寒空の中を駆け抜ける。
肺がチリチリと焼ける。
山のずっとずっと上まできて、ようやく立ち止った。
肩で息をしながら、携帯の番号を押す。
心臓がドクドクと煩い。
静まれ、静まれと呟きながら、携帯を耳に当てた。





階段を必死に駆け上がる。
肺がチリチリと焼ける。
屋敷の屋上まで上がってきて、ようやく立ち止った。
肩で息をしながら、携帯の番号を押す。
心臓がドクドクと煩い。
静まれ、静まれと呟きながら、携帯を耳に当てた。



プープープーと、通話中の音が流れた。



ざわざわと木々が揺れる音を聴きながら、少したってから電話をかけなおす。
今度はルルル、と音が鳴った。
すぐに相手が出たので、空をぱっと見上げて手を伸ばした。

「ザンザスあのね。星がきれいなんだ」

見てほしいなぁ、と言うと、電話の向こうからは返事ではなく笑い声が返ってきた。
しばらく笑い声が聞こえていたので、首をかしげて待っていると、

『お前はばかだな』

と言葉が返ってきた。
そして、

『俺もばかだ』

と続いた。

「どうして?」

そう訊くと、ザンザスは呆れたように息を吐いて、また笑った。

『俺も今、星を見ていた。 それで、お前に教えてやろうと思った』
「ということは。同時に電話かけたってこと?」
『だろうな』

本当にばかだ、と言ってザンザスはくつくつと笑う。
こんなこともあるものなのかと。

『なぁ』
「うん?」
『今日はいい夜だな』
「うん。 いい夜だね」

そのまましばらく電話を切らずにいた。