ザァァァァァァ、という音しか聞こえなかった。自分の足音すら聞こえない。 突然降り出した雨は、すぐにγの体を重いほどに塗らした。 髪もべったりと頬や額にはり付いている。何度上げても落ちてくるので、途中から上げるのをやめた。 風邪をひくかな、と思いながら歩いていると、急にぱっと雨がやんだ。 髪をかき上げてから前を見ると、そこに日本刀を持った男が立っていた。 「今の雨は、おまえの仕業?」 こちらを見ながら立っている男の手の中にボックスがあるのに気付いて、γは少しだけ眉を寄せる。 男は気まずそうに後ろにボックスを隠すと、へへ、と困ったように笑った。 「不可抗力ってゆーやつだったら、許してくれたりする?」 「一発殴ってもいいかい?」 「あははヤだ」 殴りかかろうとしたγより早く、男は後ろに隠していたボックスを開く。 ぶわりと中から何か出たと思うと、すぐにまた雨が降り出した。 そして濡れて落ちてきた髪が邪魔になり、前が見えなくなって、足元が滑って。 ころんだ。 「だ、大丈夫か…?」 上から押し殺した笑い声が聞こえる。 「男前が台無しだよ」 言って足を伸ばして男の足を引っ掛けた。 男も同じように足元が滑ってころんだ。 べしゃりと泥がはねた。 「男前が台無しなんですけど」 男が起き上がりながら言う。 「別に男前でもないから大丈夫」 笑顔で言ってやった。 男がこのやろう、という目でこちらを見てきたが、無視をした。 雨の中、ふたりで笑った。 煩いくらいに君の音しか聞こえない |