#10


空は、雲ひとつない、星が輝く綺麗な夜だった。
初めてあった日は雨が降っていたなぁ、と思いながら息を吸い込む。
吸った息を吐く代わりに、血がごぼりと口から出た。





出会うたびに何度もきみに怒られたのを覚えているよ
この日が一番怒っていたね
いつか謝ろうと思っていたけれど、結局謝っていなかった気がする

今更だけど、ごめんね




正直に言ったのに、きみは信じてくれなかった
信じたと思ったら、いきなり斬り込んできたし
その後の追いかけっこは楽しかったね

きみはまた怒っていたけれど、私はとても楽しかったよ




家に帰って朝ごはんを作ったら、きみはものすごく驚いた顔をした
人殺しが料理上手いのは、そんなに以外かな、と訊いたらきみは頷いた
でも、きみが素直にごはんを食べだしたのを見て、私もすごく驚いたんだよ
出会って間もない人の手料理を、食べてくれるとは思わなかったから

すごく驚いて、すごくすごく嬉しかった




きみの口の中にジェラートを放り込んだら、きみはすごい顔をしたね
そんなに甘かったかな?
今度甘さ控え目なものを作ってもらおう

いつかそれを食べにゆけたらいいと思ったよ




オレンジ色のきみの髪がすごくきれいだったよ
照れ隠しで私の手を弾いたら、手が取れて吃驚していた
驚かしてしまったけれど、お詫びにきみの好きなものを作ったらきみは許してくれたね

ありがとう




きみはおやすみのキスなんてしてもらったことはなかったのかな
私もしたことは初めてだったのだけれど、やっぱりきみは怒ったね

きみはいつも怒ったり、怒った顔ばかりしていたけれど、私はとても楽しくて幸せだったんだよ
きみは、知っていたかな




一刀両断!
一世一代のこくはくだったのになぁ

こんなに緊張したの、生まれて初めてだったんだよ




家に帰ったらきみはいなくて、次の日もその次の日も来なかった
一度だけ街できみを見かけたけど、きみはザンザスと一緒にいたね

きみは、一緒にいたい人を見つけたんだと、思ったんだ




私はね、気付いていたんだ











きみと出会った日が、終わりへの始まりの日だったと












ずきずきするけれどうとうとするよ
どろどろするけれどふわふわするよ
眠くなってきたから、そろそろ眠ろうと思うんだ

「Buona notte, bambino adorato」

きみが怒るのをわかっていて言ったけれど、きみは怒らなかった
どうしてだろう、と思っていたら、きみはおやすみのキスをくれたね
私は嬉しくて笑ったよ




そうだ、忘れていたんだけれどね

遠い昔
まだきみと出会う前、道端の占い師に、『お前は、好きな人に殺されるよ』と言われたんだ
浮気でもバレて後ろから刺されんのかな、って、笑ったのを覚えてる

この話をきみにしたら
きみは、どんな顔をするかな?


それじゃぁ、ばいばい






















 
本日、さようなら日和