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烏賊の加工と調理 |
其他の加工品に關する索引
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松葉製品
解説 上級鯣(するめ)から製造した伸烏賊(のしいか)に、雲丹(うに)・昆布等や上新粉を赤や青に着色して煮熟した物を挟んで
密着させ、細く切斷した物で有る。此等の内、雲丹松葉に附いての製法を一例として示す。
鯣の皮、及び、鰭(ひれ)を除去した後、伸烏賊の製造方法に準じて伸展する。一方、練り雲丹100に對し寒天2乃至3を出來る限り少量の
水で加熱溶解し、冷却した後混ぜ、良く練り合わせて置く。伸烏賊の端を除き、此の上に練り上げた雲丹を薄く塗り、別の伸烏賊を載せて
輕く押し附け乾燥する。粗(ほぼ)乾いた頃、此れを重ねて加壓し、次いで再び乾燥し、挟んだ雲丹が適度に乾燥した時に一定の長さに
切斷し、更に2乃至3粍の幅に細斷して製品とする。
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烏賊ソーセージ
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の外套部の腹部中央を縦に
一直線に切り開く。次に頭脚部を漏斗中央部の處から切り開き、内蔵・眼球・嘴(くちばし)・軟甲、及び、脚肉の先端部を除去する。此の
作業中、内蔵を傷附け無い様に注意し無いと、肉の汚れが著しく成る。
洗浄 調理が終了すれば、烏賊の胴肉と頭脚肉を夫々れ洗浄し、水切りする。特に脚肉(腕肉)は揉む様に仕て洗い、吸盤を
完全に除去する事が必要で有る。
剥皮 烏賊肉は表皮中に色素細胞が含まれて居り、其の儘チョッパーや擂潰機に懸けて加熱した場合は色素が溶出して肉色を
惡くするので剥皮する必要が有る。剥皮は手作業か機会で行うのが最も無難で有るが、此の方法では胴肉以外には用いる事が出來ず、
歩留が惡く成る。烏賊の加工品を製造する時に用いられて居る温湯中で剥皮する方法は、肉温が摂氏46乃至47度迄上昇して蛋白質を
變性させ、製品に仕た時に弾力や折曲に對する抵抗性が生肉剥皮の場合に比較して可成り劣る。
練り製品の爲の其他の剥皮法としては、乳酸使用法、酢酸ソーダ使用法、瞬間加熱法、瞬間加熱後蛋白質分解酵素使用法、瞬間加熱後
酢酸ソーダ使用法等が考えられて居る。但し、間加熱法、瞬間加熱後蛋白質分解酵素使用法以外は時間が懸かると謂う欠點が有る。猶、
瞬間加熱法、瞬間加熱後蛋白質分解酵素使用法、瞬間加熱後酢酸ソーダ使用法を用いて剥皮した肉は、生肉と變わら無い弾力や折曲に
對する抵抗性を持つ製品が得られると謂われて居る。
擂潰 剥皮肉をチョッパーに懸けて細砕し、擂潰機(らいかいき)に入れて食塩を加えて擂(す)る。一方、畜肉をチョッパーに懸け
食塩を加えて擂潰機で擂り、充分に粘着性が出てから少量宛烏賊肉を加えて均一に成る様に混合する。別に用意した細切人参、玉葱、
胡椒、色素を加えて仕上げ擂潰する。畜肉は牛肉、又は、豚肉が良く、馬肉は弾力が出無い。配合の一例を示すと、烏賊擂身(すりみ)5、
牛肉3、豚脂2で、此の総量に對し食塩2%、澱粉7%、人參3%、玉葱5%、胡椒と赤色色素適量を加える。
加熱 スタッファーを用いてケーシングに擂り肉を詰め、結紮(けっさつ)した後、肉詰量120瓦の物で摂氏85度の水中で約60分
加熱する。
補足 一般に足の弱い魚肉は、水晒した後、ブロム酸カリを使用して坐りの良い製品を得て居るが、烏賊肉に於いても、水晒を
