「花火しようぜ!」

バターンと扉を開けて入ってきた家光に、持っていた万年筆を投げる。
それを受け止めて、万年筆を返す代わりにロケット花火を投げ返した。

「はいはい中庭に行こうな」

つかつかと部屋に入ってきて、がっしりとザンザスの腕を掴むと、ぽかんとするスクアーロを残して家光は部屋から出て行った。




中庭に出ると、大量の花火を地面に置く。

「じゃぁ憤怒の炎でよろしく」
「殺していいのかそうか」

ばきばきと指を鳴らすザンザスに、家光はつまらなさそうに息を吐く。
胸ポケットから小さな蝋燭を出した。

「あるなら最初からそれを使え」
「はーいはいはい」

家光は火をつけた蝋燭の蝋を石畳に垂らし、それからその上に蝋燭を立てる。
近くに水の入ったバケツも置いた。
準備が整ったので、ザンザスに手持ちの花火を渡す。

「よしやるかー」

しぶしぶザンザスは花火を火に近づける。
花火の先を火に触れさせるが、なかなか火がつかない。
つかない。

「…おい、これ湿気ってるぞ」
「あぁうんだって去年のだし」

このやろう、と思いながらも、じっと火で先を焼く。
ジジ、と音がして、ようやくボッと火花が吹き出した。
ザンザスの持った花火に火がついてから、ようやくわくわくと家光も火をつけ始める。
家光の花火もしばらくしてから火がついた。

「ツナも誘ったんだけどさぁ、仕事終わんねぇとかで半泣きになってた」
「あいつが悪いんだ。いつまでも仕事溜めやがって」

色とりどりの光に照らされながら、ザンザスは眉を寄せる。

「そうそう。今回はあいつが悪いから、わざとあいつの部屋から見える位置で花火してるんだよなー」

ちら、と視線を上に上げると、2階の部屋に光がついている。
そこは確かにツナの部屋だった。
なるほど、と頷いて、ザンザスは家光に渡された次の花火に火をつける。

「後で部屋に行ってやれよ。火薬の臭いさせて行ったら、あいつ悔しがるぞ」
「考えておく」

くつくつと笑って、家光はとザンザスは次々に花火に火をつけてゆく。
シューっと前に火花が飛ぶ花火や、ばちばちと火花を飛ばす花火、線香花火をして、ようやくほとんどがなくなった。
最後に残ったのはロケット花火。
ロケット花火を持って、ザンザスはくるりと花火を回す。

「おい、コレもつけるのか?」
「あー、それどーっすっかなぁ。それ一昨年のだから、さらに火つきにくいぜ」

ふぅん、と言いながら一応導火線に火をつける。
確かになかなか火がつかなかった。
つかなくて、もういいか、と思い火から離したとたん、ヒュゥと勢いよく空に花火が飛び上がった。

「あ、」

空で花火がはじける前に、パリーンと窓ガラスが割れ、部屋に入ってようやくパァンと火花が咲いた。
花火がはじけた場所は、ツナの部屋。
敵襲ー!という獄寺の声が聞こえ、一気に屋敷の中が慌しくなる。
ばたばたと守護者がツナの部屋に集まってきている気配がした。
二人はしたからその光景を見ながら、素早く辺りを片付る。

「とりあえず」

家光はバケツを持って呟いてから、ダッとその場から走り出した。
見つかったら、あとで怒られるだろう。家光が。
そう思いながら、ザンザスも後を追った。




 Go run away!