秋北バス事件 / 朝日火災海上保険(石堂)事件 / 朝日火災海上保険(高田)事件 / 大曲市農協事件 / 第四銀行事件 / 中根製作所事件 / 日産自動車事件 / 日本シェーリング事件 / みちのく銀行事件
労使紛争に関する判例 労働条件の不利益変更
◇ 秋北バス事件 ◇ 最高裁判昭43・12・25
-判決要旨-
○ 使用者が、あらたな就業規則の作成または変更によつて、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないが、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないと解すべきである。
○ 従来停年制のなかつた主任以上の職にある被用者に対して、使用者会社がその就業規則であらたに五五歳の停年制を定めた場合において、同会社の般職種の被用者の停年が50歳と定められており、また、右改正にかかる規則条項において、被解雇者に対する再雇用の特則が設けられ、同条項を一律に適用することによつて生ずる苛酷な結果を緩和する途が講ぜられている等判示の事情があるときは、右改正条項は、同条項の改正後ただちにその適用によつて解雇されることに上なる被用者に対しても、その同意の有無にかかわらず、効力を有するものと解すべきである。
○ 就業規則は、当該事業場内での社会的規範であるだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、法的規範としての性質を認められるに至つているものと解すべきである。
◇朝日火災海上保険(石堂)事件◇ 最高裁判平9・3・27
-事件概要-
労働者]は、A会社鉄道保険部に雇用された後、鉄道保険部の業務がB会社に引き継がれたのに伴い、B会社の労働者となった。Xのように転籍した労働者の労働条件は、当初はA社時代のものを引き継ぐこととされたが、これによって当初からB社の労働者であった者との間に労働条件の格差が生じたため、B社は、労働組合との間でA社出身者とそれ以外の者の労働条件の統一について交渉を続けた結果、就業時間、退職金、賃金制度等については昭和47年までに統一が実現したが、定年年齢については、B社と組合の間で合意が成立せず、A社出身者は満63歳、それ以外の者は満55歳という格差のある状況が継続していた。
その後、B社の経営難を背景として交渉が行われた結果、B社と組合との間で、定年年齢を57歳とすると共に退職金額の計算方法を変更する内容の労働協約が昭和58年に締結された。Zの組合員であったX( 当時53歳) は、この労働協約が適用されると定年年齢が引き下げられる上に退職金支給基準率も引き下げられることから、従前の労働条件の適用を受ける地位の確認等を求めて提訴した。
-判決要旨-
本件労働協約は、Xの定年及び退職金算定方法を不利益に変更するものであってXが受ける不利益は決して小さいものではないが、同協約が締結されるに至った経緯、当時のBの経営状態、同協約に定められた基準の全体としての合理性に照らせば、同協約が特定の又は一部の組合員を殊更不利益に取扱うことを目的として締結されたなど労働組合の目的を逸脱して締結されたものとはいえず、その規範的効力を否定すべき理由はない。
本件労働協約に定める基準がXの労働条件を不利益に変更するものであることの一事をもってその規範的効力を否定することはできないし、Xの個別の同意又は労働組合に対する授権がない限りその規範的効力が認められないとも解されない。
◇朝日火災海上保険(高田)事件◇ 最高裁判平8・3・26
-判決要旨-
○ 具体的に発生した賃金請求権を事後に締結された労働協約や事後に変更された就業規則の遡及適用により処分又は変更することは許されないとされた。
○ 定年年齢の引き下げと退職金支給基準の変更を内容とする労働協約の非組合員への拡張適用について、労働協約の基準が非組合員の基準より不利益な場合にも、そのことのゆえに、規範的効力が及ばないのではないが、非組合員は組合の意思決定に関与しないこと等から、協約の不利益の程度、非組合員の組合員資格の有無等に照らし、拡張適用が著しく不合理であると認められる特段の事情のある時は規範的効力は及ばないとされた。
また、定年年齢を63歳から57歳に引き下げ、すでに57歳に達している特別社員(非組合員)の退職金を大幅に引き下げることは合理性がないとされた。
○退職金がそれまでの労働の対償である賃金の後払的な性格をも有するとされた。
◇ 大曲市農協事件 ◇ 最高裁判昭63・2・16
-判決要旨-
農業協同組合の合併に伴つて新たに作成された退職給与規程の退職金支給倍率の定めが一つの旧組合の支給倍率を低減するものであつても、それによる不利益は退職金額算定の基礎となる基本月俸が合併後増額された結果軽減される一方、右支給倍率の低減が、合併前に右組合のみが県農業協同組合中央会の退職金支給倍率適正化の指導・勧告に従わなかつたため他の合併当事組合との間に生じた退職金水準の格差を是正する必要上とられた措置であるなど判示の事情があるときは、右退職給与規程の退職金支給倍率の定めは、合理性があるものとして有効である。
