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烏賊の加工と調理 |
烏賊塩辛(いかしおから)に關する索引
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赤造り(東北地方の製法)
原料 原料にはスルメイカを用いる。最近は外國産烏賊類も用いられる様に成ったが、此の場合でも混入する肝臓(ゴロ)はスルメ
イカの物でなければ成ら無いと謂われて居る。但し、アルゼンチンイレックスを用いた場合、色調は國産のスルメイカを用いた場合に比較して
白っぽいが、味に關しては特に遜色が有る様には思えない。
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の外套部の腹部中央を縦に
一直線に切り開く。次に頭脚部を漏斗中央部の處から切り開き、内蔵・眼球・嘴(くちばし)、軟甲等を除去する。亦、墨袋を破ら無い様に
肝臓を分離して容器に取り分ける。胴肉(外套膜)と頭脚肉は分離する。
洗浄 胴肉、頭脚肉を夫々れ水洗いし表面に附着して居る汚物を除去する。特に頭脚肉は良く揉む様に仕て吸盤中の角質環を
除か無いと、食感を惡くする。水洗いが終了すると充分に水切りする。
細切 胴肉は軟甲を除いた跡に沿って二枚に卸し、重ねて横に三等分し、六片に截斷する。此れを集めて細斷機に懸け、幅3乃至
5粍に細斷する。脚は10乃至15粍のプレートを有するチョッパーに懸け、長さ2糎位に切斷する。猶、場合に依り細斷せずに其の儘塩蔵に
移る事も有る。
塩蔵 夏期には18%以上、秋期には12乃至15%の食塩を調理した烏賊肉に加えて良く混合し、20分程度放置する。
脱水 食塩が良く溶けてから、目の粗い布袋に入れて徐々に加壓し脱水する。加壓・脱水時間は普通16乃至18時間で、時には
36時間位行う事も有る。猶、烏賊肉の塩蔵は、1乃至2日、或いは其れ以上も續ける事が有るが、塩蔵時間の長い物は品質が劣り、北海道の
検査では無条件で二等級以下に下げられる爲、北海道では此の方法が採用されなかった經緯が有る。
亦、肝臓は、水洗いした物を別容器に取り、同じ様に塩蔵して貯蔵して置く。肝臓は成る可く長期間塩蔵し熟成させた物を使用する。此の
方法では、肝臓の使用量が多く、堅く締まった肝臓を選ぶ必要が有る事から、鯣製造業者からも肝臓を集荷して使用して居る。
熟成 細切りした烏賊肉と擦り潰した肝臓とを樽の中で混合し、毎日三度以上(一度に百回位)樽底から充分に攪拌し、空気が
全体に廻る様に仕て熟成を圖る。十日位經てば、攪拌を減らしても良い。10乃至14日熟成させた後、容器詰め仕て出荷する。10月以降の
冷涼期では熟成迄に2乃至3週間を要する。
肝臓使用量は烏賊一尾に對し一箇の割合で、15乃至20%に當たる。色調を均一にする爲、着色料を用いる事も有る。猶、出荷前に米糀
(こうじ)、味醂(みりん)、香辛料を加える場合も有る。
補足 此の方法の優れた點は、同じ塩分含量では從來の方法の物より長持ちする事、烏賊と肝臓を混合した直後に樽詰めしても、
從來の方法の様に異味・異臭を生ずる事が無い等で有る。此れは、塩蔵、脱水に依り、水分含量が少なく成ると共に、塩水可溶性窒素
化合物の一部が溶出した爲と考えられる。
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赤造り(簡易的な製法)
原料 原料にはスルメイカを用いる。最近は外國産烏賊類も用いられる様に成ったが、此の場合でも混入する肝臓(ゴロ)はスルメ
イカの物でなければ成ら無いと謂われて居る。但し、アルゼンチンイレックスを用いた場合、色調は國産のスルメイカを用いた場合に比較して
白っぽいが、味に關しては特に遜色が有る様には思えない。
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の外套部の腹部中央を縦に
一直線に切り開く。次に頭脚部を漏斗中央部の處から切り開き、内蔵・眼球・嘴(くちばし)、軟甲等を除去する。亦、墨袋を破ら無い様に
