もう一度行きたい沖縄

中学校社会科地理的分野の授業

はじめに

 私は沖縄が好きです。一度しか行ったことがないのに、魅せられて再訪を願ってしまう。今の自分も今の自分が住んでいるところも好きだが、沖縄の人々も沖縄の自然も環境も合わせて好きだ。

 『沖縄に暮らす』といって、奈良県から移住してしまった青年の体験が書籍になっている。かれは公務員だったが、退職をして、妻や家族をともなって、沖縄に引っ越した。うらやましさ半分、心配半分で読み切った。楽しい本だった。

 沖縄を私が教えるとき、唯一の地上戦、集団「自決」、基地の島沖縄と次々とつきつけていく授業になりがちだった。今回はそのことももちろん含めながら、

     行ってみたい沖縄

     すんでみたい沖縄

と子どもたちが思えるような授業を組んでみたいと考えた。

 私の好きな沖縄を子どもたちにも好きになってもらいたいのだ。

では、私の好きな沖縄とは?

@       料理がおいしい。以来チャンプルーを何度も作るが、あのきたない店の味がどうしても出せない。

A       海と浜辺と青い空がきれいだった。魚と友達になれそうな島だった。

B       物価が安い。そしてイラブーなど変なモノをたくさん売っている。市場がおもしろい。

C       沖縄の音楽が大好きだ。歌と踊りが生活に根づいた島だった沖縄。ネーネーズが一番好き。喜納昌吉、りんけんバンドもいい。上々颱風もまずまずだ。何よりも、ライ・クーダーがGOING BACK TO OKINAWAとうたうぐらいだもの、沖縄の音楽はどれもこれも最高です。

だから今回の授業では、授業が始まる前からりんけんバンドの「夏ぬ子」を鳴らします。

 どうですか?あなたもかっけこしたくなりませんでしたか?踊りたくなりませんでしたか?

用意した教材は下の表の通りです。映像と音楽(→目と耳)と食材群(→口と鼻)と五感をフルに使う授業をめざしました。

曰く「目にも見え、音に聞こえる社会科の授業。来て、見て、さわって、楽しい社会科」

【授業で使った資料や教材】

第6時

音楽

「夏ぬ子」りんけんバンド,「花」喜納昌吉

VTR

沖縄料理の落とし穴、沖縄観光案内ビデオ(牧志の市場)

実物教材

宮古島の黒砂糖、泡盛、オリオンビール、沖縄郵便の切手、ゴーヤ(苦瓜)、パイナップル、昆布

第7時

在日米軍関係地図(パネル)、嘉手納町都市計画図(パネル)、OHP(TP)、VTR、プリント(授業プリント、嘉手納町地図)、シール(緑、黄、青)

 

 

 


資料 1

(なち)(ふぁ) (作詞:新垣 篤 作曲:照屋林賢)


(なち)(ふぁ)

 早く早く 友小達

 太陽ん笑でぃ さらぱんじ

 上い下いん さーらない

 自転車ぐるさ 足ぐるさ

 砂ぬ熱さん ちゃーんね一ん

 ばんない ぶーない まっとーば

 

 魚小 海ね中 蟹小 浜ぬ上

 でぃっかまじゅ一ん 恩納ぬ浜かい 遊びーが

 山ぬ子 町ぬ子 夏ぬ子

 

 早く早く 友小達

 六月綱引ち さらばんじ

 棒術 獅子 さーらない

 自転車ぐるさ 足ぐるさ

 綱ぬ重さん ちゃーんねーん

 はーいや ゴンゴン 力綱

 

 我達 西ぬ方 あっ達 東方

 でぃっかまじゅ−ん 公民館までい 負きららん

 山ぬ子 町ぬ子 夏ぬ子

 

 早く早く 女小達

 西ぬ太陽 さらばんじ

 石ぐぅみーん さーらない

 自転車ぐるさ 足ぐるさ

 

 キジムナーん ちゃーんねーん

 夕方ぬ道 まっとーば

 

 走ーえー勝負やさ ないるかじりやさ

 でぃっかまじゅーん がじゅまるみーまでぃ いっとーばい

 山ぬ子ー 町ぬ子 夏ぬ子

夏ぬ子(訳詞)

 おいで おいで

 太陽が ほら 笑ってる

 自転車 スイスイ

 坂道だって ひとっとび

 焼けた砂浜

 全速力で 一直線

 

