日本人は混血してできた 

 「私は、弥生時代の授業の最後にこの問題を扱う。
 「日本人は混血してできました。したがってみなさんは混血の結果できた人々の子孫です。いまから約二〇〇〇年前に、以前からいた縄文人と後からやって来た弥生人が混血したのです。だから、みなさん一人一人の顔は縄文人らしさと弥生人らしさがいりまじっているのです。」
 続けて言う。
「あなたの目は一重ですか、二重ですか。顔は長い楕円形ですか、正方形に近いですか。眉は細いですか、太いですか。耳たぶは大きいですか。小さいですか。鼻は大きいですか、ほっそりしていますか。唇は太いですか、細いですか。」
 一重瞼、楕円形の頻、細い眉、小さい耳たぶ、ほっそりした鼻、細い唇が弥生人の身体上の形質を受け継ぎ、二重瞼、正方形の顔、太い眉、大きい耳たぶ、大きい鼻、太い唇が縄文人の身体上の形質を受け継いでいる。
 このことを説明するために、続けて、「福笑い」ゲームをする。二種類の目、鼻、唇、耳たぶ、鼻、唇のイラストを子どもにもたせて、黒板に貼ってある二種類の顔の輪郭にはめこませる(上の図)。
 一度の授業で子どもの「純粋日本人観」を変えることはできないが、重要な試みであると思っている。」
 川島孝郎著「歴史学習に新風を」『歴史地理教育』516

 アイヌの人びとも蒙古人種  かつて形質人類学は、見かけ上の特徴、つまり、皮膚の色、髪の性質、彫りの深い顔・凹凸の少ない顔、一重・二重まぶた、毛の多少等々を重視していました。しかし、これらの性質は、遺伝的にも伝わる一方、環境によっても変わることが分かっています。
 現在では、環境の支配では変わらない分子や遺伝子による比較研究が進んでいます。

 あなたの弥生人度・縄文人度  五つの質問を発します。(1)あなたの目は一重ですか、二重ですか。(2)耳垢は、乾いていますか、湿っていますか。(3)顔は長手の卵形ですか、寸づまりの正方形に近いですか。(4)顔の凹凸は少ないですか、彫りの深い顔ですか。(5)眉は細いですか、太いですか。
 右の五項目にあげた前半が渡来系弥生人的、後半が縄紋人的な形質の可能性があります。
 佐原真著『日本文化を掘る』NHK人間大学テキストより

  授業実践のコメント 
 授業では川島孝郎さんの実践を模倣する。
 生徒は興味深く作業をし、できあがりに毛髪を付けると、意外と似ていることに驚いている。
 しかし、ことによると「縄文人は劣っている」というイメージから「縄文」系の顔立ちの生徒を冷やかしたりする事がある。(今年はそんなことはなかったが)以前、生徒がある先生を指さして、「縄文人や!!」と叫んだのには参った。

 縄文や弥生の昔が、今とつながっているのだ、という意識が芽生えて、歴史の授業の始まりとしてはいい効果を生み出す教材なのだが、これほど超歴史的に飛躍していいのかと思うところもある。