何気ない、いつもの日常だった。
緑の野原で狐と戯れるユニ。それを優しい目で見つめているγ。ぼんやりとそれを見ている自分。いつもと変わらない日常。
変わらない日々の中で変わっていったのは自分だった。
どろどろとしたものが腹の中で蠢いている。
腹を裂けばこれは出ていってくれるだろうか。いつも通りの日常に戻れるだろうか。
そう自分に問いかけて、出た答えは、否。
本当はもう、きっと無理だと、気付いていた。

「おい、幻騎士!」

名を呼ばれふ、と顔を上げる。
遠くでγとユニが笑って立っていた。手招きで呼ばれ、ゆらりと立ち上がる。
少しだけその場に立ち尽くし、遠くのγを見つめる。
口が薄くあいて、またかたく閉じた。

(なぁγ。オレはお前を裏切るぞ)

こくり、と、出かかった言葉を飲み込んだ。
頭の中で、もういつもの日常はかえってこないのだと誰かが叫んでいた。
よくよく聞いてみればそれは自分の声で。
軽く首を振り、わかっているさ、と呟き目を閉じる。
前を向いて、ゆっくりと歩き出した。