若い頃の家光とザンザスのはなしです






「俺は明日死ぬ」

突然の言葉の後、ガタン、と床に椅子が倒れた。
倒れた椅子に見向きもせずに、家光は呆然とザンザスを見ていた。
煙草をくわえたまま、そんな、まさか、という目をザンザスに向けている。
じわじわと燃えていた煙草が短くなって、灰が床に落ちそうになる頃、ようやくザンザスがふ、っとおかしそうに笑った。

「はっ、そんな急に死ぬわけねぇだろうが」

ははは、とザンザスはおかしそうに笑う。
こんなくだらない冗談にひっかかる家光がおかしかった。
ひとしきり笑ってから顔を上げると、呆然とこちらを見たままぽたりと涙を床に落とす家光が見えた。
後悔、した。
のろりと家光に近寄って、手を握る。
家光はその手を振り払って、両腕をクロスさせるようにして顔を隠した。

「家光、」
「ばかやろう」
「家光ごめん」
「ばかやろう」
「ごめん」
「ばかやろう」

服のはしを掴んでただただ何度も謝った。
ぺたりとその場に崩れ落ちるようにして座り込んだ家光は、謝るたびにばかやろうと言って泣いた。





 ミは