ハンバーガーの材料はどこからくるか?

 あなたがたべているハンバーガーの材料のうち、日本の国の中で調達しているのは一つだけしかないって知ってましたか?
 それはパンでしょうか、お肉でしょうか、それともチーズやケチャップでしょうか?
  答えは、レタスなんです。
  ここではハンバーガーの材料が、世界のどこから来るかを、次の図でざっと眺めてみて下さい。ハンバーガー店には欠かせないパンやポテトや肉・魚などについても、世界中から輸入していることがわかるでしょう。
  まず、牛肉は、オーストラリアやニュージーランドからやってくる。現地の加工場で1メートルくらいの長さのブロック肉にしてから冷凍し、それを冷凍船で運ぶのだ オーストラリアから横浜や神戸の港まで、通常は18〜20日かかる。パンは、アメリカやカナダ産の小麦を現地の製粉工場で一次製粉してから、やはり船で運んでくる。アメリカの西海岸からだと日本まて12〜14日かかる。ポテトは、アメリカの農場でとれたものを加工場でカットして、軽く揚げてから冷凍して運ばれる。白身魚をフライにしたバーガーには、マダラとスケトウダラが使われているが、あなたは、″たら″という魚へんの漢字のつくりを知ってますか?
  魚偏に雪と書いて″鱈″。読んで字のごとく、北日本や北方の海で捕れる深海魚だ。漁船で捕獲された鱈は直接日本の港へはやってこない。そのまま太平洋を南下してタイに運ばれ、そこで加工される。まず骨を取ってブロック肉にしてから冷凍して、あらためて日本に運ぶ。その方がコストが安いからだ。日本で働いている人の平均的な月収は28万円。タイではそのお金で、30〜50人の人が雇える。
  ピクルスやオニオンは、やはりアメリカ産。チーズの原料はオーストラリア。かわったところては、パンの上に載っかっているゴマが、南米のグアテマラからやってくる。そして、レタスだけが90%国産だ。
  夏は主に長野の八ヶ岳辺りから、冬は南下して九州から、季節によって採れるところが移動する。冬の間は日本だけだと品不足になるので、一部アメリカ産が使われる。いずれも加工工場で適当な大きさにカットされてから、真空パックに詰められて、新鮮なまま運ばれる。アメリカ産のレタスは、鮮度を保つために、ジェット機で空輸される。成田空港まで約10時間のりだ。
 ■国内でもさらに加工して店まで運ばれる〜加工業と流通業■
 牛肉や小麦や魚は、日本の工場に運ばれる。
  そこで、牛肉は初めてフライパンの上で焼くだけの、あのハンバーガーの丸いパティになる。小麦は、製粉工場で二次加工をしたのちに、パン工場に運ばれて、ハンバーガーをはさむバンズになる。パンだけは焼き上がりのフレッシュさを保つために、それぞれのお店に毎朝配送される。それ以外の材料は、日本の農場から運ばれるレタスを含めて、すべていったん配送センターに運ばれ、お客の注文に応じて、冷凍・冷蔵トラックで運び込まれる。こうして、はるばる世界各地からやってきた様々な材料を、あなたの口に入る直前に調理するのは、店の裏方の厨房スタッフの仕事だ。(『人生の教科書 [よのなか]』藤原和博,宮台真司著,筑摩書房刊より)