肝臓を分離して容器に取り分ける。胴肉(外套膜)と頭脚肉は分離する。
洗浄 胴肉、頭脚肉を夫々れ水洗いし表面に附着して居る汚物を除去する。特に頭脚肉は良く揉む様に仕て吸盤中の角質環を
除か無いと、食感を惡くする。水洗いが終了すると充分に水切りする。
細切 胴肉は軟甲を除いた跡に沿って二枚に卸し、重ねて横に三等分し、六片に截斷する。此れを集めて細斷機に懸け、幅3乃至
5粍に細斷する。脚は10乃至15粍のプレートを有するチョッパーに懸け、長さ2糎位に切斷する。
脱水 細切した烏賊肉に10%の食塩を加えて攪拌し、數時間置いた後、加壓・脱水する。
熟成 脱水が終了すると、豫め15%の食塩を使用して漬け込み熟成させた物を擦り潰した肝臓と調味料を混合し、毎日三度以上
(一度に百回位)樽底から充分に攪拌し、空気が全体に廻る様に仕て熟成を圖る。十日位經てば、攪拌を減らしても良い。10乃至14日
熟成させた後、容器詰め仕て出荷する。10月以降の冷涼期では熟成迄に2乃至3週間を要する。
配合例は様々で有るが、例えば、烏賊肉100に對して、食塩10、肝臓3、ソルビット4、砂糖3、グルタミン酸ソーダ1.5を混合する。猶、
混合物としては、此の他に燐酸塩、アルコール、糀(こうじ)、味醂(みりん)等が用いられる事も有る。
補足 最近は本來の塩辛の概念から外れた甘口の物が好まれる傾向に在るが、食塩含量を減らすと貯蔵性が低く成る爲、色々な
物を加えて水分活性を低くし、貯蔵性を高めて居る。一方、熟成に依り旨味を醸成するよりも寧ろ調味料に依り味を整えると謂う製品も有る。
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白造り
原料 原料には鮮度の良い肉厚のスルメイカを用いる。最近は外國産烏賊類も用いられる様に成ったが、此の場合でも混入する
肝臓(ゴロ)はスルメイカの物でなければ成ら無いと謂われて居る。但し、アルゼンチンイレックスを用いた場合、色調は國産のスルメイカを
用いた場合に比較して白っぽいが、味に關しては特に遜色が有る様には思えない。特に、白造りの場合には、強い赤褐色に成ら無いので
適して居る様にも思われる。
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の外套部の腹部中央を縦に
一直線に切り開く。次に頭脚部を漏斗中央部の處から切り開き、内蔵・眼球・嘴(くちばし)、軟甲等を除去した後、胴肉(外套膜)と頭脚肉と
鰭(ひれ)を分離する。亦、墨袋を破ら無い様に肝臓を分離して容器に取り分ける。
洗浄 表皮を取り除き、良く洗浄し、笊(ざる)に取り上げて水切りをする。
細切 肉厚の物は三枚に、肉薄の物は2枚に薄く卸し、適当な幅に切斷した後、細く切斷する。頭脚肉は使用し無いが、鰭は
剥皮した後、二枚に卸して胴肉に混ぜる事も有る。
熟成 細切肉に食塩17乃至18%と肝臓3%位を混合し、毎日三度以上(一度に百回位)樽底から充分に攪拌し、空気が全体に
廻る様に仕て熟成を圖る。十日位經てば、攪拌を減らしても良い。10乃至14日熟成させた後、容器詰め仕て出荷する。10月以降の
冷涼期では熟成迄に2乃至3週間を要する。
猶、肝臓が多いと赤褐色を帶びる爲、少ない方が良い。亦、肝臓を加えずに、米糀(こうじ)を用いる事も有る。此の場合、糀を粥状にし、布袋に
入れて混合すると粒の無い製品が出來上がる。熟成が進むと、攪拌が困難に成る程粘稠に成るが、此れを容器に詰めて出荷する。
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黒造り(一般製法)
原料 原料は、一般に9乃至10月の新鮮なスルメイカを用いる。
調理 新鮮なするめいかの外套部の腹部中央を縦に一直線に切り開く。次に胴肉(外套膜)と頭脚肉を分離して、胴肉丈を取り、
剥皮・洗浄する。肉厚に依り2乃至3枚に卸した後、細斷する。一般に胴肉丈を使用するが、時には鰭(ひれ)も剥皮・細斷して用いる事も
有る。
熟成 細斷肉に對し、食塩10乃至15%、肝臓8%(10尾に對して3乃至4尾分)、良く擦り潰した墨(全烏賊分)を加えて樽に
