窓の外を見ると、強く雨粒が地面を叩いていた。
ぼんやりとそれを見ながら、ザンザスは手をひらひらと振る。
その度に手についた血が辺りに散った。
倒れている男の服で手に残っていた血を拭うと、自分のズボンのポケットから携帯を取り出す。
しかしすぐに苛立たしげに携帯を閉じた。
充電が切れている。
仕事が終わったから誰か迎えに来い、と電話をしようとしたのだが、これではできない。
外をもう一度見たが、雨足はさらに強くなっている気がする。
ものすごく嫌だが、このまま濡れて帰るしかない。
帰ったら誰かをシメようと思いながら、チ、と舌打ちをして、後ろを振り返った。

「充電してなかったザンザスが悪いよ」

振り返ったと同時に、扉の方から声が飛ぶ。
じろりと視線を向けると、扉にもたれかかってツナが笑っていた。
片手に傘を二本持っている。

「お疲れ様。帰ろうか」

近づいてきたザンザスに傘を渡して、ツナは空いていた手を握った。
長い廊下を歩いて、外に出る。
傘をさして雨の中二人並んだ。

「車は」
「徒歩ですよ」

ツナの言葉に、ザンザスは嫌そうにぬかるんだ地面を眺める。
掴まれたままの手を振り払おうとしたが、がっちりと掴まれて離れなかった。
それににこにこと微笑みながら、ツナが思いついたようにザンザスを見る。

「なんかあれみたいだね。雨の中困ってる彼女迎えに来た彼氏?」
「黙らされたいか?」
「じゃぁおとーさん迎えに来た子供でいいよ。俺サツキちゃんね。あぁでもメイちゃんがいないや」

ツナは笑いながら言うが、ザンザスはただただ首を傾げる。

「誰だそれ」

眉を寄せるザンザスに、ツナはあぁ、と空を仰ぐ。

「そうかザンザスはジブリなんて知らないか。むしろ知ってても怖いか」

わけがわからないという顔をしたままのザンザスに笑って、ツナは握った手をぶんぶんと振る。

「よし、帰ったら一緒に見よう。良いよ癒されるよ」

わけがわからないまま、ザンザスは曖昧に頷く。
後は黙って雨の中を歩いた。
きっとジブリがなんなのか考えているのだろう。
ひどく真面目な顔をするザンザスを見て、にひ、とツナは笑う。

「ザンザスはホントかわいいよねー」

言ったら傘でわき腹を突かれた。




 君は時々ひどく

     真面目な顔をするけれど