じわじわと蝉の鳴き声がしている。
目を細めて上を見ると、原色に近い青い空と、まっ白い雲が見えた。

「暑い、ね、」

コンクリートからの照りかえしに焼かれながら、力なく笑う。
真昼間なのに辺りに人気がないのは、痛いほどの太陽の光と毎日続く猛暑のせいだろうか。
坂をのぼる足にもいまいち力が入らない。
あぁ、急にアイス食べたいなんて言うんじゃなかった、と思った。
勉強中に急にアイスが食べたくなって、前にいたザンザスに、散歩がてら一緒に行こうと無理矢理つれだしたのも悪かったかもしれない。
少し後ろを歩くザンザスから、暑さとは別の熱気が出ている気がする。
あと5分もしないうちに炎が後ろからふってきそうだ。

(暑いなぁ…)

ちら、と後ろを見る。
ザンザスのシャツが汗で肌にはりついている。

(あ、)

ぐら、と暑さのせいではなく別の意味で脳が揺れる。
ぴたり、と急に立ち止まって、同じように止まったザンザスに手を伸ばす。
汗でしめった手をつかんで、来た道を引き返し始めた。

「おい、どこ行くんだ」
「家」
「なんで」

理由を言ったら怒られそうだったので、黙ったまま歩く。
それでも何故、とザンザスが訊いてくるので、秘密!と叫んでダッと駆けだす。
青い空と白い雲の下を全力で走った。
家につくと扉を開けて中に入り、部屋まで駆け上がる。
ドアを閉めて鍵をかけて、荒い息のまま口付けた。
扉にザンザスを押しつけたまま、ずるずると床に滑り落ちる。

「な、んだ、急に、」

ひゅうひゅうと苦しそうに息をするザンザスに、へにゃり、と困ったように笑う。

「あはは、ごめんきっと夏のせいだ」

息が整ってから、もう一度ゆっくりと口付けと、しょっぱい味がした。




 して