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烏賊の經濟と經營に關する索引
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産地市場及び消費地市場での價格形成−産地スルメイカ
産地冷凍スルメイカ 冷凍スルメイカは主に沖合、遠洋漁業に依り漁獲されて居る。下圖は冷凍スルメイカの水揚量と價格の年別推
移を示して居る。此れに依ると1987年と1988年の水揚量は、アルゼンチン沖合海域からの水揚に依り大幅に増加して居る事が判る。
價格變動要因を分析して觀ると、産地冷凍スルメイカ價格は、『冷凍スルメイカの水揚量』と『スルメイカの在庫量』及び『生鮮スルメイカの價格』
の3要素に依り決められる。此處での在庫量は3箇月の期末合計在庫量を指す。例えば1986年から1987年に懸けての價格下落動向を推
測すると、此の間、冷凍スルメイカ價格は、其の生産量が59%増加したので弾性値から15.7%低下し、更に生鮮スルメイカの増産から來る
價格下落の影響を受けて11.0%下落する。亦、在庫の増加に依る影響に依る29.0%の下落も加わる。此等を併せた價格下落は55.7%
に達する。事実、1986年第三期の價格は473圓で有ったのに對して、1987年第三期には269圓に下落して居る。
産地冷凍スルメイカ水揚量・價格圖
産地生鮮スルメイカ 産地生鮮スルメイカは主に日本の沿岸烏賊釣漁業で漁獲されて居る。下圖は生鮮スルメイカの水揚量と價格
の經年變化を示して居る。此れに依ると生鮮スルメイカの豐漁は1975年と1980年に觀られ、此等の年の價格は下落して居る。反對に不漁
は1977年、1978年、1979年と1985年、1986年に觀られ、價格は高騰して居る。
價格變動要因を分析して觀ると、産地生鮮スルメイカ價格は、先ず六大都市卸賣市場の生鮮スルメイカ價格の影響を強く受け、次いで水揚量
や冷凍スルメイカの價格の影響を受けて形成される。亦、第一期の價格は他の四半期よりも安く成って居る。此の様に生鮮スルメイカ價格は
消費地卸賣市場の價格の影響を強く受けて居る。此れは生鮮で有る爲、消費地に水揚後直ちに出荷されるので消費地卸賣市場の市況の影
響を直接受けるので有る。
産地生鮮スルメイカ水揚量・價格圖
冷凍スルメイカ 六大都市卸賣市場に於ける冷凍スルメイカの價格は、産地スルメイカ價格の影響を最も強く受けて變動し、其他竸
合商品の六大都市卸賣市場の生鮮スルメイカ價格や冷凍スルメイカ價格の入荷量の影響も受ける。
生鮮スルメイカ 六大都市卸賣市場に於ける生鮮スルメイカの價格は、生鮮スルメイカの入荷量と竸合商品の冷凍スルメイカ價格に
強く規定されて決定される。其他の價格形成要素と仕て第一期及び第二期に價格が安く成る事が判る。
スルメイカ在庫量を規定する要因 先の産地冷凍スルメイカの價格形成の分析で觀た様に、冷凍スルメイカの價格は前期の在庫水
準に依り強く規定される。其の爲、此の在庫水準が何の様な要因で決まるかを把握する事が重要で有る。在庫量を基本的に決定するのは勿
論冷凍スルメイカの水揚量で有るが、在庫量は前期から繰り延べされて來る面も觀られ、寧ろ繰り延べ要因の方が強い。亦、近年増加して居
る庫腹量の増大を示す水産物總在庫量も無視出來ない要因で有る。
スルメイカ價格形成要因の総括的把握 下圖は以上考察して來たスルメイカ價格の變動要因を總括した物で有る。此れに依ると、産
地冷凍スルメイカが價格決定の最大要素と成って居る事が良く判る。圖の太線で示される様に産地冷凍スルメイカの價格は、其の水揚量と在
庫量に依り決定され、更に産地生鮮スルメイカや六大都市の冷凍スルメイカや生鮮スルメイカの價格を規定して居る。此の様にスルメイカの價
格は産地段階、消費地段階で夫々れの水揚量や入荷量に規定されるものの、同時に冷凍スルメイカがニュージーランド、アルゼンチン沖で豐
漁と成り在庫量の増大に結び附き、此れがスルメイカ全般の數年に亘る價格下落要因に成って居るので有る。
スルメイカ價格形成要因圖
産地市場及び消費地市場での價格形成−流通段階別價格
解説 下記の表は、冷凍スルメイカの過去3箇年の流通段階別價格を示した物で有る。此の統計の調査は、毎年10月の一日丈し
か行われて居ないので、其の年の動向を示す物では無いが、流通段階別の價格形成を良く現して居る。
烏賊流通段階別價格(單位:圓/瓩) |
年 |
1986 | 1987 | 1988 |
生産者段階 |
849 | 384 | 306 |
産地卸賣 |
881 | 402 | 318 |
消費地卸賣 |
953 | 486 | 356 |
仲卸段階 |
1,020 | 535 | 379 |
小賣段階 |
1,411 | 830 | 559 |
1986年の冷凍スルメイカ生産者價格は、849圓で他の年に比べて高く、此れが消費地卸賣市場では953圓と成り、小賣段階では1411圓
で販賣され、流通の總賣賈差益金は562圓(小賣價格の39.8%)で有った。
一方1987年と1988年の生産者價格は384圓と306圓と安く成り、最終小賣段階では夫々れ830圓と559圓で販賣された。此の場合の
小賣價格に占める流通賣賈差益金は446(53.7%)圓と253圓(45.2%)に成って居る。一般に價格が高ければ流通賣賈差益金の実額
は多く成り、各流通段階の利益が大きく成る。反對に小賣價格が安く成れば、各流通段階の賣賈差益金は壓縮された者に成る。1986年と
1988年を比較すると、流通賣賈差益金の格差は2.22倍(562圓÷253圓)なので流通に懸かる經費が固定的だと仕ても、流通量を2.2
倍に増やさ無ければ同じ利益が出ない事を示して居る。烏賊や秋刀魚、鰯等多獲性魚が大量に獲れて小賣價格が餘りに安く成ると、小賣を
含めて流通の各段階の利益が無く成り、小賣店ではサービスや客寄せの爲に、或いは品揃えの爲に大衆魚を取り扱う様に成る。此等の魚丈
が賣れるのでは經費割れを起こして仕舞うので有る。
此の様な低價格大衆魚の実質賣賈差益金額の低下を補う爲に開發されたのが刺身盛り合わせ商品で有る。此れで有ると消費者に割安感を
與え乍ら、其の時々の低價格商材を組合わせ、卸値の低下程に販賣價格を下げなくても濟むので有る。即ち、烏賊が安く成れば、烏賊の刺
身數を増やして柔軟に經費管理が出來る譯で有る。