びゅう、と窓からの突風でカーテンがぶわりと舞い上がる。 風がやみ、カーテンが静かに元の場所に落ち着いた時、いつの間に入ってきたのか、窓際に赤い髪の男が立っていた。 男はこちらを見てニコ、と笑ってから、つまらなさそうに肩をすくめた。 「なぁんだ。泣いてるのかと思ったのになァ」 「何の用だ貴様…」 男をギロリと睨んだが、男は答えず首を後ろにがくんと傾けた。 そしてゆっくりと首を前に戻してゆく。 「何って、」 ひゅっと冷たい目がこちらを見た。 「シツレンしたボンゴレのドンをヤりに」 とっさに手に力を集めて放とうとしたが、見えないほどの素早い動きで近づいてきた男に足をはらわれうつ伏せに床に倒された。 男は両腕を掴み、背中にストンと座り込む。 「退け!」 「いーやーだーねー」 言ってべぇ、と舌を出す。 それからそっと耳元に唇を近付けた。 「ヤりにきたってゆったけどさァ。キミ、オレに殺されたい?それとも犯されたい?」 返答をせずギッと睨んでくる強い視線を、男は楽しそうに見返す。 しばらくそうしていたが、急にぱっと上から体を退けた。 急いで立ち上がり、戦闘態勢を作る。 けれど男はどうでもよさそうにかけていた眼鏡を上げただけだった。 「殺すか犯すかどっちかしようと思ってたんだけどさァ。今日はもーいいやー」 「んだと…」 「シツレンして落ち込んでるから。今日だけオレ優しい男になるのヨ」 優しい男は傷ついてる子に手出しはしないのヨー、と言って男はケタケタと笑った。 ふざけんじゃねぇ、と手の中で炎がチリチリと燃え上がった瞬間、ぶわりと突風が吹いた。 突風はカーテンを巻き上る。 そして風がやむ頃には、男は消えていた。 手の中で残された火がチリチリと燃えている。 行き場のない炎を、手を握って消した。 雑音の中の真実 |