 海の中の魚たち  浜の上の小蟹たち

 さぁいこうよ恩納の浜に みんなて遊びにいこうよ

 山の子も 町の子も 夏の子だもん

 

 早くいこうよ

 待ちに待った綱引きだ

 棒術 獅子舞 大丈夫

 自転車とばして くりだそう

 でっかい綱に 全力だ

 ハーイヤ ゴンゴン 全開だ

 

 俺たち西の組 あのこは東組

 さぁいこうよ 公民館に 友達だけと 負けないよ

 山の子も 町の子も 夏の子だもん

 

 おいで おいで

 夕日が ほら 笑ってる

 自転車 スイスイ

 石ころの道だって ひとっとぴ

 

 キジムナーだって友達さ

 夕焼けの道を 一直線

 

 かけっこしようか 俺が 一番さ

 さあいこうよ ヨーイドン

 あのガシュマルの所まで

 山の子も 町の子も 夏の子だもん

 


1.沖縄で何を教えるか

 中学校社会科地理的分野[沖縄]で何を教えるのか。

 この問題を考えるとき、「国際都市形成構想 21世紀に向けた沖縄のグランドデザイン  平成811月 沖縄県」が大変参考になります。

「構想」は沖縄の特性を次のように描いています。

資料 2

(3) 沖縄の特性

 本県は、我が国の南西端に位置し、海域は熱帯性、陸域は亜熱帯性の豊かな自然条件を有する島しょ県である。

 南西諸島から千島列島までのおよそ3,000キロメートルの距離を半径として那覇を中心に円を描くと、その円内には東京を始め北京、ソウル、上海、台北、香港、マニラ、ハノイ等の東アジア・東南アジアの主要な都市がほとんど含まれる。

 このような地理的特性を生かし、15世紀前後の琉球王朝時代には、東シナ海、南シナ海、黄海等を舞台に交流拠点の役割を担い、明国との朝貢貿易を中心に、日本を始め、南方諸国との海上貿易を行い、通商国家として栄えた。またシャムやマラッカ、ルソン、カンボジア等東南アジア諸国との平和的交易を通して、他国の文化を巧みに取り入れてきた。

 長く一国としての歴史を歩んできた本県は、江戸時代初期に、薩摩の琉球侵攻により幕藩体制に組み込まれ、明治維新、廃藩置県を経て、日本の一県となった。

 第二次世界大戦では、住民を巻き込んだ地上戦の場となり、沖縄本島の中南部地域は焦土と化し、戦後は、日本復帰まで、米軍による統治が行われた。

 このように本県は古くから中国、韓国、東南アジア諸国等との交流を続け、戦後は米国からの影響も受けるなど、東洋から西洋、北から南まで多様な地域との交流を蓄積し今日に至っている。このような独自の歴史的体験を通じ、本県は我が国の中でも多様で独特の文化を育んできた。

 また、沖縄県民は、「イチャリバチョーデー」(行き会えば皆兄弟)という言葉に象徴されるような親和性、寛容性、おおらかさ等多様性を受け入れる国際的な感覚や「ユイマール」(労働力などで相互に助け合う伝統的な慣習)に見られるように相互扶助を尊重する精神を有している。

沖縄学習の目標を次のように定めました。

@       沖縄の位置、自然条件の特色を理解させる。

A       沖縄のおおよその歴史から日本(本土)とは違う歴史を歩んできたことを理解させる。

B       そのことが日本(本土)とは違った(食)文化を生みだしていることを理解させる。

 授業は、実物教材を多用しいろいろ出すが、中心になるモノ教材は、

豚肉 + 昆布   です。

 学習のキーワードは

     「イチャリバチョーデー」(行き会えば皆兄弟)

     「チャンプルー」(ごちゃまぜ・かき混ぜるとか……)

の二つを掲げて第6時を計画してみました。


さらに、第7時は、「基地の島・沖縄」で、目標は「沖縄の米軍基地の実態を把握し、それによって沖縄の人々の暮らしにどんな影響があるかを考えさせる。」としました。

資料 3

(2) 沖縄の課題

 本県は、三次にわたる沖縄振興開発計画に基づき、各種の振興開発が進められ、基盤整備等各面において着実な成果がみられるものの、産業振興の後れによる厳しい雇用情勢や財政依存の高い経済構造、広大な米軍基地の存在等、今なお、解決すべき課題が残されている。

