#4 何度か会って、何日もたってようやくスクアーロはテュールに戦いを挑むのをやめた。 人間、襲われると反射的に応戦しようという意思が現れるものだが、テュールは違った。 本当に戦う気がない。というか、やる気がない。 ほぼ毎日のように街をふらふらと歩いている。仕事はしているのかと訊いたら、しているよ、と返ってきた。 今日も、公園のあまり人目につかない日陰にいるのを見つけ、何をしているのかと覗き込むと、手に菓子を持っていた。 「…う゛ぉ゛ぉ゛い何してんだぁ」 「休暇を満喫中」 「仕事しやがれ!」 スクアーロの叫びに、テュールは呆れた様に大きくため息をついた。 「あのねスクアーロ。私だってそんな毎日毎日人を殺してるわけじゃないんだよ」 「だからってこんなとこでだらだらとジェラート食ってんじゃねぇぞぉ!」 だって好きなんだもの、と言って一気に残ったジェラートを口に放り込む。 そして体の後ろに隠れていた袋から、次のジェラートを取り出した。 それを見て、スクアーロはまさか、と思いながら眉を寄せる。 「お前、こんな影にいるの…」 「日向に居たらジェラート溶けるからだけどなにか?」 にこーと笑ったテュールを見て、スクアーロは頭を抱える。 「こんなのが剣帝だと思うと馬鹿々々しくなるぜぇー、とか思われてそうだなぁ」 言って、テュールはスプーンを咥えて、手でちょいちょいとスクアーロを呼ぶ。 スクアーロは嫌そうな顔で身を屈める。 ジェラートを少しすくうと、スクアーロの口元に寄せた。 「スクアーロ、あーん」 「お前は馬鹿かぁ!」 ブチンと何かが切れたスクアーロの口に、ひょいとジェラートを放り込んだ。 |
きみの口の中にジェラートを放り込んだら、きみはすごい顔をしたね そんなに甘かったかな? 今度甘さ控え目なものを作ってもらおう |