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烏賊の加工と調理 |
乾燥烏賊(スルメ)に關する索引
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一番スルメ(磨剣先スルメ)
調理 先ず新鮮なケンサキイカの外套部の腹部中央を縦に一直線に切り開く。此の際、烏賊の大小に應じて後端部から1乃至2糎
殘す様にする。次に頭脚部を漏斗中央部の處から切り開き、内蔵・眼球・嘴(くちばし)等を除去する。
洗浄 附着した汚物を海水、又は、塩水で綺麗に洗い落とした後、淡水で手早く洗い上げ、塩分を除く様にする。汚物は塩水の方が
良く除去出來るが、其の儘では塩分が殘り、乾燥終了後の吸湿が著しく、品質も落ち、光沢も劣るからで有る。次に表皮を除くが、此の時、
後端部の表皮を胴(外套膜)の長さの約10%程殘し、包丁で真横に真直ぐに切り取る。一般的には鰭(ひれ)を除去する。猶、小型の烏賊の
場合は鰭を殘すが、此れを佐伯スルメと呼んで居る。
乾燥 竹竿に附けた縄にS字型の針金を下げて置き、此れに烏賊の後端部を懸ける。胴肉の中心から稍(やや)下方で竹串を横に
縫い通し、胴を擴げて形を整える。此の時、長脚(触腕)は胴肉の両側に開いて竹串に懸ける。2乃至3時間乾燥して表面水分が乾いた頃、
脚肉の密着して居る部分を離し、水滴を拭い取る。時々肉と軟甲の間に水が溜まる事が有るので、軟甲の先端部に穴を開けて置く。晴天で
有れば、夕刻迄に半乾きと成るので、此れを乾燥室に入れて八分干し程度迄乾燥する。乾燥温度は50乃至60度で有るが、乾燥室の構造や
収容量に依り調整の必要が有る。
八分干しに成れば、第1回目の伸展・整形を行う。形を整え乍ら2乃至3枚宛重ね、ローラーに転がして伸ばす。伸展が終了すれば、簀子
(すのこ)か筵(むしろ)の上で日乾し、夜間、又は、雨天の時には、乾燥室に入れて乾燥を續ける。此の場合は逆懸けとする。九分干し位に
成れば、再びローラーを懸けて整形し、更に乾燥を行う。
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白スルメ
解説 白スルメは古くから神前への御供用として製造された者で、半磨(はんみがき)とも謂われる。原料はヤリイカで、製造法は、
鰭(ひれ)を反らして附けて置く他は、磨剣先スルメと同じで有る。
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二番スルメ
調理 新鮮なスルメイカ(ニュージーランドスルメイカ、カナダマツイカ、アルゼンチンマツイカを含む)の外套部の腹部中央を縦に
一直線に切り開く。此の際、烏賊の大小に應じて後端部から1乃至1.5糎殘す様にする。次に頭脚部を漏斗中央部の處から切り開き、内蔵・
眼球・嘴(くちばし)等を除去する。此の時、軟甲は除去しては成ら無い。古くは嘴を附けて居たが、此の部分の乾燥が遅れる爲、除去される
様に成った。此の作業中、内蔵を傷附け無い様に注意し無いと、肉の汚れが著しく成る。
洗浄 調理した烏賊は洗い籠に入れ、成る可く手早く洗浄する。調理後、其の儘長い間放置すると、丸の儘放置した者よりも鮮度
低下が早く、良い製品は得られ無い。洗浄には嘗ては海水が主として用いられたが、2乃至3%の塩水を用いても良い。此れは希薄塩水の
方が真水よりも汚物・粘質物を良く除去する爲で有る。併し、此の儘では乾燥後に湿気を吸収して品質を損なう爲、淡水で仕上げ洗浄を行い、
塩分を除く事が必要で有る。亦、此の時に殘存して居る内蔵・眼球・嘴等が有れば取り除く。洗浄に際しては、胴肉と頭脚部が離れ無い様に
注意する事も大切で有る。
乾燥 洗浄を終えた烏賊は直ちに乾燥に移す。乾燥法には縄懸け、暖簾(のれん)懸け、簀(す)干し等の方法が用いられる。前
二者を吊し干し、後者を地下(じか)干しとも謂う。乾燥初期に於いては、成る可く通気性の良い事が望ましい爲、通常吊し干しを行う。浜では
納屋に中間縄を張り渡して乾燥するが、加工業者や乾燥室・乾燥機を用いる處では、取扱の便利な暖簾を使用する事が多い。猶、暖簾とは、
水平にした割竹に蟹縄を巻き附けた者を5乃至6段連ねた物で有る。乾燥室内に搬送された烏賊は、縄、又は、暖簾の下部から上部へと
懸けて行く。此の時、甲の附いて居る肉面を表にし、胴肉の肩より稍(やや)下の處で二つ折りに懸け、頭脚部を前の方に垂らす。長脚(触腕)
は左右に分けて縄に懸ける。
天候に依り時間も異なるが、乾燥が3乃至4分進んだ頃、頭部と胴部の境が縄に當たる様に懸け直すと共に、附着し合って居る脚や鰭(ひれ)
を離して風通しを良くする。亦、長脚を縄から外して垂れ下がらせ、乾燥を續ける。以前は、此の段階で表皮の面を表に出す様にして懸け
換えたが、乾燥の遅い頭部截劃部の乾燥を進め手間を省く爲に前記の方法が採られる様に成った。此れを肩下ろしと呼んで居る。其の儘、
乾燥を續け、2尾宛長脚の片方を結び、垂下しても解け無く成る程度迄乾燥したら、縄から外して垂木(たるき)に懸ける。此れを垂木取り、
或いは、早切(さきり)取りと謂う。垂木取りした物は垂木納屋に懸けて乾燥する。夜間は、垂木を寄せ合わせて上から筵(むしろ)を懸けたり、
