上を見ても下を見ても、そこには本しかなかった。
梯子がなければ取れない高さの本棚が部屋にずらりと並び、そこには本が隙間なく入っている。
床に置いている分は、きっと入らなかったものだろう。

「なんか、読むのがっていうより集めるのが好きって感じだよねコレ」
「何か用か」

ベルは辺りを見渡して溜息をついた。
梯子の上で分厚い本を広げていたザンザスは、本から視線を外さずに言葉を放つ。

「んー、用は別にないんだけどさ。暇だったから」
「なら消えろ」
「えぇそんなこと言わないでよ」

くつくつと笑いながら、ベルはザンザスのいるところまで梯子を一気に駆け上がる。
本棚に手をかけて止まると、ザンザスの読んでいた本を取り上げた。
ぎろりと睨んでくるザンザスに、にこりと笑顔を向ける。

「遊ぼうよ」

ぽいと奪った本を投げ捨てて、ベルは片手を広げる。

「とりあえず、ここで遊ぶのは危ないから下におりない?」

言ってザンザスの腰に手を回すと、ひょいと肩に担ぎ上げた。
本棚を掴んでいた手を離して、床に飛び降りる。
とん、と床に足をつけてから、眉を寄せて嫌そうな顔をしているザンザスに、ベルはにやと笑う。

「あぁ、ごめん、お姫様抱っこが良かった?」

全力で嫌そうな顔をしてくるザンザスに、ベルは声をあげて笑った。