「ザンザス、あーん」

笑顔で差し出されたチョコレートに、ツナの指ごと噛み付く。
どろりと口の中で溶けて広がる甘さに眉を寄せつつ、咥えたままの指先をチラと舐める。
思い切り指を噛んで、ようやくツナの指をはなした。
糸を引くザンザスの舌先に赤いものが混じっている。

「誰も噛めなんて言ってないんだけど」

血が伝う指を眺めながら、ツナは呆れたように息を吐く。
ザンザスはにぃ、と口の端を上げて笑うと、べ、とツナに向かって舌を出した。

「誰も噛むななんて言ってねぇだろ」
「まぁ、確かに」

頷いてから、頬杖をついて足を組むとツナは血が流れる指をザンザスの方に向ける。

「舐めて。噛むなよ」

ゆっくりとした口調がどろりと空気に乗って広がる。
目を細めて笑っているツナを見下ろしながら、ザンザスはゆっくりとした動作でツナの指に唇を寄せた。