朝日放送事件 / 済生会中央病院事件 / 中部日本放送事件 / 日本貨物鉄道外1社(北海道不採用)事件 / 阪神観光事件 / 油研工業事件
労使紛争に関する判例 使用者
◇朝日放送事件◇ 最高裁判平7・2・28
-事件概要-
会社が、@組合から申し入れのあった下請労働者に関する事項を議題とする団体交渉を、同人らの使用者ではないとの理由で拒否したこと、A会社の職制が組合員に対して行った脱退勧奨等が不当労働行為であるとして申立てがあった事件。初審大阪地労委の一部救済命令に対し、会社から再審査の申立てがなされ、中労委は、同命令を一部変更し、就労にかかる諸条件に関する団交応諾等を命じた。会社は、これを不服として、東京地裁に訴を提起したが、棄却されたため、さらに控訴していたところ、東京高裁は原判決及び中労委命令を取り消すとの判決を言い渡し、中労委が上告していた。
-判決要旨-
会社は、請負3社から派遣される従業員が従事すべき業務の全般につき管理しており、その請負3社の従業員の基本的な労働条件について、雇用主である請負3社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったものというべきであるから、その限りにおいて、労組法7条の「使用者」に当たると解するのが相当であり、自ら決定できる勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等に関する限り、正当な理由がなければ団交を拒否できないというべきであるから、使用者でないことを理由とする本件団交拒否は正当な理由がなく、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。
◇済生会中央病院事件◇ 最高裁判昭60・7・19
-事件概要-
病院が、一時金の算定基礎となる新賃金が未妥結であることを理由に昭和51年夏季及び年末一時金を組合員に支給しなかったというもので、済生会及び病院は、初審の東京地労委の救済命令を支持した中労委命令の取消しを求めて行政訴訟を提起した。東京地裁は、済生会の請求を棄却し、病院の訴については訴訟当事者能力なしとして却下した。ところが、東京高裁は、済生会には病院あての命令の取消しを求める訴の利益はなく、また、ポスト・ノーティスの掲示期間は経過しており、履行不能であるから、これの取消しを求める利益もないとし、一審の請求棄却部分を取消した。
これに対して最高裁は、病院を名宛人としている命令部分は実質的には済生会を名宛人として、これに対して命令内容の実現を義務づける趣旨のものであること、ポスト・ノーティスについても命令が命じている掲示期間が経過したからといって、履行しない限り掲示義務は消滅しないとの判断を示し、原判決の済生会に関する部分を破棄し、東京高裁に差し戻したものである。
-判決要旨-
○当事者能力・当事者適格
労働組合法27条の規定による救済命令の名宛人とされる「使用者」は、不当労働行為を禁止する同法7条の規定にいう「使用者」であり、かつ、法律上独立した権利義務の帰属主体であることを要し、企業主体である法人の組織の構成部分にすぎないものを名宛人とする救済命令は瑕疵があることとなるが、不当労働行為救済制度の趣旨、目的からみて、右構成部分を名宛人とする救済命令は、実質的には右構成部分を含む当該法人を名宛人とし、これに対し命令の内容を実現することを義務付ける趣旨のものと解するのが相当である。
○訴の利益
法人組織の構成部分を名宛人とする救済命令は、実質的には右構成部分を含む当該法人を名宛人とし、これに対し命令の内容を実現することを義務付ける趣旨のものと解すべきであるから、法人は右救済命令について、その取消を求める法律上の利益がある。
○取消しの範囲
謝罪文の掲示を命ずる救済命令が発せられたときは、当該命令書の交付により謝罪文の掲示義務が発生し、かつ、右義務は履行完了まで継続するものというべきであり、救済命令主文上の履行猶予期間及び掲示期間が経過したとしても、そのことによって救済命令の命ずる掲示義務が消滅し、あるいは履行不能となるものではない。
○訴の利益
法人組織の構成部分を名宛人とする救済命令の取消請求につき、法人に訴えの利益がないとして、また、謝罪文の掲示を求める命令は掲示すべきことを命ぜられた期間が経過し、履行不能であって取消しを求める訴えの利益がないとして法人の訴えを却下した原判決は破棄を免れず、原審に差し戻す。
○当事者能力・当事者適格
病院が提起した訴えにつき、病院は法人の一施設にすぎず訴訟当事者能力がないとしてこれを却下した原判決は正当として是認することができる。
◇中部日本放送事件◇ 最高裁判昭51・5・6
-事件概要-
管弦楽団員をもって結成された組合からの団交申入れを拒否した事件で、地労委は労使関係を否認し請求を棄却したが地裁はこれを取消し会社からの控訴を高裁は棄却し、さらに上告において最高裁も、これを支持し棄却した。
-判決要旨-
○出演契約 ○雇用主でないことを理由
