開け放たれた窓から風が入ってきては、薄いカーテンをゆらゆらと揺らしている。
窓の前に椅子を置いて、そこに座っている骸の顔にカーテンがさらりと触れた。
骸は先ほどからずっと、目を閉じて椅子に座ったままだ。
退屈だと言わんばかりに外に視線を向けると、青い空と桜の花弁が雨の様に地面に降り注ぐのが見えたが、空の青さが目に痛くなって、すぐに視線を骸に戻した。

「ねぇ、ひばりくん。ぼくはいいことを思いつきました」

いつの間にか目を開けていた骸が、微笑みながらこちらを見ていた。
そして、子供が大発見をしたのだ、という風な無邪気さで、笑った。

「明日にでもお花見にいきましょうか。そして、夏になったら海にいって、秋になったらお月見をしましょう」

きみはあまり遊びにいかないから、と骸は言う。
雲雀はそれを聞きながら、ひどく重い口を開いた。

「なら、冬には、なにをするつもり?」
「冬は、冬になったら、」

骸はぱっと、青空のように眩しい笑顔をつくる。

「冬になったら、ぼくはきみをわすれてここを出てゆきます」
「どこへ、ゆくの?」
「ひばりくん知ってますか?猫は死期を悟るとひとりでどこかへゆき、ひとりでしぬそうですよ」

クフフと、いつもの笑い方で彼はひどく楽しそうに笑う。

「千種と犬はおいてゆきます。猫は、ひとりでゆくのです」

ひとりが、よいのだそうです。
そう言って、骸は椅子から立ち上がる。

「ぼくの代わりに、千種や犬や、あなたが、しあわせにしねることをいのります」

座ったままの雲雀に近づき、彼の膝に両手を当て、頭を垂れた。

「ただただ、ぼくは、春と、夏と、秋に、そう、いのります」





 










 あなたを忘れないと、ぼくはきっとさびしくて、くるしくて、ないてしまう

いとしいいとしいいとしいと、声をからして
しろい雪に埋もれながら、あたたかい春を思い出して
きっと、なみだをながすのだとおもう
















秋が過ぎ、冬は、春を忘れる