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烏賊の經濟と經營

烏賊の經濟と經營に關する索引

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冷蔵在庫の推移

解説 前節で觀た様に烏賊類の價格は、1984年に烏賊類の冷蔵在庫量が急増して大幅に下落した。然して1988年も同じ様な状 況が續いて居る。此の様な烏賊在庫量の推移は魚價の變動と關係して大いに注目されて居る處で有る。例えば、今では烏賊釣漁船の船内 でも冷凍在庫量の動きが話題に成る程で有る。

併し乍、此の冷蔵在庫量の統計は業界で注目され乍らも、統計の信頼性や動向の評價に關して人に依る意見の違いも大きく、其れを何う分 析するかが問題と成って居る。

全國の烏賊類の在庫量の推移を種類別に觀ると、1987年に在庫量が増大したのはスルメイカで有る。コウイカや其他の烏賊の在庫量は19 82年から1986年迄の平均水準と餘り變わりが無い。併し、スルメイカの在庫は産地に於いて著しく増加し、其れに聨動して消費地でも増加 して居る。

スルメイカの在庫量而巳を主要産地別に觀ると、1988年の産地の在庫量は6萬9千屯で、在庫量が多いのは八戸の2萬7千屯、凾館の1萬 9千屯で、其他地區は2萬3千屯と成って居る。八戸と凾館地區で産地在庫量の67%を保有して居る事に成る。農林統計に依るとスルメイカ の在庫は産地在庫の7割、全國在庫の3割6分が八戸と凾館に集中して居る事に成る。

此の様な在庫量に關して下記の様な疑問が持たれる。

1. 農林統計のデータは營業用倉庫の取扱分なので加工業者が保有して居る在庫量が含められて居ない。其の爲、年に依り加工業者の自 家用在庫が増えた年は前記農林統計は動向を適切に表すとは限ら無い。
2. 第二に同じ在庫量で有っても、一次、二次加工された品物が入庫された場合、在庫量の意味は二倍から三倍違って來る事に成る。製品 重量に對する原魚重量は、加工に依り異なり、中間加工品のダルマの場合は5倍、ソフト裂烏賊7倍、凾館コガネ8倍、烏賊燻製等は5乃至6 倍、烏賊塩辛は1倍で有る。

其れでは加工業者の保有する冷蔵在庫量は何の位なのか、八戸を例に仕て検討して觀る。八戸の冷蔵庫の能力は、1975年は11萬屯で 有ったが、年率10%前後の伸びで増設され、1984年には21萬屯に達する。其の後1985年迄停滯するものの、1987年から増設が始まり 1988年には25萬屯の能力と成る。此の様な八戸に於ける冷蔵庫の水産物の内容を農林統計に依り觀ると、1988年の冷蔵在庫量は7萬 4千屯で有る。此の内主要な物は烏賊類が3萬8千屯、鯖類が2萬2千屯で此の二者で冷蔵在庫の87%を占めて居る。此處に擧げた農林統 計の數値7萬4千屯は營業用冷蔵庫の分で有る。冷蔵庫の能力に對して実際に水産物を収容出來る最大の容積は、通路等が必要なので、 少なく成る。例えば八戸の能力が25萬屯と仕て其の6割が使用出來るとすれば在庫可能量は15萬屯で有る。此の15萬屯から先の營業用 冷蔵分7萬4千屯を引くと、5萬9千屯が加工業者の在庫量と推定される。調査に依ると、此の加工業者の在庫量の大半は烏賊在庫量で、一 部に鯖が有ると謂われて居る。其の爲、烏賊の在庫量は概ね4萬屯から5萬屯が加工業者の冷蔵庫に在ると推定され、此れに農林統計の3 萬8千屯を加えた約8乃至9萬屯が烏賊の總在庫量で有ると考えられる。亦、前述した製品形態での在庫量は、聞き取り調査に依る限り、殆 ど無いと謂う事で有る。今の段階では、加工品は當面出荷を待つ間丈在庫し、年度を越えて在庫される事は少ない様で有る。以上の様に八 戸では、農林統計で公表される在庫量の約2.2倍が總在庫量で有ると推定される。此の加工業者在庫量は、烏賊加工業者の多い地區に 顯著に觀られる現象で、他地區では凾館で此の様な事が考えられる。

凾館の總冷蔵在庫量を八戸の例で示した倍率で計算すると、農林統計に依る烏賊類在庫量は2萬9千屯で有るから、加工業者の在庫を含 めた烏賊の總在庫量は6萬3千屯で有ると推定出來る。聞き取り調査に依ると、凾館の加工業者は一次加工品はダルマと仕て韓國から輸入 して居る。其等の在庫が若干有る他、塩辛の加工業者の中には一次加工した物を3年分保有して居る業者も觀られた。此れは塩辛の製品價 格が餘り變動せず、長期の生産計画を立てる事が出來る爲に、安い原料を一次加工して容量を減らして長期保存に仕て居る者と思われる。 凾館の塩辛以外の加工業者は其の様な長期の在庫は金利、倉敷料が高く成り過ぎる爲、採用して居ない様で有る。