充分に実施した後、ブロム酸カリを使用すれば、弾力や折曲に對する抵抗性の良い製品が得られる。猶、水晒を充分に行うと、烏賊肉の
エキス分が流出して味が薄く成ると共に、加熱後冷却した時に起こる収縮が少なく成る。此れは、烏賊肉は水溶性蛋白質に富むが、烏賊
肉の水浸出液は発泡性が大きい事から、此の成分が除去される事に依り収縮も少なく成る者と考えられる。
烏賊肉は部位に依り組織が異なるが、練り製品に仕た場合にも部位に依り弾力に差が生じる。胴肉が最も弾力が強く、次いで鰭(ひれ)で、
頭脚肉が最も劣り、胴肉7に對して鰭・頭脚肉の合計が3以上に成ると弾力性や折曲に對する抵抗性が惡く成る事が認められて居る。猶、
鰭部が最も弾力が劣ると謂う報告も有るが、此れは温湯中で剥皮した爲に肉厚の薄い鰭が熱變性した爲と考えられる。
亦、鮮度良好な烏賊でも、凍結後一箇月位經つと足の弱い製品に成る。併し、縮合燐酸塩と砂糖を用いて前處理した後冷凍すれば5箇月
以上生肉と變わら無い製品を作る事が出來る。
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薩摩揚げ
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の外套部の腹部中央を縦に
一直線に切り開く。次に頭脚部を漏斗中央部の處から切り開き、内蔵・眼球・嘴(くちばし)・軟甲、及び、脚肉の先端部を除去する。此の
作業中、内蔵を傷附け無い様に注意し無いと、肉の汚れが著しく成る。
洗浄 調理が終了すれば、烏賊の胴肉と頭脚肉を夫々れ洗浄し、水切りする。特に脚肉(腕肉)は揉む様に仕て洗い、吸盤を
完全に除去する事が必要で有る。
剥皮 烏賊肉は表皮中に色素細胞が含まれて居り、其の儘チョッパーや擂潰機に懸けて加熱した場合は色素が溶出して肉色を
惡くするので剥皮する必要が有る。剥皮は手作業か機会で行うのが最も無難で有るが、此の方法では胴肉以外には用いる事が出來ず、
歩留が惡く成る。烏賊の加工品を製造する時に用いられて居る温湯中で剥皮する方法は、肉温が摂氏46乃至47度迄上昇して蛋白質を
變性させ、製品に仕た時に弾力や折曲に對する抵抗性が生肉剥皮の場合に比較して可成り劣る。
練り製品の爲の其他の剥皮法としては、乳酸使用法、酢酸ソーダ使用法、瞬間加熱法、瞬間加熱後蛋白質分解酵素使用法、瞬間加熱後
酢酸ソーダ使用法等が考えられて居る。但し、間加熱法、瞬間加熱後蛋白質分解酵素使用法以外は時間が懸かると謂う欠點が有る。猶、
瞬間加熱法、瞬間加熱後蛋白質分解酵素使用法、瞬間加熱後酢酸ソーダ使用法を用いて剥皮した肉は、生肉と變わら無い弾力や折曲に
對する抵抗性を持つ製品が得られると謂われて居る。
擂潰 剥皮肉をチョッパーに懸け、次に擂潰機(らいかいき)で食塩2.5%を加えて良く擂(す)り上げる。更に砂糖2.5%、澱粉
15%、人參10%、玉葱2%を加えて良く擂潰する。
油揚 擂り上がった肉を成型機で角板状、又は、丸板状にし、摂氏160乃至180度の油に投入して加熱する。猶、油は植物油を
使用する。
補足 一般に足の弱い魚肉は、水晒した後、ブロム酸カリを使用して坐りの良い製品を得て居るが、烏賊肉に於いても、水晒を
充分に実施した後、ブロム酸カリを使用すれば、弾力や折曲に對する抵抗性の良い製品が得られる。猶、水晒を充分に行うと、烏賊肉の
エキス分が流出して味が薄く成ると共に、加熱後冷却した時に起こる収縮が少なく成る。此れは、烏賊肉は水溶性蛋白質に富むが、烏賊
