していきたいなと思います♪

ちなみに、馬から落ちることを「落馬」と言いますね。
ではチョコボから落ちることをなんと言うのでしょう?
「落チョコボ(おちちょこぼ)(らくちょこぼ)」???
それとも言いやすいように略して「落チョ(らくちょ)」だったりして???
ぷっ☆
ちょっと笑えるのは私だけでしょうか・・・v