※初代ボンゴレ×初代霧守護者(骸)の話です





その日、世界がひどく美しかったのを覚えている。
空はどこまでも青く、光に照らされた緑は美しく輝き、緑の上では鳥がさえずっていた。
世界を美しいと思い、いとおしいと思うのも今日で終わりなのだろうと、そう感じながら、窓から外を見る男を、骸はぼんやりと眺めていた。
男のオレンジに近い茶髪が、カーテンと一緒に風に揺れている。
しばらく外を見ていた男が、ようやく骸を振り返って少し首を傾けた。

「なぁ骸、俺はもうすぐ死ぬんだ」
「そうですか」

突然の言葉にも、骸は表情一つ変えずに言葉を返す。
男の体が、もうぼろぼろなのは知っていた。
人目につかないところで血を吐いているのも知っていた。
今更驚くことなどひとつもない。

「お前はこれからどうする?」
「どうする、とは?」
「このままここ残るのか、という意味だ。ここを出て行くなら出て行けばいいし、俺と共に死にたいというなら、死ねばいい」

男は骸の懐を指差す。

「銃くらい持ってるだろう?」

骸は黙って懐から銃を取り出す。
それをゆっくりと男の心臓に向けた。

「ならば、」

赤と青の目が、男を見つめる。

「ならば私は、貴方になりましょう。貴方になって、貴方の思っていたボンゴレを作り上げます」

骸の答えに、男は精一杯口角を引き上げて笑う。

「俺の提示した道を全て断るか。お前らしい」

腕を伸ばして骸の頭をぐしゃぐしゃと撫でてから、男は机に向かう。
紙を探してペンを持つと、急ぐように文字を書き始める。
書き終わると、それを骸に渡した。

「俺様的ボンゴレ計画だ。まぁ適当に頑張れ」

よれよれな文章を何とか解読しつつ、骸は頷く。
紙をたたんでポケットにしまうと、もう一度銃を構えなおす。
男の胸に銃口を当て、引き金に指をかける。

「何か言い残すことはありますか」
「俺は地獄にゆく。お前も早く、落ちて来い」

わかりました、と少しだけ笑って、骸は引き金を引いた。
銃声は聞こえなかった。聞こえないようにした。
男が床に倒れる。
それを抱きとめた。
抱きとめた体は、はらりはらりと花びらになり窓の外に飛んでゆく。
床に広がった血溜りも、花びらとなって消えた。
それらを見ながら、涙が、落ちた。




その日から、霧の守護者が消えた。
ドンボンゴレは何も言わなかった。
彼の目が、時々光の加減で赤と青に見えたが、誰も、守護者すらも気付かなかった。





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