 特に、米軍基地については、我が国の米軍専用施設の約75パーセントに相当する米軍施設・区域が本県に集中しており、その規模は県土の約11パーセント、沖縄本島の約20パーセントに当たる。とりわけ、本県の約80パーセントの人口と高次都市機能が集中する沖縄本島中南部圏においては、圏域面積の16パーセントを米軍基地が占めている。これら米軍基地の存在は、土地利用の制約等、本県の振興開発を図る上で大きな阻害要因となっている。

 また、制限水域・空域の存在による社会経済活動の制約、騒音の発生、演習等に伴う環境破壊、基地周辺における都市交通問題や密集市街地の劣悪な居住環境や県土構造のひずみなど県民生活への様々な悪影響をもたらしている。

 このため、米軍基地の計画的かつ段階的な返還を促進し、県民が安心して暮らせる生活環境を確保するとともに、県土構造の抜本的な再編を図ることが必要である。

この沖縄の課題を私たちの課題とし、子どもたちと共有していく授業が必要だと考えました。

@       米軍基地とは何か?米軍基地と言っても嘉手納町では 1)嘉手納飛行場、2)嘉手納弾薬庫地区、3)陸軍貯油施設 となっている。他に米軍住宅やレクリエーション施設もある。多様性を教えたい。

A       それぞれに対応した基地被害がある。嘉手納町では「基地被害の状況基地から発生する諸問題は多岐にわたり、昼夜の別なく生ずる航空機騒音をはじめ油流出事故など枚挙にいとまがない。これまでの基地被害を大別すると次のとおりである。
1) 航空機騒音 2)航空機墜落事故 3)燃料油等流出事故 」としているが、具体的に教えたい。

B      沖縄の人々は基地をどう思っているか。圧倒的多数が返還を望んでいるが、一部返還しない方がよいという意見もあることを付け加えた。   資料 4

 

 資料はすべて、沖縄県や嘉手納町などの自治体の資料、NHKや沖縄タイムズなど報道機関の資料を使用した。


 

授業者 岩本賢治 

 

1.              日 時    1999年11月18日(木) 第5校時

 

2.学 級           1年6組(男子18名 女子18名 計 36名)

 1年6組は、明るく快活なクラスであり、社会的事象について興味・関心も高く、男子生徒を中心に社会のできごとがしばしば授業中に話題になる。教科書を読んだり、答合わせをするときなどは、たくさんの生徒の手が挙がり、また自分の意見を発表するなど全体的に学習意欲も高い。

 ただ個人的な意見や、やや思いつき的な発言もあり、個人でじっくり考え、さらに集団で意見を練り上げていくことには慣れておらず、これからの指導を強めていきたい。

 

3.小単元           九州地方

 

4.小単元の目標

九州地方がアジアとの関わりをもちながら発展してきたこと、中心都市福岡のようす、北九州工業地帯の変化、有明海周辺の開発のようすと農業の特色、火山が多く分布する地域に生活する人々のくらし、温暖な気候をいかした沖縄の人々の生活、離島の人々のを理解する。

 

5.学習計画       @アジア大陸に近い九州地方

                            A変化する北九州工業地帯(1)………製鉄業

                            B変化する北九州工業地帯(2)………IC、水俣病

                            C有明海周辺の低地の農業………………筑紫平野の米づくり

                            D火山地域に住む人々のくらし…………シラス台地の畑作

                            E暖かい沖縄の人々のくらし(1)……自然豊かな沖縄と離島のくらし

                            F暖かい沖縄の人々のくらし(2)……基地の島 沖縄(本時)

 

6.本時の学習

  (1)本時の主題 「基地の島 沖縄」

  (2)本時の目標 

沖縄の米軍基地の実態を把握し、それによって沖縄の人々の暮らしにどんな影響があるかを考えさせる。

 

 

7.指導過程 (第6時)

 

学習内容

主な学習活動

指導上の留意点

 

 

 

・発表「沖縄と言えば○○だ」

 サトウキビ、パイナップル(農業)

 シーサー(文化)

 サンゴ礁(自然)

 首里城(歴史)

・黒砂糖やパイナップル、ゴーヤ、泡盛、オリオンビール、サンゴ、星の砂、首里城模型等を次々と出す。

 

