ばたばたばたと煩い足音がし、続いてバンと大きな音がして扉が開いた。
やぁ、と言われ笑顔のベルの顔が見えたかと思ったら、目の前にひゅっと足が伸びてくる。
ばしゃーんと高く水しぶきが上がって、上から水と笑い声が降って来た。
髪から落ちる水滴と笑い声が収まってきてからようやく、ザンザスはぎろりとまだ小さく笑っているベルを睨んだ。
風呂に入っている時くらい構いにくるな、と叫びそうになったが、言っても無駄な気がしてすぐに黙り込む。
滴が落ちる髪を手で後ろにかき上げ、ザンザスは大きく息を吐き出してから、浴槽に沈むベルの足を掴んで引っ張る。

「靴くらい脱げ」
「服も脱ごうか?」

言ってベルはぼとぼとになったコートの端をつまんで笑う。

「あ、そうだ。せっかくだしボス上乗ってよ。俺か弱いな王子だからさぁ、重たいボスのこと持ち上げられなかったんだよね」

にやにやと笑って勝手なことばかり言うベルの腹を、ザンザスは足を伸ばして踏みつける。

「その服をひとりで10秒以内に脱げたら相手をしてやる」

ベルはぱっと嬉しそうな顔をしたが、すぐに自分の濡れて肌にひっついてくる服を見て口をへの字に曲げる。

「うーんせめて10分以内で」
「出て行け」

ザンザスの言葉にベルはむうと眉を寄せ、自分の服と格闘するために勢いよく浴槽から立ち上がった。





 Ready steady...