あぁなんてばかばかしい。
そしてなんて最悪で最低な日なのだろう。
そう思いながら、今にも雨が降りだしそうな空を見上げる。
こんな天気じゃ洗濯物乾かないよねぇ、とどうでもいいことを考えつつ、手をぶらぶらと振る。
手についていた血が辺りに飛んだ。
それと同時に遠くで爆音が響いた。
火柱が立ち上がり、悲鳴がここまで届いている。
ヴァリアーだろうなぁ、と思って、目を閉じる。
本当にくだらない。
マフィアの抗争ほどばかばかしくてくだらないものはないはずだ。
平和的交渉とかさ、そういうのする気ないわけ?みんな頭悪いわけ?
深く深く溜息をついて、ゆらりと右手を上げる。
ナイフを持って走ってきた男が一人業火によって消し飛んだ。
焼ききれずに残った肉片が焦げて地面に散らばる。
ボンゴレのドンにナイフ一本で向かってきた勇気には脱帽。
帽子を脱ぐふりをしてから、ばしゃん、と血溜りに座り込んだ。
雨は、いつ頃から降るのだろう。山本か了平がいればわかるのになぁ、と思っていると上に影ができた。
ふ、と見上げるとザンザスがこちらを見下ろして立っていた。

「あぁお疲れ様。そっちはどう?」

にこりと愛想笑いを浮かべる。

「もう終わった。それにこんなもの、俺らがでるほどでもねぇ」
「うんまぁ確かに」

本当は守護者3、4人くらいで片付くものだったのだけれど。
最近つっかかってくるマフィアが多いものだから、つっかかってきても無駄だというのを知らせるために抗争なんかにヴァリアーを引っ張り出していた。

「わざわざごめんね、」

謝ってから遠くを見る。
跡形もなく完全に潰すのにはもう少しかかるかな。
そう言って、さぁな、という返事がきて、それ以降は辺りに沈黙が落ちた。
しばらくぼんやりと火の手が上がる方向を眺めていたが、ぽつりと、ザンザスが言葉をこぼす。
急に降ってきた雨のような言葉だった。

「誕生日おめでとう」

ゆっくりとツナがザンザスを振り返る。

「なんだ、覚えてたの?」

一応、というザンザスのそっけない言葉に、ツナは眉を下げて笑う。

「ザンザスが一番最初だよ。今日朝からこんなのだからさ、獄寺くんにも言われてないんだ」

どうでもよさそうなザンザスを見上げてから、ぴょんと飛ぶように立ち上がる。
そして、なんだか、と言いながら、手を後ろで組んだ。

「今日は最高の日だ」

ふふ、とツナが笑った。






 

  血