肉の水浸出液は発泡性が大きい事から、此の成分が除去される事に依り収縮も少なく成る者と考えられる。
烏賊肉は部位に依り組織が異なるが、練り製品に仕た場合にも部位に依り弾力に差が生じる。胴肉が最も弾力が強く、次いで鰭(ひれ)で、
頭脚肉が最も劣り、胴肉7に對して鰭・頭脚肉の合計が3以上に成ると弾力性や折曲に對する抵抗性が惡く成る事が認められて居る。猶、
鰭部が最も弾力が劣ると謂う報告も有るが、此れは温湯中で剥皮した爲に肉厚の薄い鰭が熱變性した爲と考えられる。
亦、鮮度良好な烏賊でも、凍結後一箇月位經つと足の弱い製品に成る。併し、縮合燐酸塩と砂糖を用いて前處理した後冷凍すれば5箇月
以上生肉と變わら無い製品を作る事が出來る。
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松前漬
調理 鯣(するめ)は上等の物を選び、皮附き、又は、剥皮した胴肉丈を使用する。鯣を4乃至5糎に切斷した後、輕く湿気を與える
(良く乾燥した鯣の場合5乃至7%程度の水を使用する)。一夜暗蒸した後、重ね合わせて加壓し、鯣刻み機で厚さ1乃至2粍に刻む。昆布は
味の良い物で、水に戻した時に柔らかく成り、多少粘性の出る物を選ぶ。幅5糎程度に裂いて輕く湿気を與え、重ねて加壓し、鯣と同じ様に
細切りする。數の子はチョッパーに懸けて細かく砕いて置く。未熟な物は惡變し易いので使用し無い方が良い。
調味 寒冷時の食糧として製造する場合は、刻み鯣を1.5乃至2倍重量の調味液に漬け、刻み昆布、數の子を混合する。周年
生産される市販品では、水分の少ない物が多い。鯣・昆布等の配合割合の例を下記に示す。
混合物 | 配合例(單位:部) | ||
鯣 | 14 | 67 | 40 |
昆布 | 13 | 17 | 10 |
數の子 | 11 | 16 | 10 |
醤油 | 5.3 | 33 | 20 |
食塩 | 5.2 | - | - |
砂糖 | 17 | 28 | 17 |
水飴 | 3.4 | - | - |
グルタミン酸ソーダ | 1.7 | 3.3 | 2 |
焼酎 | 3.1 | - | - |
鰹節粉末 | 0.5 | - | - |
ソルビン酸カリ | 0.12 | - | - |
水 | 25.7 | 若干 | - |
烏賊粕漬
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の内蔵を破ら無い様に注意し
乍ら壺抜(つぼぬき)し、軟甲も除去する。次いで頭脚肉と肝臓を切除した後、漏斗口(潮吹き)から眼球の間に懸けて切り開き、眼球、
嘴(くちばし)等を除去して良く洗浄する。
煮熟 製品を白く仕上げる場合には、摂氏50乃至55度の温湯中で攪拌・剥皮した後摂氏80乃至90度の熱湯中で3乃至5分
煮熟する。亦、赤味を帶びた物で良い場合には、直ちに煮熟した後剥皮する方法を採る。冷凍烏賊を用いると煮熟後に肉が硬く成る事が
有るから、煮熟程度は原料烏賊に依り變えなければ成ら無い。亦、煮熟後空気中で冷却すると肉表面が黄色味が懸かって來るので、水で
冷却した後十分水切りする。
漬込 粕漬するには、第一に塩蔵した後酒粕に漬け込む方法、第二に酒粕に塩其他の調味料を加えた物に直接漬け込む方法
とが有る。
第一の方法では、先ず煮熟・冷却した頭脚肉に輕く塩を塗(まぶ)して胴肉内に詰め込み、10乃至15%の食塩を用いて容器に漬け込む。
數日後取りだし、頭脚肉を一度胴肉内から引き出し清水で洗浄した後水切りする。水切りした物は再び胴肉内に頭脚肉を詰め込む。諸白
