がさがさと葉をかき分けて暗い森の中へと進む。
奥へ奥へ進むと、急にぽっかりと広い場所に出た。
真ん中にある切り株の上に、男がひとり座っていた。

「雲雀がさ、お前のこと殺したってゆってた」
「ふぅん」

近づいてぺたりと男の瞼の上に手を乗せる。

「生きてるし」
「生きてるさ」

男は眉を下げて笑う。

「目、両方とも見えないのか」
「あァ、君のトコの雲の守護者サンのおかげで」

乗せていた手をどけると、男がゆっくりと目を開いた。
光の無い両目が、こちらを眺めてくる。

「俺の目、片方やろうか」

ぽつりと呟いたが、男はくだらないという風に笑った。

「本気じゃないくせに、そうゆうのは言わない方がいいんじゃないのか」
「あ、うん。ごめん」

素直に謝ったら、男はまた笑った。

「お前さ、これからどうすんの」
「さぁね」

男はゆっくりと立ち上がって、背を向ける。そうしてひらりと手を振った。

「どこいくんだ」
「さぁね」
「また会えるか」
「さぁね」
「また、会いにいっていいか」

少しだけ振り返って、男はにぃと笑った。

「絶対に嫌だね」




 

        茨