漬け込む。漬け込み樽は、新しい未だ酒気の殘存して居る酒樽が良いと謂われて居る。毎日攪拌し、三週間位經て熟成が進み粘稠に
成った物を容器に詰めて出荷する。猶、味を良くする爲、糀(こうじ)、又は、味醂(みりん)を少し加える事も有る。
補足 烏賊塩辛に烏賊墨を加えると、甘塩でも貯蔵性が増す事が知られて居る。此れは、烏賊肉に烏賊墨、或いは、其の抽出物を
加えると揮發性塩基窒素の増加を抑制する効果が有り、亦、烏賊墨は烏賊塩辛の遊離アミノ酸に對して分解阻止的に働くからで有る。猶、
此の防腐性は烏賊墨中のリゾチーム、或いは、其の近縁物質に依ると謂われて居る。
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黒造り(特殊製法)
原料 原料は、秋烏賊、冬烏賊を用いる。
調理 新鮮なするめいかの外套部の腹部中央を縦に一直線に切り開く。次に胴肉(外套膜)と頭脚肉を分離して、胴肉丈を取り、
剥皮・洗浄する。肉厚に依り2乃至3枚に卸した後、細斷する。一般に胴肉丈を使用するが、時には鰭(ひれ)も剥皮・細斷して用いる事も
有る。
冷蔵 調理・剥皮・細切した胴肉、肝臓、墨袋に夫々れ20乃至25%の食塩を加え、摂氏零下15度の冷蔵庫に保管して置く。
混合 約一年後の秋に此れを取り出して混ぜ合わせる。更に、味醂(みりん)、グルタミン酸ソーダ、焼酎等を加えて適度の塩味に
仕て製品とする(製法特許)。此の製法に依ると、烏賊の生臭さが除かれ、日持ちも良いと謂われて居る。
補足 烏賊塩辛に烏賊墨を加えると、甘塩でも貯蔵性が増す事が知られて居る。此れは、烏賊肉に烏賊墨、或いは、其の抽出物を
加えると揮發性塩基窒素の増加を抑制する効果が有り、亦、烏賊墨は烏賊塩辛の遊離アミノ酸に對して分解阻止的に働くからで有る。猶、
此の防腐性は烏賊墨中のリゾチーム、或いは、其の近縁物質に依ると謂われて居る。
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一杯漬け
原料 原料は、一般に9乃至10月の新鮮なスルメイカ(秋烏賊、後採り烏賊)を用いる。
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の外套部の腹部中央を縦に漏斗
(しおふき)の上方3糎位迄一直線に切り開く。此の部分から指を入れ、墨袋を傷附け無い様に注意し乍ら取り除く。
洗浄 輕く塩水で洗浄し、表面に附着した汚物を除去した後、水切りする。
漬込 烏賊に對して15乃至20%の食塩を加え、良く混合して樽に漬け込み、輕く壓を加え、蓋を仕て、1乃至2箇月貯蔵する。
供食 充分熟成した物を取り上げ、表面を塩水で洗い、水切りした後、容器に入れる。夏烏賊では變敗し易いが、秋烏賊、後採り
烏賊では独特の風味の物が出來る。食用に際しては、胴肉を開いて内蔵を取り出し、胴肉と頭脚肉を細切し、此れに肝臓の内容物を適量
混ぜ合わせる。
補足 一杯漬けと謂う言葉は、元來烏賊が大漁の時に一時貯蔵を目的と仕て塩蔵する場合に用いられる。併し、此の方法を丁寧に
行うと、独特の風味を有する塩辛の原形と看做す事が出來る。
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沖漬け
解説 沖で釣り上げたスルメイカを醤油を入れた蓋附きの樽の中に注入口から生の儘投入して漬け込んだ物で有る。熟成すると、
甘味の有る独特の風味を持つ様に成る。元來は漁家の自家用として製造されたが、最近は土産物としても販賣されて居る。猶、船上では、
醤油の一斗缶に半分程醤油を減らし、其の中に、1ケース50尾以上入る小型の釣れた許りの烏賊を生きた儘投入して、1乃至2日放置して
食する。餘り長く放置すると、塩辛く成るので、數日で食べ切れる分量宛製造する。亦、醤油の代わりに麺汁(めんつゆ)を用いても美味で
有るが、此の場合、日持ちが仕無い。
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