粕10瓩に對し砂糖200瓦、焼酎960竓を加えて良く攪拌し、更に一度チョッパーに懸けた酒粕を用意する。烏賊肉に對し酒粕15乃至
25%を用い、層毎に酒粕を敷き乍ら漬け込み、蓋をし目張りを仕て貯蔵する。此の方法では酒粕に依る烏賊肉の脱塩が平均に進ま無い
事が多いので、現在では一般に煮熟した烏賊を調味酒粕で漬ける次の方法が用いられる事が多い。
第二の方法では、先ず烏賊肉を煮熟し冷却した後良く水切りする。調味酒粕の配合は様々で有るが、一例を示すと酒粕10瓩、砂糖1.5
瓩、食塩2.5瓩、焼酎1.2乃至1.4立の割合と成って居る。此れを良く練り合わせ混合した物を使用する。猶、酒粕が柔らかい時には
焼酎の代わりにエチルアルコールを使用する。食塩・砂糖の量は製造時期に依り増減する。漬け込みに際しては、先ず酒粕の一部を取り
頭脚肉と良く混ぜ合わせ、此れを胴肉内に詰め込み、殘りの酒粕を使用して各層毎に烏賊に塗布し乍ら容器に菊花状に漬け込み、蓋を
仕て密封する。漬け込み後、4乃至7日で食用に供し得る。
第二の方法で注意す可き點は、烏賊肉中の水分量と使用食塩量の關係で有る。元々此の製品は寒冷時に製造される物で有るが、摂氏
15度以上の時に製造・出荷するには塩分量を更に増加させなければ成ら無い。粕漬の貯蔵性に最も關與するのは塩分で、アルコール
分の影響は此れに比較すると少ないと謂われて居る。併し、食塩量を多くすれば肉から水分が浸出するのは當然で有り、烏賊肉中の水
分が少ない場合は餘り問題は無いが、多い場合には浸出した水が肉と酒粕の間に溜まり、惡變の原因に成る。
一般に烏賊の料理法では、煮熟するよりも蒸煮した方が肉質の柔らかい物が出來ると謂われて居るが、烏賊肉を摂氏50乃至55度で
剥皮した後5分間蒸煮した物は、剥皮後摂氏100度で5分間煮熟した物に比較して同じ水分(68.5%)でも肉の硬さに差が觀られる。
斯うした煮熟に依る肉質の硬化は、特に冷凍烏賊を用いた時に見られる。
補足 烏賊粕漬には、一般の魚介類の粕漬と同じ様に生烏賊を塩蔵した後粕に漬けた物、煮熟した後粕に漬けた物、及び、鯣
(するめ)を粕に漬けた物等が有る。市販品には煮熟後に粕に漬けた物が多い。
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烏賊酢漬
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の内蔵を破ら無い様に注意し
乍ら壺抜(つぼぬき)し、軟甲も除去する。次いで頭脚肉と肝臓を切除した後、漏斗口(潮吹き)から眼球の間に懸けて切り開き、眼球、
嘴(くちばし)等を除去して良く洗浄する。
煮熟 摂氏50乃至55度の温湯中で攪拌・剥皮した後、更に摂氏80乃至85度で5分位煮熟するか、沸騰水中に投入して煮熟した
後剥皮する。前者の場合は外觀が白く仕上がるが、後者に比較して歩留が惡い。煮熟した肉は良く冷却し洗浄する。此の時、頭脚肉の硬い
組織や吸盤を除く様にする。
漬込 4乃至5%の濃度の酢酸液を用意し、此れに砂糖、食塩を加えて調味酢とする。配合割合は嗜好にも依るが、糖分8%、塩分
5%程度で、此れに調味料を加える。頭脚肉に人參を細長く切斷した物を挟んで胴肉中に詰め込み、容器に菊花状に詰め、調味液を注入し
全体に良く浸透する迄漬け込む。猶、煮熟した烏賊肉を細長く切り、人參・玉葱・グリンピース等と一緒に漬ける方法も有る。孰れに仕ても、
煮熟した烏賊を直ちに調味酢に漬けると、液が濁る事が有るが、一度酢液で假漬(かりづけ)した後、調味液に漬けると濁りを減少させる事が
出來る。猶、此の製品の製造は低温時に行う方が望ましい。