 

 

 

1.亜熱帯性の気候

・沖縄は、亜熱帯性気候の地域。年平均気温22度、年間降水量約2000mm、年平均湿度77%で、1年を通して温暖多湿な地域で、1月にはもう桜(ヒカンサクラ)が満開になる。

・農業は、水田化率2%で98%が畑作。サトウキビやパイナップルの説明。

・生徒の発表内容にあわせて、説明を加える。

 

2.沖縄の食文化

・沖縄料理を注文しよう
 足ティビチ、ラフテー、ソーキ汁
 中身汁、ミミガー刺身、チーイリチーの中から三つの料理を注文しよう。
・沖縄料理にかかせない食材は何か?

豚……飼育頭数 全国11位
消費量 70年まで第1位
現在第5位

・沖縄料理に欠かせないもう一つの食材とは?→昆布…消費量日本一 富山市

        第2位 那覇市

・VTR 「沖縄の食堂のワナとは?」
・資料プリント「沖縄料理講座」

 

・VTR 「牧志公設市場 ミミガー」
・実物 昆布

3.沖縄の歴史

・琉球王国時代に明を中心とする朝貢貿易の中心であったこと。中国の使節団接待料理に欠かせない食材として豚が使われたことを指摘する。

・江戸時代には北海道から薩摩藩と清の昆布貿易の中継地として重要な役割を果たしたことを説明する。

・その大切な豚が全滅してしまった。一体、なぜだろう? →沖縄戦

 →ハワイの沖縄移民の努力で復活

・参考:中学校技術・家庭副読本「こんぶ」

 

 

 

 

・VTR 

 

 

整理

まとめ

・沖縄の文化が日本、中国、アメリカなど和洋中がまぜ合わさってできあがっていることを説明する。「チャンプルー」

○授業でわかったことと感想を書く。

・感想文用紙

・音楽 「花」(喜納昌吉)

7.指導過程 (第7時)

 

学習内容

主な学習活動

指導上の留意点

 

 

 

○大きな騒音を聞き、何の騒音か考え

る。

 テレビの映像により嘉手納基地から

発進する戦闘機の騒音であることが分かる。

○NHKテレビの映像を音声のみ聞かせる。音量はできるだけ110ホンに近づける。

 

 

 

 

1.沖縄の軍事基地の実態

○沖縄に集中する基地のようすを資料から読みとる。

 ・嘉手納町の地図で、嘉手納基地が占める割合を調べる。

 ・嘉手納町の地図で基地と市街を着色し、区別する。

○嘉手納町の航空写真(TP)で街の様子を確認させる。

 

2.沖縄に住む人

々にとっての基地

問題

○沖縄の人々の立場に立ってみて、どんな問題を抱えているか考える。

     嘉手納町における基地被害(復帰後)を地図にシールを落とす作業を行う。

 緑……爆発や砲弾による火災など

 黄……油流出など環境破壊

 青……飛行機や戦車などの事故

○沖縄本島全域における米軍関係事故地図で被害が大きいことを確認する。(赤色は殺人)

○自分だったら……とその立場になって考えるよう促す。

○班で作業をさせ、できた班から手を挙げさせる。

○写真・VTRでその被害を確認する

 

3.沖縄の人々の願い

○嘉手納町民アンケートから、沖縄の人々は基地についてどう考えているか、を理解する。

○95年の県民集会のようすをビデオで見せ、女子高校生の訴えを聞かせる。

整理

 

○授業でわかったことと感想を書く。

 

資料 5

  花    (作詞作曲:喜納昌吉)

1.河は流れてどこまで行くの

人も流れてどこまで行くの

そんな流れがつく頃には

花として花として 咲かせてあけたい

泣きなきい 笑いなさい

いつの日か いつの日か

花を咲かそうよ

Chorus

NAKINASAl WARAINASAl

ITSUNOHIKA lTSUNOHIKA

HANAO SAKASOYO

 

2.花は花として笑いもできる

人は人として涙も流す

それが自然の唄なのさ

心の中に心の中に 花を咲がそうよ

泣きなさい 笑いなさい

いついつよでも いついつよでも

花を咲かそうよ

Chorus

NAKINASAl WARAINASAl

ITSUNOHIKA lTSUNOHIKA

HANAO SAKASOYO