美しく整えられた庭をうろうろと歩き、薔薇園の前で立ち止まる。
上や下からじろじろと薔薇を眺めてから、一輪の薔薇に向かって棘も気にせず手を伸ばした。
手折って美しい薔薇を空に向かって掲げる。
ぽたぽたと腕から赤い血が地面にこぼれてゆく。

「きれい」

に、と笑うと、ふり返って、目の前にいた彼に差し出す。

「あげる」
「いらねぇ」
「どうして?」

ちら、と彼は薔薇に視線を落とす。

「血塗れじゃねぇか」
「アンタは赤い色が似合うからちょうどいいよ」

言われて彼はしぶしぶ薔薇を受け取る。
指先から赤い滴がぽたりと落ちた。