#3 「きみは本当に人の話を聞かない。だからね。私はきみと戦う気はない。いきなり後ろから斬りかかったりは、きみがそんな勝ち方して嬉しいならすればいいがね。それに、私も年だからね。あまり動きたくないんだ」 屋根の十字架の上でごきごきと首を鳴らしながら、朝日をぼんやりと眺めて言う。 地上では、スクアーロが首を精一杯上に向けてテュールを睨んでいた。 「降りて来い剣帝!」 正体をばらした後延々と追い掛け回されたので、屋根の上に逃げたのだが、下からかれこれ何時間も睨み続けている。 どうやら屋根の上には上がってこれないらしい。 「そういうわけだし、私もそろそろ帰りたいから、降りてもいいかな?」 ちら、と視線を落とすと、鋭い眼光とぶつかる。 スクアーロは剣を握りなおし、降りてきたらぶった切ってやる、という笑みを向けてくる。 やっぱり人の話を一切聞いていない。 ヴァリアーに入ったとして、やっていけるのだろうか心配になった。 「って、なに親みたいなこと考えているんだか」 一人十字架の上で自嘲気味に笑って、すっと姿勢を正し、トン、と軽く十字架を蹴った。 垂直にふわりと地面に降り立つ。 それと同時に剣の切っ先が鼻先を掠めたがゆらりとかわし、爪先でスクアーロの手を蹴り上げ、その拍子に飛び上がった剣をスクアーロより先に取った。 そして剣を持ったまま手を高く上に上げた。 スクアーロが手を伸ばしても届かない位置。 「そろそろ朝ごはんが食べたい」 ふぅ、と息を吐きながらテュールは言うが、スクアーロは相変わらず聞いていない。 「ついでだし一緒に食べに行こうか。これは危ないから朝ごはん食べ終わるまで没収」 剣を持ったまま、テュールはすたすたと歩き出す。 後ろから慌ててスクアーロがついてきた。 「あー…バールに行こうかと思ったけどもっといっぱい食べたいよね。あぁもういいか家で何か作ろう。きみ何か食べれないものとかある?あっても食べさすけど。朝ごはんは食べない派とかだったらシメる」 「なんで俺も食べることになってんだぁ!」 「食べないのかい?」 「食わねぇ!」 「三食ちゃんと食べないと小さいままだよ」 ぐっと黙り込むスクアーロに笑って、少しだけ歩調を緩めて歩く。 少し後ろを、彼が歩いた。 |
家に帰って朝ごはんを作ったら、きみはものすごく驚いた顔をした 人殺しが料理上手いのは、そんなに以外かな、と訊いたらきみは頷いた でも、きみが素直にごはんを食べだしたのを見て、私もすごく驚いたんだよ 出会って間もない人の手料理を、食べてくれるとは思わなかったから |