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烏賊天
原料 新鮮な鯣(するめ)の胴肉を原料とする。最近ではニュージーランド、カナダ、アルゼンチン産の烏賊から製造した鯣も使用され
て居る。
伸展 鯣の胴肉を瓦斯(がす)焙燒機で燒き、熱い内に伸展機に懸けて伸烏賊(のしいか)にする。伸烏賊の伸展度は鯣の鮮度、
肉厚に依り異なるが、通常1米前後に迄伸展する。
油揚 伸烏賊を幅8乃至10粍に切斷し、衣(ころも)を附けた後、油揚げする。衣は、食塩、科學調味料等を溶解した調味液に小麦
粉(薄力粉)、澱粉、膨張剤を加えて練り上げる。
補足 烏賊天は、食感の上から水分10乃至15%の物が良いが、此れを長時間放置すると黴(かび)の發生、及び、澱粉の老化が
起こる。黴の發生は、食塩含量の水分含量に對する百分率で有る塩分比と密接に關係するが、塩分比が高い程、黴の發生が抑制され、亦、
澱粉の老化防止にも役立つ。猶、伸烏賊を幅3乃至10糎に切斷し、衣を附けて油で揚げた製品は角揚げ、短冊揚げと呼ばれて居るが、油
揚げ仕た後に衣が剥離し易い爲、此の製品では衣に膨張剤を使用仕無い事が多い。
前述の様に鯣から伸烏賊を製造し、適当な大きさに切斷した後、衣を附けて油で揚げた物を一般に珍味烏賊天麩羅(いかてんぷら)、珍味
揚鯣(あげするめ)等と呼ばれて居るが、關東以北では烏賊天(いかてん)、關西地區では旨烏賊(うまいか)、松葉揚げとも称呼される。
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輪烏賊(むしりいか)
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の内蔵を破ら無い様に注意し
乍ら壺抜(つぼぬき)し、軟甲も除去する。更に鰭(ひれ)の附いた部分を切斷した後、胴肉を良く洗浄、水切りする。猶、鮮度の低下した原料を
使用すると褐變速度が速い。亦、頭脚肉、鰭は他の用途に向ける。
煮熟 摂氏50乃至55度の温湯中で攪拌し乍ら剥皮した後、煮熟する。煮熟は、胴肉を手で握った時に割れ目が出來る位迄、沸騰
水中で充分に行う。但し、2乃至3枚に卸して機械で切断する場合は、其れ程の煮熟を必要と仕無い。
毟肉 煮熟が終了すれば、冷水中で充分冷却した後、水切りし、輪線状切斷機(ラインマシーン)に懸けるか手で細く毟(むし)る。亦、
開腹した後2乃至3枚に機械で身卸してから輪線状切斷機で細く切る場合も有る。
調味 細切りした毟肉(むしりにく)に調味料を塗(まぶ)して良く混合し、30分乃至2時間放置する。調味料の配合割合の一例を示す
と、烏賊肉100に對して砂糖30、食塩8.5、グルタミン酸ソーダ0.8、其他の調味料適量で有る。
乾燥 調味が終了すれば、赤外線乾燥機、又は、熱風乾燥機で手早く所要水分量迄に乾燥する。
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風味烏賊
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の内蔵を破ら無い様に注意し
乍ら壺抜(つぼぬき)し、軟甲も除去する。更に鰭(ひれ)の附いた部分を切斷した後、胴肉を良く洗浄、水切りする。猶、鮮度の低下した原料を
使用すると褐變速度が速い。亦、頭脚肉、鰭は他の用途に向ける。
煮熟 摂氏50乃至55度の温湯中で攪拌し乍ら剥皮した後、摂氏90乃至95度の熱湯中で5乃至8分煮熟する。煮熟は、胴肉を