◇第四銀行事件◇ 最高裁判平9・2・28
-判決要旨-
銀行が、就業規則を変更し、55歳から60歳への定年延長及びこれに伴う55歳以降の労働条件を定めた場合において、従前は、勤務に耐える健康状態にある男子行員が希望すれば58歳までの定年後在職制度の適用を受けることができるという事実上の運用がされており、右変更により、定年後在職者が58歳まで勤務して得ることを期待することができた賃金等の額を60歳定年近くまで勤務しなければ得ることができなくなるなど、その労働条件が実質的に不利益に変更されるとしても、右変更は、当時60歳定年制の実現が社会的にも強く要請されている一方、定年延長に伴う賃金水準等の見直しの必要性も高いという状況の中で、行員の約90パーセントで組織されている労働組合からの提案を受け、交渉、合意を経て労働協約を締結した上で行われたものであり、従前の55歳以降の労働条件は既得の権利とまではいえず、変更後の就業規則に基づく賃金水準は他行や社会一般の水準と比較してかなり高いなど判示の事情の下では、右就業規則の変更は、不利益緩和のための経過措置がなくても、合理的な内容のものであると認めることができないものではなく、右変更の1年半後に55歳を迎える男子行員に対しても効力を生ずる。
◇ 中根製作所事件 ◇ 東京地判平12・7・26
-判決要旨-
経営不振を理由として従業員の月額基本給を最高20%以上減額するとの会社側提案を受け、団体交渉、職場集会での意見聴取の上、代議委員会で了承され、締結・実施された労働協約について、@組合大会の決議により決めるとの組合規約に違反しているA経営上の必要性が認められない等から無効であるとして給与の差額の支払いを命じた原審を維持するとされたもの。
◇ 日産自動車事件 ◇ 最高裁判昭56・3・24
-判決要旨-
会社がその就業規則中に定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた場合において、担当職務が相当広範囲にわたつていて女子従業員全体を会社に対する貢献度の上がらない従業員とみるべき根拠はなく、労働の質量が向上しないのに実質賃金が上昇するという不均衡は生じておらず、少なくとも60歳前後までは男女とも右会社の通常の職務であれば職務遂行能力に欠けるところはなく、一律に従業員として不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はないなど、原判示の事情があつて、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である。
◇ 日本シェーリング事件 ◇ 最高裁判平1・12・14
-判決要旨-
すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が80パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
◇ みちのく銀行事件 ◇ 最高裁判平12・9・7
-判決要旨-
60歳定年制を採用していた銀行が、就業規則を変更し、55歳に達した行員を新設の専任職に発令するとともに、その基本給を55歳到達直前の額で凍結し、業績給を一律に50パーセント減額し、管理職手当及び役職手当は支給せず、賞与の支給率を削減するなどという専任職制度を導入した場合において、右就業規則の変更のうち賃金減額の効果を有する部分については、職務の軽減が図られていないにもかかわらず、右変更により専任職に発令された行員の退職時までの賃金が3割前後も削減され、代償措置は不十分であり、右変更後の賃金水準は高年層の事務職員のものとしては格別高いものとはいえず、他方、右変更により中堅層の賃金は格段の改善がされ、人件費全体は逆に上昇しているのであって、右変更は、中堅層の労働条件を改善する代わりに高年層の労働条件を一方的に引き下げたものといわざるを得ず、賃金水準切下げの差し迫った必要性に基づいてされたものではなく、執られた経過措置も高年層を適切に救済するものとはいえないなど判示の事情の下では、右部分は、高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるということはできず、これに同意しない右行員に対し効力を生じない。60歳定年制を採用していた銀行における55歳以上の行員を対照い55歳以上の行員の賃金に不利益を及ぼす就業規則の変更が右行員に対し効力を生じないとされた事例
◇◇ 最高裁判
-事件概要-
-判決要旨-
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