形のいい丸い頭に、美しい漆黒でさらさらの髪。
そして襟と髪の間に覗くうなじ。
夏の太陽がきらきらとそれらを明るく照らしていた。
やっぱり日本人もいい!と心の中で叫んで、嬉々として近寄る。
ところまではよかった。




「くそ、だまされた!いいうなじだったからだまされた!」

がっちりと両手を掴まれてベンチにうつ伏せで押し付けられている格好で、シャマルは悔しそうに首をぶるぶると振る。
それを楽しそうに聞くのは、うっかり後姿を女生徒と間違われた雲雀だ。
シャマルは、肩までしか見えていなかった雲雀を女だと見間違えて、わくわくしながら寄ってきたものの、振り返った顔に一気に気分が萎えた。
なんでもない、と笑顔で去ろうとしたが、すぐに足払いをかけられて今に至る。

「あーあ…ホントなんでお前ねーちゃんいないの…?絶対美人だと思うのになぁ…」
「暑いのにネクタイまできっちりしてるんだね。珍しい」
「おーい人の話きけー」

シャマルの話をまったく聞かない雲雀は、きっちりと締められたシャマルのネクタイを引っ張る。

「キスマークでも隠してるの?」
「そんなもんあるか」
「ないんだ」
「ねぇよ」
「つけていい?」

雲雀の言葉にがばりと勢いよくシャマルは起き上がろうとするが、素早く引き抜かれたネクタイでベンチと両腕が結ばれた上、雲雀に上に乗られ起き上がれずに足がばたばたと暴れた。

「ちょ、ちょっと待て!すごく待て!落ち着け!お前は暑さで頭が変になっている!」
「なってないよ」

言いながら、雲雀はちゅ、とシャマルの首筋に唇を落とす。

「見えないとこがいい?見えるとこがいい?」
「なんにもつけない方向でお願いしたい!」
「アンタってわがままだよね」

お前に言われたくない!と叫ぼうとしたが、項をがぶりと噛まれ、青空に向かって叫び声をあげた。




 暑さは君を馬鹿にする