※獄寺の耳が聞こえない、了平の左目が見えないという捏造ひっついてます 彼の声はどんなだったろうか。 ゆっくりと動く口元を、ぼんやりと眺めながらそう思う。 (低かったっけ、高かったっけ…) 最後に聞いた言葉はなんだったろうか。 必死に思い出そうとするが、どうしても思い出せない。 口喧嘩もたくさんしたはずなのに。 どれも、思い出せなかった。 (なんか、嫌だな…) むかむかとする胸を押さえて、ソファの上で丸くなる。 すると、了平が下から心配そうな顔を向けた。 具合でも悪いのか? 覗き込んでくる顔を見つめる。 大丈夫か、 額にのびてくる手を見つめる。 獄寺 自分の名前を呼んだ口元を見つめる。 涙が、出た。 (こいつの声はどんなだったっけ) ぽろぽろとソファの上に水滴が落ちた。 (思い、出せない) あんなに好きだったのに。 まったく、思い出せない。 獄寺? もう一度彼は名前を呼ぶ。 また涙がこぼれた。 必死に手をのばして、彼を抱き寄せる。 (あぁ、) ぎゅうと抱きしめて。 ただただ強く抱きしめて。 (あんたの声が聞きたい) そう、思った。 さらば夢跡 |