ちょっとした仕事が終わって、少し休暇でも、とミラノまで出向いてみたが、広場はひっそりと静まっていた。
広場には人が少なく、辺りは真っ白に曇っている。

「…ミラノって…いつもこうなの…?」

手をぱたぱたと振ってみたが、そんなことで霧がはれるはずもなく、視界には「chiudere」の看板が入っただけだった。
時々濃霧が、と聞いてはいたが、これほどまでとは思わなかった。
休日にもかかわらず開いている店の方が少ない。
ほんの少し休もうと思ったらこうだ。

(ザンザスがいて、平和な休暇なんて無理だろうと思ってたけど…)

濃霧で観光すら出来ないだなんて、さすがに少し落ち込む。
綱吉は頭を抱え、大きく息を吐いた。

「どうする?迎え、早めに来てもらう?それとも濃霧でも眺めて楽しむ?」

迎えがくるまであと3日もあるのだ。
さすがに3日濃霧を見て暮らすくらいなら、ザンザスでも帰ると言うだろう。
半ばやけくそで言って、隣で暇そうに立っていたザンザスを振り返った。
ザンザスは霧の町を眺めながら、少しずつ口の端を上げる。

「休暇を満喫してぇなら、」

ザンザスの口の端がいっぱいに吊りあがった。

「迎えが来るまでホテルで相手でもしてやるぜ?」

ザンザスの言葉に、綱吉はもう一度頭を抱える。

「そーいうのは休暇って言わないと思うんだけど」
「なら帰るか」
「…迎えは3日後、だからね」

ふん、と笑ってやると、にぃ、と馬鹿にしたような笑いが返ってきた。

(あぁやっぱり、平和な休暇なんて無理だった…)




 3