03:泥が汚いほど、

        上に美しい花が咲くそうな




どろどろと地面に広がってゆく赤い水面から、次々に花が咲く。
水面の中心で花に囲まれながら、マーモンが笑っていた。

「悪趣味だなコラ」

岸から声をかけると、ゆら、と水面が揺れ波紋ができた。
マーモンが笑うたびにできる波紋は、何重にも重なっては岸に着くまでに消える。
そんな波紋を見ていると、マーモンの手がゆらりと上がり、花を掴んで自分の上に降らせた。

「いいじゃないか、うつくしいだろう?」

くつくつと喉で笑うマーモンに、コロネロはくだらないと言って溜息をつく。
ざぶりと水の中に入り、花をかきわけて前に進む。
マーモンのところにたどり着くと、上がったままだった手をとった。
コロネロの手が赤く染まる。

「血を花に見せかけてる暇があるなら医者のとこに行け」
「医者は嫌いだ」
「シャマルでいいな」

マーモンの言葉を聞かずに、ひょいと水の中から抱え上げる。
また花をかきわけて岸に向かう。
進むたびに後ろの花がばらばらと崩れ、水が消えてゆく。

「おせっかい」
「あァそうだな」

ぼんやりと呟いた言葉も、花と一緒にどこかへと消えた。