室内に取り込み堆積・暗蒸する。翌日再び乾燥し、整形を仕ても形が崩れ無い程度迄乾燥した物は納屋から下ろして整形する。此の状態の
物を絞りと謂う。
整形の時は、甲に沿って良く伸ばし、周縁を整え、鰭(ひれ)も充分に伸展して菱形に成る様に整える。亦、甲を右手親指で中央から折り、
乾燥に伴う肉収縮に依り形が損なわれる事を防ぐ事や、脚が良く揃う様に丁寧に伸ばす事も大切で有る。此の工程を伸しと謂う。伸しは伸し
機で行う事も有る。伸しの終了した物は一枚宛簀子(すのこ)や筵(むしろ)に擴げて地下干しをする。
乾燥法の改良法として、針金干しと謂う方法が有る。此の方法は暖簾懸け乾燥し表面の水分が失われた頃(通常乾燥2乃至4時間後)の
烏賊を曲げた針金の両端に一枚宛刺し通し、垂木懸けして乾燥する者で、稍(やや)柔らかい状態で外し、形を整え乍ら積み重ね、重しを
懸けて一夜置き、形を自然に整える。翌日此れを取り出して一枚干しとし、八分干し位に成った物を再び1乃至2日暗蒸する。大・中・小に
分け、四枚一組として束ね、更に一夜重しを懸けて寝かせ、翌日一束毎に扇形に擴げて乾燥する。此の操作を繰り返し乍ら製了する。此の
方法には、肩が落ちず形が良い、縄跡が出來ない、伸しの工程が要らない、色上がりが良い等の利點が有ると謂われて居る。
乾燥し終わった物は、形の揃った物を十枚を一組として重ね、外側のスルメの長脚で頭部の部分を結束する。結束した物は乾燥した屋内の
筵の上に丁寧に積み重ね、筵で覆いをして、出荷迄貯蔵する。長期貯蔵の場合は、時々日光と風に當てる事が必要で、特に夏スルメは
注意が必要で有る。
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尾孔スルメ
解説 島根縣地方で行われた製法で、スルメイカからスルメを造る際に、鰭(ひれ)と胴肉(外套膜)の境に竹串を刺して乾燥した物で、
製品に串を刺した孔(あな)の跡が有る事から、中国人が命名したと謂われて居る。我が国では、孔開きスルメとも呼ばれて居る。其の他の
製法に附いては、二番スルメと同じで有る。
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御多福スルメ
調理 成る可く大型で形の揃った烏賊(静岡縣、和歌山縣、神奈川縣、宮城縣、岩手縣等ではスルメイカ、長崎縣ではアオリイカ、
亦、一部地方ではコウイカを用いる)を、二番スルメを制作する時の様に截劃する。特に、甲を中心にして左右対称に成る様に丁寧に截劃し
なければ成らない。甲・嘴(くちばし)は除去する。
洗浄 一番洗い、二番洗い共に淡水を用いて充分に洗浄し、汚物(殘滓)が殘ら無い様にする。
乾燥 縄懸け乾燥し、6乃至7分干しに成った頃を見計らい、御多福の形に成る様に胴肉(外套膜)、及び、鰭(ひれ)を横に強く
引っ張り整形する。此の際、肉に損傷を與え無い様に注意する。伸展の終了した物は簀(す)の上に並べて乾燥する。乾燥中に形の崩れた
物は再び伸展整形する。此の乾燥と暗蒸を繰り返し水分の均一化を圖り、水分27%以下迄乾燥する。此の乾燥度は、表面に白粉を吹かせる
爲、一般の二番スルメ等に比較して低い。
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松白スルメ
解説 磨(みがき)スルメには、昔からヤリイカ、ケンサキイカが原料として用いられて來たが、長崎縣では戰後國内向けとして
スルメイカを原料とする磨スルメが製造される様に成った。製造法は磨剣先スルメと同じで有るが、此の製品は半乾品で、水分含有量は
26%以下と成って居る。猶、鰭(ひれ)を殘して充分乾燥させた物を二番磨スルメと謂う。
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袋スルメ
調理 原料烏賊(ヤリイカ、アオリイカ、ケンサキイカを用いる)の頭脚部を、内蔵を附けた儘、壺抜(つぼぬき)する。
洗浄 良く洗浄して汚物(殘滓)を洗い落とした後、皮を剥ぎ、袋状の儘反転して塩を塗り附けた後、再び一尾宛丁寧に洗浄し、
汚物を洗い去る。
乾燥 皮附面を表に仕て竹の輪を胴肉(外套膜)内に差し入れ、竹串に懸ける。此れを40乃至50尾宛、束ねた藁に刺し、干し場で
日乾する。半日位乾燥し表面が稍(やや)乾いたなら、反転して内部を表面に出し日乾する。一日毎に此れを繰り返し、稍半乾き位に成った
頃、樫(かし)の棒で一枚毎に伸展して其の形を整える。斯うして八分干し位に成った時、此れを暗蒸し、2乃至3日後、再び取り出して充分に
乾燥させて製了する。
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甲附スルメ
説明 背面に石灰質の大きな甲を有するコウイカを原料とするスルメで有る。一般のスルメの製法(二番スルメ参照)に準じて調理し、
内袋・眼球を除去する。海水、又は、希薄塩水で墨・其他の汚物を洗い去り、更に淡水で洗浄して塩分を除く。干し台の簀子(すのこ)上に
甲が離れ無い様に、亦、形が縮小し無い様に並置して乾燥する。小烏賊は5乃至6日、大烏賊は7乃至8日位で乾燥する。
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