「Al di la ci sei tu per me, per me, soltanto per me」

大げさに手をひろげて、適当な調子で歌った。

「…煩ぇ。黙らすぞ」
「キスで?」

けけ、と笑うと、胸倉を掴まれて本当にキスで黙らされた。

「…アンタって下手だね」

少し顔を離してから言って、両手首を捕まえて椅子に押し付ける。
深く深く、呼吸すらできないように口付けた。






ギシギシとベッドが煩く音をたてる。

 『Al di la ci sei tu per me』

自分で言った言葉を思い出す。
ぶるぶる、と首を振った。

(何を、言ってるんだか)

ふ、と笑って、顔を歪める彼に手を伸ばす。
まるで、縋るような手だった。
自分で自分を笑った。










 Al di la ci sei tu per me, per me, soltanto per me 
   僕には君しかいない 君は僕だけのもの