ドン、とベッドに押し倒して、上から押さえつけた。
家光は驚いた顔でこちらを見上げて、何の冗談だと強張った顔で笑う。
そんな家光にゆっくりと顔を近づけて、触れあう寸前で止め、にたり、と笑った。

「キスの時は目を閉じるもんだぜ?」

ひゅっ、と家光が詰まるように息を吸い込む。それがおかしくてふっ、と笑った。
ほんの少しだけ顔を近づけると、慌てて家光は目を閉じる。
ぎゅーっと目を閉じたままでいる家光をしばらく眺めてから、ぱっと顔を上げた。

「本気にすンなよ、ばーか」

声を上げて笑って家光の上から退き、ずれた上着をなおす。
そろ、と目を開いた家光が、のろのろと起き上りながら、困った顔でこちらを見ている。

「ほ、ホントにするのかと思った…」
「してほしかったのか?」

言ってやると家光は驚いた顔をして、枕をこちらに投げてきた。受け取って、投げ返してやる。

「期待してんじゃねぇよ」

ぷ、と笑うと、すごい勢いで枕が飛んできた。早すぎて今度は顔に当たった。




 鹿