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烏賊の經濟と經營

烏賊の經濟と經營に關する索引

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需要動向−用途別配分量(烏賊の加工品)

解説 烏賊は色々な物に加工されて居るが、其の主な物を擧げると元々日本近海で漁獲されて居たスルメイカを原料とする物で、主 な物は塩辛、干し鯣(するめ)、烏賊徳利、伸し烏賊、裂き烏賊、烏賊姿燒、烏賊燻製、更には、干し鯣と昆布、鯑(かずのこ)を使用した松前 漬等が擧げられる。一方、富山で漁獲されるホタルイカも串刺し、飴炊き、佃煮、燻製、煮干し、櫻煮(釜擧げ)等様々な加工が爲されて居る。 併し、スルメイカの加工は、其の後、流網漁業で大型のアカイカ(ムラサキイカ)が漁獲される様に成ると、安價な事も有り、裂き烏賊等の加工 原料の相當部分はアカイカに移行した。猶、1992年末に流網漁業が禁止(モラトリアム)された後は、北太平洋及びペルー沖に於ける釣漁業 が、アカイカの供給源と成って居る。

スルメイカ系烏賊類の種類別需要量
スルメイカアカイカニュージーランド
スルメイカ
アルゼンチン
イレックス
生鮮食用 87-24-11120.6
惣菜用 ---858515.8
干し鯣 12-830509.2
塩辛 10-3203312.1
IQF、抜 --345488.8
ロールベタ -71--7113.2
燻製 -15--152.8
ダルマ他 -35--356.5
塩烏賊 --520254.7
裂烏賊 --5-51.0
其他 10-5466122.7
11912153246539100.0

上記の表は、全漁聯が推定したスルメイカ系烏賊の魚種別の用途配分量で有る。此處では、コウイカ類は需給の主体が輸入品の刺身用モン ゴウイカで占められて居る爲、市場が獨立して居る事も有り除外して居る。

上記の表に依ると、スルメイカは大部分の73%が刺身用に向けられて居る。1988年のサイズ別用途は、量販店は21乃至25サイズの物が 比較的安價な爲に澤山仕入れて居る。端賣りに向けられて居る40乃至45サイズの物は漁業用餌料と仕て使用された。

アカイカ(ムラサキイカ)は、60%の7萬1千屯がIQF(一本凍結)や頭脚部を除いて凍結した『壺抜』に向けられ、其他は燻製品や裂き烏賊に 加工される中間原料のダルマに向けられる。亦、近年では短冊や烏賊ステーキ等の生食用の需要も増えて來て居る。裂き烏賊は元々マイカ を使用して居たが、流網漁業で大型のアカイカが漁獲されると安價な事も有りアカイカを原料とする様に成った。其の後、水揚の増大した釣り 物に移行したが、其れも高價と成り、代用と仕てアルゼンチンイレックスを使用する様に成った。

ニュージーランド附近の海域で漁獲されるニュージーランドスルメイカは、製品の仕上がりが色白で綺麗な爲、45%が刺身用に向けられる。併 し乍、身が硬い爲に塩辛の原料には成らず、殘りの55%は様々な加工原料と仕て用いられる。

アルゼンチン附近で漁獲されるアルゼンチンイレックスは、調理加工用の惣菜向けと仕て34%(85萬屯)が使用され、4萬5千屯がIQFや壺 抜用、3萬屯が干し鯣用、2萬屯が塩辛に使用されて居る。

以上の様に、烏賊類の用途は夫々れの商品特性と價格に應じて様々な用途配分が爲されて居る。基本的には品質の良い物は價格が最も高 く附く刺身用に向けられ、其の市場の需要を滿たすと下位の加工需要に順次向けられる。從って、干し鯣以下の加工用原料需要は、加工業者 が原料の『質、量、價格』と出來上がる製品の『質、價格、製品歩留』を天秤に懸け乍ら最も利益の出る物を用いるので有る。其の爲、夫々れ の魚種及び等級の物が竸合するので有る。嘗ては魚種毎に用途が決まって居たので有るが、近年の魚種別用途配分は、アルゼンチンイレッ クス等特定の魚種の大量供給と價格變動が有ると、用途配分も大きく變動する様で有る。
スルメイカ系烏賊類利用配分圖

需要動向−スルメイカの用途と出荷先

解説 冷凍スルメイカの主要51漁港の水揚量は、1988年に合計18萬5千屯と成る。此の内14萬屯(75%)はニュージーランド沖 或いはアルゼンチン沖に出漁した船が帰港する八戸港に水揚げされて居る。水揚量2位の凾館港は19%の36萬屯、小名濱は3.6萬屯で 有る。此等の産地での用途配分は約13萬屯が地元向け、5萬屯が地元外へ出荷されて居る。

地元向けで用途が多いのは、保管して置いて徐々に加工原料とされる冷蔵庫向けの7萬3千屯で有り、次いで其他加工向け3萬2千屯が有 る。地元以外に出荷される分を觀ると、東京・横濱市場への出荷が多く1萬8千屯、次いで自縣向けが7千4百屯有る。此の様に冷凍スルメイ カの殆どが八戸に水揚げされ其の大部分が地元の冷蔵や加工に廻される。八戸の一次在庫機能や一次加工機能は烏賊の需要に取っては 重要で有る。猶、八戸の在庫機能や加工機能は嘗て鯖(さば)が豐漁だった時に形成された者で、加工業者や冷蔵業者は原料魚を鯖から烏 賊に切り替えて對應して居る。

