カチャンと、目の前にコーヒーが入ったカップが二つ置かれる。
一つは骸が飲み、もう一つは雲雀のために残った。

「その中には、毒が入ってます」

雲雀がカップに手をのばそうとしたと同時に、骸が笑顔で言い放つ。
雲雀はゆらゆらと湯気がのぼるカップを眺め、すっとゆっくりした動作でカップを取る。
そしてつまらなさそうに、カップを窓の外に投げ捨てた。
下からカップが割れる音がした。

「雲雀くん。そこは"くだらない"とか言って笑って飲み干すところだと思うんですが」

骸の言葉に、雲雀は机に頬杖をついて鼻で笑う。

「本当に毒入りなくせに?」

無味無臭で即効性なのを選んでみました、と彼は悪びれも無く言った。
そんな骸を、雲雀はぼんやりと見ながら、彼に聞こえないほど小さな声で呟く。

「きみの殺意は、求愛ににているよね」

いとしいから(ともに)しんでくれと、いうような。

「なんですか?」

じっと見られていた骸が、眉を寄せて雲雀を見る。
雲雀はにこりと笑った。

「なんでもないよ」





 

 ひ


 そ