「な、ん、だ、か、」 トン、トン、と跳ぶ様に本棚の周りを歩く。 たまに本棚から本を抜き取って開いてみるが、どれも難しいことが書いてある本ばかりで、すぐに閉じて本棚に戻した。 そして、また梯子の上で本を呼んでいるザンザスを見上げて、深く溜息をついた。 「すごくつまんない」 ぷぅ、と頬を膨らませるベルに、ザンザスはちらと視線を向ける。 読んでいた本を膝の上に乗せると、辺りを見渡して少し離れたところにある本を手に取った。 真っ白な表紙の薄い本。 それをぽいとベルに投げた。 ベルはちゃんとそれを受け取って、ぱらりとページをめくったが、すぐに思いきり眉を寄せた。 「それでも読んでろ」 「読んでろ、って、これ絵本なんだけど」 眉を寄せたまま、ベルは本を開いて高く持ち上げる。 かわいらしい絵と、大きな文字がザンザスを見上げた。 「それくらいなら読めるだろ、お前でも」 「馬鹿にしてる?」 「あぁ」 くつくつと笑うザンザスを見上げて、ベルはにっこりと口の端を引き上げる。 梯子を揺らしてザンザスを上から落とすと、それを受け止め床に座らせた。 その膝の上に自分が座ると、もう一度にっこりと笑った。 「わぁーお、どーしよーおれ文字が読めなーい。ねー絵本読んでー?」 がっちりとザンザスに絵本を握らせ、満面の笑みで見上げる。 「退け」 「読んでくれるまで退かない。むしろ読んでくれないとここで押し倒す」 ベルの言葉に今度はザンザスが思いきり眉間に皺を寄せる。 そんなザンザスを見上げながら、ベルはうきうきと足をばたつかせて、彼の口から"うさぎさん"などのかわいい台詞が出るのを待った。 早くその口で言ってみな! (全力で笑ってやるからさ!) |