「きみ、狙われてるって自覚、ないだろ」
「はふよ?」

もぐもぐと口を動かしながら、呆れ顔のγを見上げたが、その顔はさらに呆れた表情になった。
口の中のサンドイッチを飲み込んで、二つ目に手を伸ばす。
けれどそれは手にとるまえに、γによって取り上げられた。
γは苛々とした態度でがたんと椅子をひいて、そこに座る。そして頬杖をついてがつがつとサンドイッチを口に運んだ。

「自覚があったら、こんなところで呑気に朝食なんか食べてないと思うんだが?」

辺りを見てみろ、と目で言われ、山本はぐるりと辺りを見渡す。とてものどかな、オープンカフェが見えた。

「ここいいじゃん。日あたりいいし」
「狙われてるやつは、普通、朝からオープンカフェで、呑気に、朝食は食べない」
「食ってるけど?」
「きみは普通じゃないんだろうな」

あぁもういい、と溜息を深くついて、γは残っているサンドイッチに手を伸ばす。
けれどそれは手に取る前に、山本によって取り上げられた。

「でもさ、」

サンドイッチを食べ、コーヒーを飲んでから、山本はちらりとγを見上げる。

「あんただってお仕事しないで、朝帰りなんてしてていいわけ?」

少しだけ眉をよせるγに、山本は続ける。

「香水キッツイ女が好み?」

その匂い嫌いだなぁ、とカップに残ったコーヒーを眺めながら、山本は呟く。
そして、残っていたコーヒーを一気に飲み干すと、椅子から立ち上がった。

「そこちょっと行ったらさぁ、借りてるマンションあるんだよね」
「それが、」

なにか、と言おうとしたとたん、ぐらりと視界が揺れた。
γは机に落ちるように倒れる。
体がびりびりとしびれた。

「言い忘れてたけど。サンドイッチの二個目にさ、痺れ薬入ってたんだ。あぁ俺じゃないよ?どっかのマフィアが盛ったみたい」

しかも結構強いのみたいだなぁ、と山本は呑気にγを見下ろす。

「まぁ、食ったあんたが悪いってことで」

にこりと笑って、山本は肩の上にγを担ぎあげる。

「それじゃ、行こうか」

笑顔で日当たりのいい道を歩き出した。





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