※Next #2.5の続きです 廊下を歩く音がする。 窓から差し込む暖かい日差しに目を細めながら、骸はひどくゆっくりと歩きながら、小さな銃を取り出した。 それに弾を三つだけこめて、また懐にしまう。 そして願うように、俯いていた顔を上げると大きな扉が見えた。 その前に、男が一人立っていた。 オレンジに近い髪をした男はにぃ、と口の端を上げて笑う。 「よぉ、久しいなぁ、骸」 扉にもたれて、男は骸を見ている。 「お前は、」 男はただただ優しく笑った。 「お前は、また俺を殺すのか」 男の言葉にドクリと心臓が音を立てる。 思わず骸は懐の銃を服の上から押さえた。 ぎろりと男を睨む。 「…黙れ。消えろ、幻」 「はっ、お前が作っている幻だろうに。 今の俺は、お前が無意識に作り出している、空っぽの幻だ」 わかってる。 そんなこと、わかってた。 「本当に、なんで、」 「なにが何故、なんだ」 骸は首をぶるぶると振る。 ぽたりぽたりと涙が赤いカーペットに落ちた。 懐の銃を取り出して、涙を流しながら幻の心臓に向ける。 「こんなことになるのをわかっていたのに、どうして私はまた、マフィアなんかに、入ってしまったのでしょうね」 「俺に訊かなくても、理由なんか最初から分かってるくせに」 はい、と骸は頷く。 そうして幻に向かって引き金を引いた。 音は出なかった。 幻はあの時と同じように、花びらとなって消えた。 「わかって、ますよ」 そう、理由はわかっていた。 自分はただ、貴方に会いたかったのだ。 貴方とそっくりな顔の人間や、空っぽの幻だとしても、もう一度貴方を殺すようなことがあるとしても。 自分はただただ、貴方に。 会いたかったのだ。 「大、空」 ぽつりと呟いてから、ぐいぐいと荒っぽく涙をぬぐう。 それからパチリと指を鳴らすと、骸の顔がまったく違う顔に変わった。 平凡な顔の男は、ゆっくりと扉に手をかける。 そして扉を開けると、真正面に見えた優しげな顔の男に向かって銃を構えた。 「さようなら、ドンボンゴレ」 ドォン、と、部屋中に銃声が響いた。 その日、沢田綱吉が死んだ。 Next #3 |