廊下の角を曲がってゆく姿を見つけ、追いかけて服を掴んだ。 「やぁγくん」 「あぁ、どうも、」 γはきょとんとした顔でこちらを見下ろしてから、営業スマイル100%の笑みを作った。 相変わらずくだらない笑顔だ、と思いながら、手をのばしてγの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。 「γくん日本行くんだよね」 「あぁ、行くよ」 乱れた髪を片手でかき上げて、γはまたにこりと笑う。 今度は手をのばして、指先で左胸に触れた。 服の上から心臓の脈打つ動きがわかる気がした。 「ゆっとくけどあっちで誰かに殺されたりしないでね」 「そんなに弱そうに見えるか?」 γは少しだけ呆れた顔で首を傾ける。 それをちら、と見て、指先に力を込めた。 このまま心臓えぐり取ってやろうか。 そんなことを思っていたが、良い事を思いついたのでぱっと顔を上げた。 「そうだ。γくんが死んだら一番に報告がくるようにしておこう」 「報告なんて聞いてどうするんだ」 もう一度首を傾げたγに、にぃ、と口の端をいっぱいに上げた。 「んとね、死体をここまで運んでもらって、それから死体が腐るまでぐっちゃぐちゃに犯す」 「絶対に死なずに帰ってくるからそんな物騒なこと口にするのはやめてくれ」 「うん。怪我ひとつなく帰ってきたら優しく犯してあげるね」 「遠慮するよ…」 にこーっと満面の笑みを浮かべたが、γはげんなりと顔を背けた。 そのまま廊下の奥へと歩き出す。 その背にひらひらと手を振った。 「γくーん、いってらっしゃーい」 「はいはい、いってきまーす」 ふ、と笑う声と、ひらりと手を振る姿が見えた。 それが最後に見た君の姿だった |