楽団員の自由出演契約の報酬が労務提供の対価であることなどからすると、楽団員は会社との関係で労組法の適用を受ける労働者であり、楽団員と会社との間に労組法7条の不当労働行為が成立する。
◇日本貨物鉄道外1社(北海道不採用)事件◇ 最高裁判平15・12・22
-事件概要-
国鉄分割・民営化に際してJR各社へ採用されなかったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、北海道地労委は、被申立人JR各社に対し、JR各社発足時において採用されたものとしての取扱いを命じ、中労委は、初審命令の一部を変更したほかはJR各社の再審査申立てを棄却したところ、JR各社及び国労は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起した。これに対し同地裁は、会社の訴えを認め、中労委命令を取り消すとの判決及び国労の訴えを棄却するとの判決を言い渡した。これに対し、中労委及び国労は、東京高裁に控訴を提起したが、同高裁は、控訴を棄却し、これを受け、中労委並びに国労は、最高裁に上告及び上告受理申立てを行った。
最高裁は、上告事件について、民訴法第312条所定の上告理由に該当しないとして上告棄却を決定し、併せて、中労委の上告受理申立てについて、上告審として受理する決定を行い、このうち、上告審として受理するとされた上告受理申立て事件については、JR各社は労組法第7条にいう「使用者」として不当労働行為の責任を負わないとして、中労委の上告を棄却した。
-判決要旨-
日本国有鉄道改革法は、承継法人(JR各社)の成立時(昭和62年4月1日)の職員採用について、その採用手続の各段階における日本国有鉄道と設立委員の権限を明確に分離して規定しており、専ら日本国有鉄道が採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成に当たり組合差別をしたという場合には、労働組合法第7条の適用上、専ら日本国有鉄道、次いで、日本国有鉄道清算事業団にその責任を負わせることとしたものと解さざるを得ず、このような日本国有鉄道改革法の規定する法律関係の下においては、設立委員ひいてはJR各社は、労働組合法第7条に言う「使用者」として不当労働行為の責任を負わない。
会社の昭和62年6月1日の職員の追加採用は、会社が雇入れについて有する広い範囲の自由に基づいてした新規の採用であって、その採用の拒否が、従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情があるといえないから、その採用の拒否は、労働組合法第7条第1号本文にいう不利益な取扱いに当たらない。
◇阪神観光事件◇ 最高裁判昭62・2・26
-事件概要-
キャバレーを経営する会社が(1)組合の賃金の増額等に関する団体交渉を拒否したこと、(2)組合員である楽団員に対し、請負契約解除予告の通知をしたこと等が不当労働行為であるとして申立てがなされた事件で、初審の大阪地労委は、会社の団交の応諾と請負契約解除予告の通知等に関し陳謝文の交付を命じ、中労委も初審命令主文の一部を変更するほかは初審命令を支持した。これを不服として会社が行政訴訟を提起したところ、東京地裁は、昭和54年8月30日に会社は、本件楽団員らの使用者にあたらないとして中労委の命令を取り消し、東京高裁も昭和57年8月10日に中労委の控訴を棄却した。これに対し中労委及び組合は、上告したところ、昭和62年2月26日に最高裁は、原判決を破棄し、一審判決を取り消し被上告人の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。
-判決要旨-
○出演契約
楽団員の営業組織への組入れ状況、演奏業務の従事方法、演奏料の労務の対価としての性格から、会社は楽団員に対し一般的な指揮命令権を有していたとみるべきであり、楽団員に対する関係で労組法7条の使用者に当たる。
○救済方法の適法性 ○審査手続の違法
使用者は、救済命令が労組法2条及び5条2項の要件を欠いた組合の申立てに基づき発せられたことのみを理由として、該命令の取り消しを求めることはできない。
◇油研工業事件◇ 最高裁判昭51・ 5・ 6
-事件概要-
下請会社から派遣されたいわゆる社外工に対し、下請会社との請負契約解除を理由に同人らの仕事を打切ったことに関する団交拒否が争われた事件で、地労委は労使関係を否認し請求を棄却したが、地裁はこれを取消し会社からの控訴を高裁は棄却しさらに上告において最高裁も、原判決を支持し上告を棄却した。
-判決要旨-
○請負・委任・派遣契約 ○雇用主でないことを理由
社外工に対し、社外工受入れ会社の就業規則が適用されていなくても、両者間に労組法の適用を受けるべき雇用関係が成立していれば、社外工受入れ会社は労組法7条にいう使用者に当たり、これと同旨の結論をとる原判決に所論の違法はない。
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