手で握った時に割れ目が出來る位迄、沸騰水中で充分に行う。
毟肉 煮熟が終了すれば、冷水中で充分冷却した後、水切りし、輪線状切斷機(ラインマシーン)に懸けるか手で細く毟(むし)る。
調味 細切りした毟肉(むしりにく)に調味料を塗(まぶ)して良く混合し、一夜放置する。調味料の配合割合の一例を示すと、烏賊肉
100に對して砂糖5乃至10、食塩2乃至5、グルタミン酸ソーダ0.05乃至0.5、リボタイド0.05、松茸香料適量で有る。
乾燥 調味が終了すれば、赤外線乾燥機に懸けて摂氏80乃至90度で8乃至10分乾燥した後、ローラーに懸けて輕く伸展し、壓燒
機で内面が輕く焦げ附く程度に燒き上げる。冷却した後、切斷機で幅5粍程度の棒状に切斷する。
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烏賊醤油
解説 魚類や貝類を原料とする魚醤油の一種として、烏賊内臓を原料とする烏賊醤油は古くから知られて居る。鯣(するめ)製造の
際に副生する内臓を30乃至40%の食塩と共に樽に漬け込み陽の當たら無い處に7乃至8箇月貯蔵する。充分に熟成した頃、樽の底部に
小孔を開けると、消化液が流出する。此れを溜まりと謂う。此の消化液を其の儘醤油として用いる事も有るが、鍋に移して煮沸し、泡を掬い
取り、泡が全く出なく成れば、此れを冷却し、容器に詰めて貯蔵する。此の醤油は煮物や吸物に使用される。
烏賊の内臓が強い蛋白質分解酵素活性を有する事に着目し、適温で内臓を自己消化させて溶解し、烏賊油を分離・採取すると共に、脱脂
液から醤油を製造する技術も確立されて居る。アミノ酸液を工業的に製造するには、先ず新鮮な烏賊の内臓、又は、其の塩蔵品を溶解槽に
入れ、摂氏50乃至55度に加熱し乍ら攪拌する。内臓中の酵素の働きに依り、數時間で内臓は大部分液化する。溶解が終了すれば、次いで
バルク型遠心分離器に懸けて大部分の固形夾雑物を分離し、更にシャープレス型遠心分離器に懸けて油を分離する。此の脱脂消化液を分解
槽に入れ、塩酸を加えて加熱して分解する。更にフィルタープレスを用いて濾過し、濾液にソーダ灰を加えて水素イオン濃度指數6.2に調製
してアミノ酸液とする。此のアミノ酸液はエキス分が少なく特有の臭気が有るが、澱粉粉10%を加えて加熱・糊化し糀(こうじ)を加えて熟成
させると、独特の烏賊醤油に成る。熟成すると、濾過して製品とする。亦、澱粉粉10%を加えて糊化した物に、少量の林檎壓搾粕、及び、
醤油粕を加えて熟成させる方法も有り、此の場合、アミノ酸の特有臭を除きエキス分を増加させる事が出來ると謂う事で有る。
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SP飼料
解説 烏賊内臓を原料とするアミノ酸調味料は、戰中・戰後の調味料供給に大いに貢献したが、脱脂大豆の輸入増加と共に其の
地位を喪失した。昭和24年以降は烏賊内臓を家畜の飼料として利用する爲の実驗が重ねられ、今日ではSP飼料の原料として利用されて
居る。其の製法は、新鮮な烏賊肝臓100に對して水10を加え、摂氏50乃至55度、水素イオン濃度指數5.0乃至5.2で役時間液化する。
其の後、摂氏80乃至85度迄加熱し、バルク型遠心分離器で粗大な固形物を除去し、更にシャープレス型遠心分離器で油を分離すると共に
微少蛋白質粒子を除去すると脱脂蛋白質が得られる。此れを濃縮した物がフィッシュソリュブルで有る。亦、此の脱脂液100を麩(ふすま)、
又は、脱脂糠(ぬか)40に吸着させて乾燥し、所要粗蛋白質含量に調製した物をSP飼料と謂う。
