#5





夕暮れ。目を覚ましたらスクアーロが窓辺に座っているのが見えた。
ごき、とこった首を鳴らして、仰向けだった体をうつ伏せに変える。
夕焼けを見ていたスクアーロが、ようやくこちらを見た。

「そんな無防備でいいのかぁ、剣帝」
「いつもぴりぴりしてるなんて馬鹿々々しいからね」

枕に顔を埋めて、テュールは笑う。
そんなもんなのか?とスクアーロは首を傾げた。
そして、また沈みゆく太陽に視線を戻す。
きらりきらりとスクアーロの髪が夕焼けでオレンジ色に光っていた。

「銀色の髪、きれいだね」

ぽつりと呟く。
スクアーロは嫌な顔をしたけれど、きれいだ、と繰り返した。

「お前だって髪白いだろうがぁ。それに、こんなもん変に目立つだけだぞぉ」

ちょい、と自分の髪を摘んで、スクアーロは自嘲気味に笑う。
そんなスクアーロに、むくりとベッドから起き上がると、のろのろと近づいた。
手を伸ばして、スクアーロのくせっ毛に触れる。
さらり、さらり。
優しく微笑んで、きれいだよ、と言った。

「べたべた触んなぁ」

バチンとスクアーロは強くテュールの手を弾く。
ゴトン。

「―っ!」

弾かれた拍子に床に落ちた物を見て、スクアーロは体を全力で後ろに引いた。
床にはテュールの手がごろりと落ちていた。

「おおおおいお前手…!」
「あぁ、ごめんごめん」

テュールは落ちた手を拾うと、左腕にカチリと引っ付けた。
軽く手首を回して、それから大丈夫、と笑う。

「吃驚させて悪かったね。義手だから安心しなさい」
「当たり前だぁ!」

晩御飯、きみの好きなものを作るから許してね、と言ったら、スクアーロはむむ、と少しの間眉を寄せていたが、すぐにしょうがねぇなぁ、と言った。



















オレンジ色のきみの髪がすごくきれいだったよ
照れ隠しで私の手を弾いたら、手が取れて吃驚していた
驚かしてしまったけれど、お詫びにきみの好きなものを作ったらきみは許してくれたね