(…煩い…) 暖かい屋上で一人昼寝をしていた。 ずっとここに一人だった。 けれど頭の上から声がする。 何の歌を歌っているかはわからなかったが、声の主は寝起きの頭でもすぐにわかった。 (…下手くそな歌だ…) ぼんやりと起ききらない頭でそう思いながら、目を閉じたまま手を伸ばす。 べち、と声の主の顔に当たったので、手探りで口元をふさいだ。 歌が止まる。 (煩いから黙れ) また眠りそうになる意識をなんとかとどめながら、口を開こうとした瞬間、ちゅ、と軽く手のひらに口付けが落とされた。 (…違う) 違う。 そんなところにキスをしろという意味で口をふさいだわけではない。 黙れ、と、言いたいのだ。 やんわりと手を掴まれ下ろされる。 また下手な歌が始まった。 もういい、と諦めると、ぐっと眠気が増した。 ふわふわとした中で、下手な歌がぱらぱらと降ってくるような感覚がする。 (…この歌は…何の歌だ…) もう考えるのも難しくなってきた。 ひどく眠い。 (随分と…優しく歌う…) そう思ったのと同時に、こつん、と、音が頭の上に落ちてきた気がした。 (あぁ…そうだ…) すぅと眠りに落ちる前に、ようやく気付く。 これは。 (…子守唄だ…) それは白昼夢のような眩しさ |