トンファーについた血を払う。
ちょうど山本と雲雀を別けるように、地面に赤い線が引かれた。
ちら、と顔を上げると、べったりと服を赤く染めた山本がこちらを見ていた。

「あー、えっと、お疲れ」

言って、山本は少し笑って刀を鞘に戻す。
こちらに向かって歩き出した山本の腹から、ぼたりと雫が落ちた。

「怪我、してるね」
「うーんちょっとやばいかも。血どばどばでてるし」

手で腹を押さえると、山本の手がすぐに赤く染まった。

「死ぬの」
「いや、まだ死にたくないんで、医者に行きたいスおれ」
「なんだ。とどめをさしてあげようかと思ったのに」

こつこつと足音が近づく。
赤い線の前で、山本は立ち止まる。

「いいなそれ。死にそうになった時頼むわ」

に、と。
いつもとかわらない笑顔をこちらに向ける。
雲雀はうん、と素直に頷いた。

「君が死にそうな時は、僕がとどめをさしてあげる」

前に進む。赤い線の前で止まった。

「だから、僕が死にそうな時は、君がとどめをさして」

美しいほどの真っ直ぐな太刀筋で首をはねるのも。
心臓へと銃弾を届かせるのも。
その手で、息を止めるのも。
なんでもいい。
ただただ、

「僕は君に殺されたい」

そんな死に方をしたい。
そう思った。