ゆらゆらと波紋が広がる。

 
鮫が鮫に食べられるのかい? おかしいねぇ、スクアーロ

くつくつと笑い声が聞こえた。
目を開けると水面がきらきらと輝いているのが見えた。

(なんだぁ、久々に出て来て早々うるせぇぞぉ)

にぃ、と口の端を上げて笑う。
目の前には何年かぶりに、剣帝が居た。
久しぶり、と剣帝はにこりと微笑んだ。

 
きみにしては、随分つまらない終わり方だ。 剣士としての誇り、だっけ? そんなのただの自己満足だよ。 ほんとうにきみはばかなんだから

はああ、とおもいきりため息をついて、剣帝は大げさに肩を竦める。

 
それにね、きみが死んだら、ザンザスが悲しむよ

剣帝は、泣きそうな顔で、そう言った。
目を細めてそれを見ていると、ばしゃり、と水面が大きく揺れる。
また鮫がきたか。と思ったが、どうやら違うらしい。

 
あぁ、跳ね馬が来たね。 彼はきみを助けたいみたいだから、素直に助けてもらいなさい

水面を見上げていた剣帝が、すっとこちらを振り向く。

 
きみはもっと生きなさいスクアーロ。 私を殺したのだから、せいぜい長生きして私を殺したことを後悔するといい
(はっ、たまには思い出せって、素直に言ってみやがれ)

嫌だよ、と、剣帝は眉を下げて笑って消えた。

そして水面が揺れて、刺青の入った腕が自分の体を水面へと引き上げる。