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烏賊油
解説 スルメイカの肝臓は、季節に依り差が有るが、一般に油の含有量が多く、其の爲、アミノ酸液の製造、或いは、SP飼料の
製造に際しては、多量の烏賊肝油(通常此れを烏賊油と称呼する)が分離される。烏賊油は工業的には肝臓の消化液を遠心分離器に懸けて
分離するが、漁村等で油丈を採取する場合には次の方法が用いられる。
採油釜」としては、普通二石釜(容量360立、鰊釜とも謂う)を使用する。烏賊肝臓は採油殘液の利用からも新鮮な物を用いるのが望ましい。
鮮度の低下した物を用いると、加熱中に肝臓が泡立ち仕て釜の外に溢れる事が有り、亦、採油量が少ない丈で無く、酸價の高い下等な油しか
得られ無い。新鮮な烏賊肝臓の場合は375瓩、鮮度低下した烏賊肝臓の場合は300瓩を釜に入れ、海水約18立を加え、絶えず攪拌し乍ら
加熱し、温度が摂氏55度前後に成れば、火を弱め摂氏60度以下の温度で肝臓が溶ける迄攪拌し續ける。完全に溶解すれば、火力を強めて
沸騰させる。沸騰直前に泡立ちする。新鮮な原料の場合は暫くすると泡が消えるので心配は無いが、鮮度の惡い物は泡立ちが甚だしく釜の
外に溢れ出るので、豫め此れを少し汲み取って置き、沸騰し始めたら此れを順次加えて行く。此の様に仕て攪拌し乍ら沸騰を續けて行くと、
釜内の泡が消滅し、黄金色に輝く小さな油の泡が觀え始める様に成る。此の時に火を引いて沸騰を停止する。此の間30乃至40分を要する。
次に釜一面に約50立の海水を満遍無く撒布する。撒水後2乃至3回緩く攪拌した後静止する。此の間、液温を摂氏70乃至80度以下に下げ
無い様に保持する必要が有る。撒水後の液温が低下し過ぎると、油の分離が惡く歩留も低下する。静置10乃至30分で油の浮上が完了する
ので、速やかに此れを別の容器に汲み取る。汲み取った油は温湯で洗浄し、夾雑物を除去する。猶、苛性ソーダを用いる方法も有るが、此の
方法は酸價の低い油が得られる反面、エマルジョン(乳状液)を生成し油の分離が困難に成る事も有り、殘液の利用にも問題が有る爲、一般
には前記の自己消化に依る方法が用いられる。
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烏賊内臓粕(うろ粕)
解説 烏賊内臓(主として肝臓)から油を採取した廃液(油滓)は、SP飼料やソリュブルに仕て利用されるが、原料中に混入した眼球、
嘴(くちばし)等を主体とする不溶解分は、釜底に沈下する。此の様な固形物を汲み上げ、或いは、此れに遠心分離に依り排出される固形物を
加え、乾燥して肥料にする。乾燥は主に天日乾燥に依るが、固形物が粘土状に成って居る事と若干の油が殘存して居る爲、天日乾燥丈では
水分10%以下に成らず、窒素含量も7%以上に成る事が無いので、更に人工乾燥する必要が有る。油滓に燻炭(大鋸屑を炭化した物)・珪藻
土・ツンドラ・カシパン等を加えて乾燥する方法も有る。此等の吸着剤に依る窒素成分の吸着効果は燻炭と珪藻土を等量混合した物が最も良く、
續いて燻炭・酸性白土・珪藻土の順に成る。
亦、烏賊内臓を直接肥料化する方法も考案されて居る。即ち、簀子(すのこ)の上で烏賊肝臓に20%相当の硫安を撒布し、加壓して5日間程
放置して肝臓を凝固させる。次いで沸騰水中に其の半量の肝臓を投入し、再沸騰後10分で取り上げ壓搾して油分・水分を少なくして乾燥する。
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