一方沿岸烏賊釣漁業に依る漁獲が主体と成る生鮮スルメイカに附いては、51漁港の水揚量が3萬5千屯で水揚は各地の漁港に分散して居 て、境港や福岡、下關の漁港等が水揚の多い漁港で有る。生鮮スルメイカの消費は、其の一部(3千8百屯)が冷凍される者の、相當部分は 生鮮形態で自縣或いは大都市中央市場の在る東京・横濱市場(6千屯)や名古屋市場(2千2百屯)、京都・大阪・神戸市場(2千6百屯)等に 即日或いは翌日に出荷されて居る。

從來、冷凍品と生鮮品は鮮度及び價格帶が異なる爲に兩者が一定の供給量の範囲に在る間は竸合し無かった。併し、近年の様に冷凍物の アルゼンチンイレックスが大量に安價に出廻ると、從來の地元の生鮮品を原料に使用して居た加工業者が冷凍物を使用する様に成り、中型 烏賊釣船は從來長期操業を仕て冷凍烏賊で水揚げ仕て居たので有るが、冷凍烏賊が暴落して採算が合わない爲に日歸りの生鮮烏賊の水 揚に切り替える様に成った。其の爲、需給兩面で生鮮烏賊の下落要因が發生して居る。1988年の沿岸烏賊釣に依る生鮮物の價格暴落は 此の爲に生じた。
スルメイカ漁港別用途數量圖

需要動向−家庭消費量の動向

生鮮家庭消費 烏賊類の家庭消費量に附いて觀ると、生鮮・冷凍品では、1965年から1988年に懸けて一人当たり1.4瓩から2. 1瓩近く迄變動して居り、水揚が多くて價格が安かった1971年と1972年、1980年、1981年の消費量が2瓩程度迄に増大して居る。反對 に水揚が少なく價格の高い1985年と1986年は1.4瓩迄減少して居る。

此の様に、生鮮烏賊の家庭消費量は價格に對應して變動し乍らも、中期的には減少の傾向に在る。下圖は家計調査年報に依る烏賊の消費 量と実質価格の推移を指数數で觀た物で有る。烏賊の消費量は先ず烏賊價格に依り規定されて居るが、同時に、1977年以降一貫して減退 して居る傾向も觀られる。

此れに依ると、烏賊の消費量は一見減退して居る様に觀えるが、然うでは無く烏賊の消費が多様化して來た爲、『刺身盛り合わせ』或いは烏 賊フライ、シーフードサラダ等調理加工形態での購入消費は増えて居ると思われる。

更に先の需給表の外食の項で概算した様に、烏賊の外食消費は、1984年以降毎年大きな伸びを觀せて居ると考えられる。例えば學校給食 の調査では烏賊の消費は水産物消費の中で最も多い比率を占めて居る。

1982年迄の烏賊の家庭消費は、價格が安く成れば大量に消費されると謂う性格を有して居る事が判る。當時も在庫の増大が問題と成って 居たので有るが、家庭消費に關する限り價格を安くする事で大幅な消費が期待出來たので有る。例えば1980年の生産量は、68萬7千屯と 大きな者で有ったが、價格が安く成る事に依り完全に消費され、次年度への繰越在庫は極端に少なく成って居るので有る。

併し乍、圖を觀る限り、1984年以降の烏賊生鮮消費構造は、異變が有った事を示して居る。此の時期から刺身盛り合わせがスーパー等で 良く賣られ『生鮮烏賊』と仕ての購入量が少なく成って行った事が考えられるので有る。

家庭での烏賊の料理方法は色々な物が有るが、最も多いのは何の様な物で有るか、一例を擧げると、山口縣内の23の幼稚園の家庭調査 に依ると、烏賊の料理で最も多いのは一位が刺身で85%、二位がフライ、天麩羅の59%、三位が煮魚の27%と成って居て、烏賊は刺身と フライ、天麩羅が壓倒的に多い事が判る。
烏賊家庭消費・價格相関關圖

干し鯣(スルメ) 干し鯣の家庭消費量に附いては、1973年に91瓦(原魚量364瓦)と最も多かったので有るが、其の後減少傾向 を示し、1975年には75瓦、1980年には54瓦、1985年に44瓦と成り、1988年の45瓦と低位安定状態に成って居る。

干し鯣の需要動向を消費量と價格の動きから觀ると、1979年以降價格が下落して居るにも拘わらず消費量が下がり、此の間に需要の減退 が有ったと考えられる。干し鯣の需要の減退の理由と仕ては、近年燻製以外の珍味加工等他の加工品に需要の比重が移り、其の爲に干し 鯣の需要が減退した事、亦、産地の對應と仕ても、經費の高い大型烏賊を原料とする干し鯣よりも他の加工品の方が利益が上がり、生産性 が高い事等が擧げられる。

生鮮烏賊、干し鯣、烏賊燻製以外の加工品と仕ては、酒の肴に利用される裂き烏賊、烏賊徳利、烏賊塩辛、塩烏賊、伸し烏賊、缶詰、シーフ ードサラダ、烏賊天麩羅等各種各様の物が擧げられ、此の様な色々の消費形態と外食を通じて最初に觀た84萬6千屯の消費を実現して居る ので有る。

特に、生鮮烏賊と同じ様に、1980年と1981年を境に需要構造の大きな變化が讀み取れ、此の頃から新製品の參入が相次いだと考えられる。
干鯣家庭消費・價格相關圖